痛みや時間や術後も心配!インプラント手術の方法

インプラント治療では、外科手術が必須となっています。人工歯根であるインプラント体を顎の骨に埋入しなければならないからです。そこで気になるのが手術の方法や時間、処置に伴う痛み・安全面などですよね。
手術後のケアもついても、その概要を知っておくことで、インプラントへの不安感や恐怖心が和らぐことかと思います。ここではそんなインプラント手術について、皆さんが知りたいであろうことを詳しく解説します。
インプラントの手術方法
インプラントの手術は、1回法と2回法の2つに大きく分けられます。その他、抜歯即時埋入法やオールオンフォー、骨造成といった特殊な手術方法も選択することができます。
1回法
1回法は、インプラントの手術を1回で済ませることができる治療法です。人工歯根の埋入とアバットメントの装着を1回の手術で完了します。施術後は、アバットメントが歯茎の外側に露出しています。傷口が癒え、人工歯根が顎の骨と結合したら、上部構造の製作および装着を行います。
顎の骨が正常でなければ、選択することができない手術方法ですが、適応されれば心身への負担が大きく減少します。治療期間も大幅に短縮されます。2回法よりも高度な治療技術が必要となるため、経験豊富な歯科医師に施術を任せる方が賢明といえます。
2回法
2回法は、インプラントの手術を2回に分けて行う治療法です。1回目の手術で人工歯根を埋入し、歯茎を縫合します。上顎のインプラントであれば6ヶ月、下顎であれば3ヶ月程度の治癒期間を挟みます。人工歯根が骨によって固定されたら、2回目の手術を実施します。再び歯茎を切開し、インプラントとアバットメントを連結します。その後のプロセスは1回法とほぼ同じです。
ちなみに、今現在は2回法がインプラントオペの主流となっています。2回に分けることによって、人工歯根と顎骨とが結合する「オッセオインテグレーション」を確実に達成することができるからです。確かに、治療期間が数ヶ月長くなることもありますが、安全性や確実性を考えたら、2回法に軍配が上がるといえます。インプラントは一生涯使い続けていくものなので、焦らず、成功率の高い手術方法を選択することが大切です。
▶インプラント治療の1回法と2回法の特徴を詳しく知りたい方は「インプラント治療における1回法と2回法の違い」の記事をご覧ください。
抜歯即時埋入法
抜歯即時埋入法は、抜歯と人工歯根の埋入を同時に行う治療法です。なぜ「抜歯」が必要になるのか疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。インプラントというと、歯を失った際に受ける治療、というイメージが強いですが、歯がまだ残っているケースでも適応されることがあります。
外傷による歯の破折などによって、抜歯を余儀なくされるケースなどが該当します。 従来法では抜歯をしたあと、歯茎や歯槽骨の状態が安定するまで待つのですが、そのまますぐにインプラントを埋入するのがこの手術方法の特徴です。歯茎の退縮や歯槽骨の吸収といった退行性変化が起こる前にインプラントを埋入できることから、治療後の仕上がりも良好となります。
何より、手術回数や治療期間を減らすことが可能となり、患者さんへの心身及び経済面への負担も軽減されます。ただし、適応は顎の骨の状態が良好な症例に限られます。
▶インプラント治療の抜歯即時埋入法とは何か「インプラントの抜歯即時埋入法vs抜歯待時埋入法」の記事をご覧ください。
オールオン4
すべての歯を失った症例に適応されるインプラント治療です。上部構造の人工歯数は12本となるのが一般的ですが、固定源となる人工歯根は4本です。少ない埋入本数で、すべての人工歯を支えることができるため、患者さんが得られるメリットは非常に大きいといえます。
