徹底比較!インプラント・ブリッジ・入れ歯の違い
歯を失った際には、インプラントやブリッジ、入れ歯といった治療で欠損部を補う必要があります。それぞれ特徴が異なることから、どれを選んだら良いのか迷ってしまう人も少なくないことでしょう。
そこで注目していただきたいのが、以下に挙げる13の項目です。咬み心地や他の歯への負担、顎の骨の吸収など、装置によって口全体の健康に与える影響は大きく異なります。
天然歯に優る人工歯は存在していませんが、できる限りそれに近づけるような治療法を選ぶ方が良いといえます。そこでこの記事では、インプラント、ブリッジ、入れ歯の違いを比較していきます。
インプラント・ブリッジ・入れ歯の比較
ここでは、それぞれの治療法の機能性や審美性、治療内容についてわかりやすく比較します。
ここからは13項目の評価について具体的に見ていきます。
1.咬み心地
咬み心地には、それぞれの治療法で以下のような違いがあります。
インプラント
インプラントには、顎の骨に埋入した人工歯根があるため、天然歯に限りなく近い咬み心地を手に入れることができます。おせんべいのような硬い食べ物でもしっかり噛むことが可能です。
ブリッジ
ブリッジには、人工歯根がないことから、インプラントほどしっかり噛むことはできません。ただし、両隣の天然歯に装置を固定することから、入れ歯よりはしっかり噛むことができます。
入れ歯
入れ歯は、着脱式の装置であり、噛み心地は天然歯と大きく異なります。適合の悪い入れ歯だと、噛んだ時にズレたり、外れたりすることもあり、咬み心地はそれほど良くありません。
2.咬合力
咬合力(こうごうりょく)とは、歯で噛む力です。3つの装置で大きく異なります。
インプラント
インプラントの咬合力は極めて高いです。なぜなら、噛んだ時の力が人工歯根を通じて、顎の骨に伝わるからです。硬いものでもしっかり噛めるのはそのためです。
顎の骨が支えとなっていると考えると、咬合力が高くなる理由もよく理解できることかと思います。
ブリッジ
ブリッジの咬合力は、比較的高いです。欠損部では噛む力をほとんど負担できないものの、両隣の天然歯がしっかり支えているため、咬合力も入れ歯よりは高くなります。
ただし、失った歯の本数が多かったり、設計が良くなかったりすると、咬合力によって破損することがあります。
入れ歯
入れ歯の咬合力は、3つの治療法の中で最も低いです。口の中での固定がクラスプ(留め金)や義歯床に依存しているからです。クラスプは残った歯に引っ掛ける、義歯床は口腔粘膜に吸着させることで口の中に固定します。
天然歯と同じような感覚で噛んでしまうと、ズレる、外れる、破損するといったトラブルを引き起こすことがあります。
3.顎の骨の吸収
私たちの身体は、使わないと次第に委縮していきます。それは筋肉だけではなく、骨も同じです。失った歯を補う方法によって、顎の骨の吸収(歯が痩せること)度合いも大きく異なります。
インプラント
インプラントでは、顎の骨の吸収がほとんど起こりません。噛んだ時の力が人工歯根を介して、顎の骨へと伝わるからです。
ブリッジ
ブリッジは、欠損部の両隣の歯には、咬合力がしっかり伝わることから、骨は痩せていきません。
けれども、欠損部には何ら力が加わらないため、徐々に痩せていってしまいます。入れ歯ほど顕著ではありませんが、顎の骨の吸収は避けられません。
入れ歯
入れ歯は、欠損部の骨が経年的に吸収されていきます。咬合力も弱く、ブリッジより早く、広範囲に痩せていきます。これは入れ歯の性質上、仕方のないことといえます。
4.他の歯への負担
失った歯の治療を検討する上で、残存歯への負担を考えることは重要です。
インプラント
インプラントは、残った歯への負担が皆無に等しいです。人工歯根とアバットメント、人工歯からなるインプラントは、天然歯とほぼ同じ形態を採っているからです。
口腔内に独立して設置できるのがインプラントの大きなメリットのひとつといえます。
ブリッジ
ブリッジは、残存歯への負担が3つの治療法の中で最も大きいといえます。健康な天然歯を少なくとも2本、大きく削る必要があるからです。治療後も噛んだ時の負担は、それら支台歯が担うこととなります。
入れ歯
入れ歯治療では、残った歯を大きく削ることはありません。ただ、噛んだ時の力は残存歯で負担することになります。
とはいえ、装置の性質上、強い力で噛むのは困難であることから、残った歯への負担もブリッジほど大きくはなりません。
5.審美性
