インプラント治療を30代、40代で検討するときの注意点
インプラント治療は、成長期を終えた人であれば、基本的に誰でも受けることができます。それは30代、40代も例外ではありませんが、注意すべき点がいくつかあります。ここではそんなインプラント治療を30、40代で検討するときの注意点をわかりやすく解説します。
30代、40代でインプラント治療を検討するケース
30代、40代でインプラント治療を検討するのは、主に以下に挙げるようなケースです。
事故で歯を失った
交通事故等で歯を失った場合は、インプラント治療が選択肢として挙げられます。失った歯の本数や部位によっても異なりますが、インプラント治療が第一選択となることもあります。
虫歯や歯周病で歯を失った
重症化した虫歯や歯周病で歯が抜けた、あるいは抜歯したケースでもインプラント治療が検討されます。その場合は、インプラント治療を始める前に歯周病を完治させる必要があります。適切な口腔ケア習慣も身に付けなければなりません。
神経が壊死して歯が黒くなった
歯に強い衝撃が加わると、歯髄が壊死して歯質全体が黒ずむことがあります。それが前歯部に起こると、審美性を大きく害することから、インプラント治療を検討する人もたくさんいらっしゃいます。
ただ、こうしたケースでは、「ウオーキングブリーチ」というホワイトニング法で、本来の白さに戻せることがあります。あるいは、セラミック治療などが優先されるのが現実です。抜歯をしてインプラントを埋入するのは、稀なケースとお考え下さい。
30代、40代はブリッジよりインプラントにすべき?
失った歯を補う補綴治療で、30代から40代の方が最も悩みやすいのがブリッジという選択肢です。残存歯の状態が良く、支台歯としてしっかり機能してくれることから、比較的手軽に受けられるブリッジの方が適しているように思われがちです。
ブリッジは残存歯を大きく削らなければならない
ブリッジには人工歯根がないため、残った歯に支えを求めることとなります。
いわゆる支台歯は、健康な歯であるにも関わらず、歯質を大きく削らなければならないという難点があります。支台歯形成した後の歯冠部は、エナメル質はもちろん、象牙質の大半を失うこととなります。ブリッジはそうした犠牲を伴う治療法なのです。
治療後も残った歯に負担がかかる
欠損部をブリッジで補った場合、咬んだ時の力はすべて支台歯が負担します。本来であれば3本の歯で支える力を2本の支台歯で支持しなければならず、残存歯のトラブルを引き起こす原因にもなりかねません。
ブリッジの寿命は短い?
ブリッジの寿命は、一般的に7~8年といわれています。一方、インプラントは少なくとも10~15年は持つ装置であり、メンテナンス等、適切なケアを継続することで、20年、30年と使い続けることも可能です。
基本的にはインプラントがおすすめ
上記の内容を踏まえると、30代、40代の方にはインプラント治療がおすすめといえます。インプラントであれば、残存歯への負担が減り、歯の喪失を招くリスクも低下します。寿命も長いことから、残された人生をそのインプラントで咬み続けることも不可能ではないのです。
▶インプラントとブリッジのメリット・デメリットを知りたい方は「徹底比較!インプラント・ブリッジ・入れ歯の違い」の記事をご確認ください。
30代、40代でインプラント治療するメリット
30代、40代でインプラント治療を受けるメリットは、以下の通りです。
顎骨との結合が得られやすい
インプラント治療で最も重要な点は、「オッセオインテグレーション」です。チタン製の人工歯根と顎の骨が結合する現象で、これが起こらなければインプラント治療も失敗に終わるからです。
そのため、加齢や全身疾患などによって、顎の骨の状態が悪くなると、インプラントの成功率も低下します。30代、40代であれば、その心配もほとんどないといえます。
傷の治りが早い
30代、40代はまだまだ創傷治癒力が高いです。傷の治りが早く、手術後も傷口が早期に回復します。これは感染症予防につながるだけでなく、治療期間の短縮にも寄与します。
健康な歯を守ることができる
30代、40代の方は、残った歯の状態も良好であることが多いです。インプラント治療では、残存歯への負担がほぼ皆無となるため、健康な歯を守ることにつながります。
見た目が美しい
インプラントはよく咬めるだけでなく、審美面においても優れています。天然歯列に自然と調和することから、インプラント治療を受けたことに気付かれることはないでしょう。30代、40代は社会の最前線で活躍する方々なので、見た目が美しいというのは非常に大きなメリットといえます。ちなみに、失った歯をブリッジや入れ歯で補うと、老け顔になる傾向にあるのですが、インプラントであればそうした現象を防止できます。