また、オールオン4の大きな特徴のひとつとして、骨量が比較的少なくても、インプラントオペを実施できるという点が挙げられます。オールオン4では、人工歯根に角度をつけて埋入できるからです。手術直後に仮歯を入れることも可能です。治療期間も自ずと短縮されます。
▶歯を総入れ替えする際の"オールオン4"についての詳細は「インプラント治療のオールオン4という選択」の記事をご覧ください。
骨造成
顎の骨が不足している場合には、骨造成を行うことによってインプラント治療が可能になります。骨造成にはいくつかの手術方法があります。
■GBR法
GBR(guided bone regeneration)法とは、骨再生誘導法と呼ばれる治療法です。骨が不足している部分に、骨の再生を促す成分を設置し、特殊な膜で覆います。手術から数ヶ月後には骨が再生され、インプラント体を埋入できる状態が整います。
■ソケットリフト
上の顎のインプラント治療で行われる骨造成術です。骨の深さが足りず、上顎の歯槽骨のすぐ上に存在している上顎洞(じょうがくどう)へインプラントが飛び出してしまうリスクが高い症例に適応されます。欠損部に骨補填材を注入して、骨の再生を図ります。歯が抜けたあとの穴からアプローチするため、手術で生じる傷口は比較的小さいです。ただし、上顎洞までの距離が3~7mmなければ適応が難しいです。
■サイナスリフト
サイナスリフトも上顎のインプラント治療で行われる骨造成術です。ソケットリフトと異なるのは、適応症と手術時のアプローチです。上顎洞までの距離が1~3mmしかない場合に、サイナスリフトが適応されます。歯が抜けたあとの穴からではなく、歯槽骨の側面からアプローチします。そのため、術後の傷口は比較的大きくなります。
▶骨造成手術の詳細や期間、費用については「インプラント治療で骨造成手術は必要?」の記事をご覧ください。
インプラント手術の流れ
人工歯根を埋め込むインプラントオペは、以下の流れで進行します。
静脈内鎮静法の実施
インプラントオペに伴う不安や恐怖心を取り除くために、静脈内鎮静法を実施します。腕に静脈路を確保し、プロポフォールなどの鎮静薬を投与します。鎮静薬自体に、痛みを和らげる効果はありませんが、鎮静作用や健忘作用などが期待でき、怖い思いをすることなく、嫌な記憶も残りません。静脈内鎮静法はあくまでオプションであるため、希望しない人はこのプロセスが省かれます。
局所麻酔の投与
術野に局所麻酔を投与します。この処置は、一般の歯科治療と何らか変わりありません。
歯茎の切開
歯茎をメスで切開し、顎の骨を露出させます。
顎の骨のドリリング
顎の骨に専用のドリルやバーを使って穴をあけます。人工歯根を差し込むためのガイドとりなります。
人工歯根の埋入
人工歯根を埋め込みます。穴をあけるときとは異なるドリルで、ゆっくりと注水下で埋入します。
アバットメントの装着(1回法)
1回法では、人工歯根を埋め込んだあと、その場でアバットメントを装着します。あるいは、人工歯根とアバットメントが一塊となった製品を使用します。アバットメントが露出した状態で、手術は終了します。
歯茎の縫合(2回法)
2回法では、インプラント埋入後に歯茎を縫合して閉鎖創とします。
2次手術(2回法)
人工歯根と骨との結合を確認するために、レントゲン撮影を行います。オッセオインテグレーションが獲得されていれば、アバットメントを装着する2次手術を実施します。2次手術でも歯茎の切開は行いますが、切開創は最小限に抑えられます。その後は、1回法・2回法ともに、上部構造の製作・装着に移ります。
▶手術だけでなくインプラント治療に伴う一連の治療の流れを知りたい方は「インプラント治療の流れ」の記事をご覧ください。
インプラント治療は痛くない?