失った歯を補う治療では、装置によって審美性に大きな違いが見られます。
インプラント
インプラントは、極めて審美性が高い装置です。余計なパーツが付与されておらず、形態は天然歯とほぼ同じです。インプラントは、天然歯列にきれいに調和します。
ブリッジ
ブリッジの審美性も比較的高いといえます。固定性の装置であり、クラスプのようなパーツが付随していないからです。それでもインプラントと比較すると、審美性はかなり落ちます。
入れ歯
入れ歯は、高い審美性を確保するのが難しい装置です。人工歯に加え、クラスプや義歯床などのパーツが不可欠だからです。部分入れ歯にしろ、総入れ歯にしろ、装着していることを気付かれやすい装置といえます。
6.味覚
失った歯の治療を検討する上で、盲点となりやすいのが味覚です。装置の種類によって、味の感じ方も大きく変わります。
インプラント
インプラントは、天然歯とほぼ同じ構造であるため、味覚に変化が現れることはほとんどありません。硬いものもしっかり噛めるため、歯を失う前と同じように食事が楽しめます。
ブリッジ
ブリッジもインプラントと同様、味覚に関してはそれほど大きな変化はありません。ブリッジの設計によっては装置が大型になり、味を感じにくくなることもあります。
入れ歯
入れ歯は、口腔内の粘膜を被覆する範囲が広く、味を感じにくくなることがあります。とくに、口蓋(こうがい)と呼ばれる部分まで覆う総入れ歯は、味を感じる機能を妨げやすいです。
なぜなら、口蓋にも味を感じる細胞が存在しているからです。
7.手術の有無
手術の有無の違いは以下の通りです。
インプラント
インプラント治療では、必ず外科手術を行います。顎の骨に穴を開けて、人工歯根であるフィクスチャーを埋め込む手術です。処置自体は短時間で終わり、身体への負担も比較的小さいですが、この点をデメリットと感じる方も多いです。
ブリッジ
ブリッジによる治療では、手術は行いません。支えとなる両隣の歯を削ることは必須ですが、外科手術とは異なります。
入れ歯
入れ歯治療も手術は不要です。口腔内の状況に合わせて、入れ歯を製作します。残った歯を少し削って、歯が動かないように固定するレストやガイドプレーンを形成することはあります。部分入れ歯のパーツを設置するための構造です。
8.治療時の痛み
治療時の痛みは、治療法によって大きく異なることはありません。
インプラント
インプラント治療では外科手術を行いますが、大きな痛みを感じることはありません。術野には局所麻酔を施すからです。必要に応じて笑気麻酔や静脈内鎮静法を併用し、不安感や恐怖心まで取り除くことも可能です。
▶インプラント治療における痛みの原因や対処法は「インプラント治療の痛みと対処法」の記事をご覧ください。
ブリッジ
ブリッジで歯を削る際には、局所麻酔を施します。施術に伴う痛みはほとんどありません。
入れ歯
入れ歯治療で大きな痛みを伴うプロセスはほとんどありません。歯を削る際も麻酔を施すことが多いです。
9.治療後の問題
治療後に発生する問題は、それぞれ異なります。
インプラント
インプラント治療後に発生する問題としては、「インプラント周囲炎」が挙げられます。セルフケアとプロフェッショナルケアを両立させていれば、予防することも可能です。
不適切なケアを続けていると、顎の骨が破壊され、インプラントの脱落を招きます。
▶インプラント周囲炎について詳しく知りたい方は「インプラント周囲炎の症状と治療・予防方法」の記事をご覧ください。
ブリッジ
ブリッジの設計が不適切であったり、支台歯に過剰な負担がかかったりすると、装置が壊れることがあります。文字通り欠損部を橋渡ししている装置なので、咬み合わせや噛む力のバランスが重要となります。
入れ歯
入れ歯は、異物感や違和感に悩まされる人が多いです。使用中にズレたり、外れたりすることも珍しくありません。
また、人工歯は経年的に摩耗し、義歯床も劣化していくパーツなので、定期的な調整が必須の装置といえます。顎の骨も吸収していくことから、治療後にはさまざまな問題が生じ得ます。
10.治療期間
治療に要する期間は、それぞれで大きく異なります。
インプラント
インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋入するプロセスが含まれており、一般的には6ヶ月前後の治療期間を要します。施術法によっては治療期間を大きく短縮できますが、ケースによっては半年以上かかることもあります。
▶インプラント治療にかかる期間や時間は「インプラント治療にかかる時間と期間」の記事をご覧ください。