30代、40代でインプラント治療するときの注意点
30代、40代でインプラント治療を検討する際には、以下の点にご注意ください。
治療期間が長い
インプラントは6ヶ月前後の期間を要する治療法です。ケースによっては1年近くかかることもあるため、治療期間の長い施術法といえます。30代、40代の人は仕事や遊びなどで忙しく、治療にかける時間や心の余裕がない場合もありますよね。そうしたケースでは、比較的短期間で終わるブリッジや入れ歯の方がおすすめです。
▶インプラント治療にかかる期間の目安を知りたい方は「インプラント治療にかかる時間と期間」の記事をご確認ください。
定期的なメンテナンスが必須
インプラントは、正常な状態を保つために必ずメンテナンスを受けなければなりません。メンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎のリスクが上昇したり、インプラントの不具合を放置したりすることとなります。何よりインプラントの保証が受けられなくなるため注意しましょう。
▶インプラントの正しいメンテナンス方法は「正しいメンテナンスでインプラントの寿命を延ばそう」の記事をご確認ください。
治療費が高い
30代、40代になると、経済的に余裕が生まれてくることかと思いますが、インプラント治療の費用に驚く人は少なくありません。インプラント治療には保険が適用されないため、1本あたり30~50万円程度の費用が発生します。
ただ、デンタルローンを組むなど、分割払いも可能なところもあり、支払いにはそれほど苦労することはないかもしれません。
▶インプラント治療の値段の相場は「インプラントの費用は1本いくら?値段の相場と歯医者さん選びのコツ」の記事をご確認ください。
インプラントの寿命はケースバイケース
多くの歯科医院では、インプラントに10年保証を付けています。実際、インプラント治療を受けて10~15年は正常に機能しているケースが90%を超えているので、補綴装置としての寿命は極めて長いといえます。
ただ、セルフケアが不適切であったり、メンテナンスを怠ったりすると、寿命が大きく縮まることもあります。
▶インプラントの寿命を延ばすための方法は「インプラントの寿命~長持ちさせる秘訣は?~」の記事をご確認ください。
30代、40代の歯医者さんの選び方
30代、40代でインプラント治療を検討する場合は、以下の点に注意して歯医者さんを選びましょう。
将来を見据えたプランを提案してくれる
30~40代でインプラントを検討している人は、その他の歯や歯周組織の状態は比較的良好だと思われます。そうしたお口の全体の健康まで見据えた治療法を提案してくれる歯医者さんが望ましいです。
診断や説明が丁寧
すべての歯科治療にいえることですが、診断や説明が丁寧な歯医者さんは信頼性が高いです。逆にそれができない歯医者さんには、インプラントのような重要な処置は任せられません。
インプラントの担当者がいる
インプラント治療は、専門家に任せるのが一番です。インプラントの認定医の資格を持っているとわかりやすいですが、資格がなくても診療実績が豊富であれば、信頼性も高くなります。カウンセリングの際には、過去に担当した症例についても詳しく聞いておきましょう。
▶インプラント治療が得意な歯医者の見つけかたは「インプラント治療で失敗しないための歯医者さんの見つけ方」の記事をご確認ください。
まとめ
このように、インプラントは30代、40代でも十分に受けられる治療です。むしろ、経済的に余裕があり、体力も充実している年代であることから、ブリッジや入れ歯よりも推奨できるケースが多いといえます。もちろん、最適な治療法はあくまでケースバイケースとなってくることから、まずは歯医者さんに相談することが大切です。
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■他のインプラント治療のコラム:https://teech.jp/column/inpurantochiryo
■インプラント治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/inpurantochiryo-interview
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
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長崎大学歯学部歯学科卒業