インプラントオペには、どのくらいの痛みが伴うのか、気になっている人も多いことかと思います。結論からいうと、インプラントオペは痛くありません。なぜなら、以下に挙げるような処置を実施するからです。
局所麻酔による痛みの除去
インプラントオペが痛くない最大の理由は、必ず局所麻酔を施すからです。虫歯治療や抜歯でも行われる処置ですが、侵襲を加える部分の感覚を麻痺させることができます。それは顎骨に人工歯根を埋め込むインプラントオペにおいても同じです。
鎮静法による恐怖や不安の緩和
痛みという感覚は、恐怖心や不安感によって増幅されることがあります。本来であれば局所麻酔が効いているので、痛みを感じることがないにも関わらず、恐怖心によって外からの刺激に敏感になってしまうことがあるのです。そうした症状は、笑気麻酔や静脈内鎮静法などで緩和することができます。
▶インプラント治療に伴う痛みの度合いや対処方法を知りたい方は「インプラント治療の痛みと対処法」の記事をご覧ください。
インプラント手術(治療)にかかる時間は?
インプラント手術にかかる時間は、手術方法によって異なります。
1回法
1回法のインプラントでは、人工歯根の埋入とアバットメントの装着を行います。以下のように、本数によって手術時間も変わります。
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・1本:15~20分
・2~3本:30~45分
・4~5本:50~80分
・7~10本:90~120分
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2回法
2回法では、人工歯根を埋入する1次オペとアバットメントを装着する2次オペで手術時間が異なります。
■1次オペ
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・1本:10~25分
・2~3本:20~35分
・4~6本:40~75分
・7~10本:80~110分
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■2次オペ
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・1本:5~10分
・2~3本:15~20分
・4~6本:25~35分
・7~10本:35~60分
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抜歯即時埋入法
抜歯即時埋入法では、上記のプロセスに抜歯処置が加わります。
1本当たり、5~10分程度の時間がかかります。
オールオンフォー
オールオンフォーでは、片顎で4本の人工歯根を埋入します。
手術時間の目安は、40~60分程度です。
静脈内鎮静法
オプションとして静脈内鎮静法を実施する場合は、20~30分程度の時間が加算されます。
麻酔の導入と離脱に、それぞれ10~15分程度かかります。
▶インプラント治療にかかる時間と期間の目安を知りたい方は「インプラント治療にかかる時間と期間」の記事をご覧ください。
インプラント手術後のケア
インプラント手術後には、適切なケアを実施する必要があります。
術後の食事
インプラントを埋入した部位は、傷を負っている状態と同じです。無闇に刺激するのは良くありませんので、施術部位以外で噛むようにしましょう。とくに手術直後は、硬いものは避け、あまり噛まずに済む食品を選びましょう。上部構造を装着するまでは、基本的に残った歯で噛む必要があります。仮歯を装着したら、噛む練習を徐々に始めましょう。
痛みや腫れ
インプラント手術後には、少なからず腫れや痛みが生じます。症状に合わせて、抗炎症薬や鎮痛薬などを服用しましょう。一週間ほど経過しても痛みや腫れが治まらない場合は、主治医に診てもらう必要があります。
定期検診・メンテナンス
インプラントは、定期的なメンテナンスが欠かせない治療法です。定期検診を怠ると、インプラントの故障や歯周組織のトラブルを起こしやすくなります。インプラント保証の条件として、定期的なメンテナンスの受診が課されていることからも、手術後に欠かすことのできないケアのひとつといえます。
▶インプラントのメンテナンス方法を知っておきたい方は「正しいメンテナンスでインプラントの寿命を延ばそう」をご覧ください。
まとめ
このように、インプラント治療に伴う痛みはほとんどありません。ただし、歯医者さんによっては技術が未熟であったり、設備が不十分であったりすることから、治療をお願いする歯科医院は慎重に選ぶ必要があります。ともあれ、インプラント治療を検討中の方は、まず一度、歯医者さんに相談することをおすすめします。
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■他のインプラント治療のコラム:https://teech.jp/column/inpurantochiryo
■インプラント治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/inpurantochiryo-interview
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
【コラム執筆歯科医師の紹介】
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長崎大学歯学部歯学科卒業