ブリッジ
ブリッジの治療にかかる期間は、1~1ヶ月半程度です。3つの治療法の中では比較的短期間で治療を終わらせることが可能です。素材や設計にこだわった場合は、もう少し長い期間を要します。
入れ歯
入れ歯は、症例によって治療期間も大きく変わります。一般的には1~2ヶ月程度の期間を要します。たくさんの歯を失っていたり、素材や設計にこだわったりする場合は、さらに長い時間がかかります。
11.耐用年数
耐用年数とは、寿命のことです。それぞれの装置の寿命は、以下の通りです。
インプラント
インプラント治療を受けた人の9割以上は、治療後10年経過しても問題なく使い続けています。
過去には、インプラントを装着してからお亡くなりになるまで、40年以上使い続けた方もいらっしゃいます。
ですからインプラント耐用年数は、少なくとも10年以上、適切なケアを行えば、20年、30年と持たせることも不可能ではありません。
▶インプラントの寿命の詳細は「インプラントの寿命~長持ちさせる秘訣は?~」の記事をご覧ください。
ブリッジ
ブリッジの寿命は、7~8年と言われています。症例やブリッジの設計によっては、それより短かったり、長かったりとさまざまです。
入れ歯
入れ歯の寿命は、5~6年程度です。入れ歯は劣化しやすい装置であり、3つの治療法の中では最も耐用年数が低くなっています。
12.費用
それぞれの治療費の相場は、以下の通りです。
インプラント
インプラント治療の費用の相場は、200,000~500,000円です。保険が適用されず、特殊な外科手術を要するため、比較的高額な治療費がかかります。
▶インプラント治療の相場を詳しく知りたい方は「インプラントの費用は1本いくら?値段の相場と歯医者さん選びのコツ」の記事をご覧ください。
ブリッジ
ブリッジの治療費の相場は、20,000~30,000円です。これは保険診療で、3割負担のケースを想定しています。
入れ歯
入れ歯の治療費の相場は、5,000~10,000円です。これは保険診療の部分入れ歯で、3割負担のケースを想定しています。
13.メンテナンス・清掃
メンテナンスや日々の清掃方法は、治療法によってそれぞれ異なります。
インプラント
インプラントは固定式の装置であり、構造もシンプルなため極めて清掃しやすいです。
天然歯と同じようにブラッシングできます。数ヶ月に一度のメンテナンスを受けることで、インプラントの不具合やインプラント周囲炎を防止することも可能です。
▶インプラントのメンテナンス方法を知りたい方は「正しいメンテナンスでインプラントの寿命を延ばそう」の記事をご覧ください。
ブリッジ
ブリッジもインプラントと同じような固定式の装置ですが、形態が特徴的です。
特に欠損部に設置されている「ポンティック」と呼ばれる人工歯は、歯茎との間に汚れが溜まりやすい構造となっています。適切なケア方法を実践しなければ、口臭や歯周病の原因となります。
入れ歯
入れ歯は、装置と残存歯に汚れが溜まりやすいです。食事の後は毎回、取り外して清掃しなければ、すぐに不潔になります。就寝前も取り外して洗浄液に浸ける必要があります。
人工歯や義歯床の劣化によって不具合も生じやすく、定期的なメンテナンスも必須といえます。
まとめ
このように、インプラントとブリッジ、入れ歯を比較すると、それぞれの違いが明確になることかと思います。
比較表を参照すると、インプラントの優位性が目立ち、入れ歯の劣っている部分が明瞭となりますが、どこに重きを置くかによって最善といえる治療法も変わってきます。
インプラント治療についてさらに詳しく知りたい方は、「インプラント治療のメリット・デメリット」もご覧ください。
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■他のインプラント治療のコラム:https://teech.jp/column/inpurantochiryo
■インプラント治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/inpurantochiryo-interview
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
【コラム執筆歯科医師の紹介】
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長崎大学歯学部歯学科卒業