インプラント治療に歯科用CTが必要な理由
インプラント治療には、一般的な歯科治療にはないプロセスがいくつかあります。歯科用CTによる撮影もそのひとつです。CTというと、大きな病気やケガをしたときに撮影するものですが、なぜ失った歯を補う治療に必要となるのか不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。ここではそんなインプラント治療における歯科用CTが必要な理由をわかりやすく解説します。
歯科用CTとは
歯科用CTとは、医科で用いられているCT装置を歯科用に改良したものです。X線を360度の方向から照射して、そのデータをコンピューターに移行します。X線を照射した口腔周囲の組織は、3次元的な画像として写し出されます。任意の場所で輪切りにすることができ、歯や顎の骨の状態を詳細に調べることが可能です。
インプラント治療での歯科用CTの必要性
インプラント治療では、長さが10mm程度のチタン製のネジを顎の骨に埋めなければなりません。顎の骨には、傷つけてはいけない血管や神経、上顎洞のような解剖学的構造が存在しており、精密な埋入処置が求められます。
3次元的な画像が得られる歯科用CTであれば、精密な診断が可能となり、安全かつ確実な埋入処置を実現することができるのです。
歯科医院に歯科用CTがあるメリット
歯科用CTを完備しているかどうかは、歯科医院によって異なります。インプラント治療に対応している歯医者さんであっても、CT撮影は大学病院や近隣の歯科医院に委託していることもあります。
現状、インプラント治療に力を入れている歯科医院は、院内に装置が設置されていることが多いです。なぜなら、以下に挙げるようなメリットがあるからです。
インプラント治療において、歯科用CTを撮影するのは事前診断のみではありません。インプラント手術のあとも、埋入状態などを確認することもありますので、必用なときすぐに撮影できる環境があることは患者さんにとっても非常に大きなメリットといえます。
レントゲントの違い
歯科用CTでは3次元、レントゲンでは2次元の画像が得られます。この点が2つの撮影法における最も大きな違いです。虫歯や歯周病の治療であれば、2次元の画像でも診断が可能ですが、人工歯根の埋入となると3次元的な画像が不可欠です。
顎の骨の幅や奥行き、深さなどは2次元の画像で見極めることはできませんよね。それだけに、歯科用CTを省略した治療計画を提案された場合は、十分な注意が必要です。
治療前にCTを撮らない場合の対処法
治療前に歯科用CTによる撮影を行わないことがわかった場合は、患者さんご自身で適切な対応をとることが大切です。
CT撮影を行わない理由を聞く
まずは歯科用CTによる撮影を行わない理由を聞きましょう。もしかしたら患者さんの体調を考慮するなど、正当な理由があるのかもしれません。とはいえ、CT撮影を行わずにインプラント治療を進めることは、臨床の現場でも非常に稀なケースであるとお考え下さい。
不安であることを伝える
CT撮影を行わない理湯を聞いても不安が解消されない場合は、その気持ちを素直に伝えましょう。心から納得できない状態で治療を進めるのは良くありません。歯科医師側にも患者さんに説明し、同意を得るという「インフォームドコンセント」を実践する義務があります。
他院にセカンドオピニオンを求める
主治医以外に意見を求める「セカンドオピニオン」は、インプラント治療でよく利用されています。主治医の診断や治療計画に不安がある場合は、ためらわずにセカンドオピニオンを求めるようにしましょう。歯科医師側もセカンドオピニオンの重要性を理解していますので、他の先生の意見も聞いてみたい、と伝えればすんなり同意してくれることでしょう。
CT撮影を行う歯科医院を探す
インプラント治療においては、治療前にCT撮影を行わない時点で大きなリスクを背負うものとお考え下さい。ですから、インプラント治療をお願いする歯医者さんを探す際には、CT撮影を実施している点を優先的にチェックしましょう。
▶インプラント治療が得意な歯医者さんの見つけ方は「インプラント治療で失敗しないための歯医者さんの見つけ方」の記事をご覧ください。
歯科用CTでの被ばくは大丈夫?
X線を用いた画像検査では、少なからず被ばくを伴います。360度の方向から撮影するCTともなると、被ばく量も多くなりそうで不安ですよね。けれども、実際はそんなことはありません。歯科用CTはX線を照射する部位が口腔周囲に限られていますし、被ばく量も医科のCTの10分の1程度にとどまります。いわゆる「パノラマレントゲン」の被ばく量とそれほど大きな違いはありません。
まとめ
このように、インプラント治療では歯科用CTによる画像診断が必須といえます。よほどの理由がない限り、CT撮影を行ってくれる歯科医院に治療をお願いする方が賢明です。主治医の診断や治療方針に不安がある場合は、セカンドオピニオンを積極的に利用していきましょう。
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
【コラム執筆歯科医師の紹介】
運営サイト:「みんなの歯学」https://minna-shigaku.com
長崎大学歯学部歯学科卒業