奥歯をインプラントにすると強く噛めて痛くない!

奥歯というのは、虫歯や歯周病にかかりやすく、抜歯を余儀なくされることも多い歯です。奥歯は汚れが溜まりやすいだけでなく、咀嚼機能の主体となる歯でもあるからです。
そんな奥歯を失った場合には、インプラント治療がおすすめです。ここでは奥歯をインプラントにするメリットやデメリットなどをわかりやすく解説します。
奥歯の役割
奥歯は、専門的に「臼歯(きゅうし)」と呼ばれています。細かくいうと、第一小臼歯から第三大臼歯までが奥歯に当たります。ここではそれぞれの歯種の役割を簡単に説明します。
小臼歯
小臼歯は、文字通り「小さな奥歯」です。第一小臼歯と第二小臼歯の2種類があり、上下で合わせて8本生えてきます。前歯と大臼歯の中間的な形態をとっており、その役割も同様です。
食べ物を「噛み切る」、「すり潰す」機能の両方を担っています。歯列全体で考えると、重要度が比較的低いため、矯正治療における「便宜抜歯」の対象となります。例え、抜いてしまっても機能面および審美面に深刻な悪影響を及ぼしにくい歯といえます。
大臼歯
大臼歯は、「大きな奥歯」です。第一大臼歯から第三大臼歯まで合計で最大12本生えてきます。食べ物を「すり潰す」のが大臼歯の主な役割です。「臼(うす)」という文字が使われているので、その機能も想像しやすいことかと思います。
その中でも第一大臼歯は、歯列全体において最も重要な歯です。噛んだ時にかかる力である「咬合圧(こうごうあつ)」を最も多く負担する奥歯だからです。噛み合わせのバランスや高さなどは、第一大臼歯を起点として考えるのが一般的です。
第二大臼歯はその補助的な役割を担っています。第三大臼歯はいわゆる「親知らず」であり、生えてくる人と生えてこない人がいます。生えてきたとしても正常な機能を担えないケースが多く、トラブルが起これば抜歯をします。
奥歯のインプラント治療の特徴
奥歯のインプラントには、以下に挙げるような特徴があります。
噛む力を分散できる
上述したように、奥歯は噛む力の主体となる歯です。そこに人工歯根であるインプラントを埋入することで、噛む力を分散することが可能となります。その結果、歯列全体が安定します。
インプラントの選択ができないケースがある
上の奥歯の近くには、「上顎洞(じょうがくどう)」、下の奥歯の近くには「下顎管(かがくかん)」という重要な解剖学的構造が存在しています。人工歯根を埋入する際に、これらの損傷を免れない場合は、インプラントを使うことができません。
また、噛む力がもともと強い人は、セラミックの人工歯を装着することが難しくなります。とりわけ第一大臼歯は、最も強い力がかかる部位であり、セラミックの破折を招きます。
長時間の開口に疲れる
奥歯のインプラントでは、手術中、大きく口を開けていなければなりません。一般的なケースでは、1時間程度で手術が終わりますが、その間、口を開けていることに疲れる方もいらっしゃいます。
奥歯をインプラントにするメリット
奥歯のインプラントで治療するメリットは、以下の通りです。
強く噛める
食べ物を強くしっかり噛めるかどうかは、第一大臼歯や第二大臼歯の状態に大きく左右されます。それらを失った際に、入れ歯やブリッジを装着すると、噛む力の回復はある程度までにとどまります。
なぜなら、それらの治療法には人工歯根がないからです。インプラントは天然歯と同様の構造を採っているので、失われた奥歯のそしゃく機能を元に近い状態まで回復されることが可能です。
痛み・違和感がない
奥歯の入れ歯は、痛みや違和感が生じやすいです。活発な咀嚼運動に晒さられる部位なだけに、入れ歯がズレたり、適合性が悪くなったりすることも多く、歯や口腔粘膜を刺激しやすいです。インプラントであれば、治療後の痛みや違和感、異物感はほとんどありません。
骨が痩せていかない
奥歯に入れ歯やブリッジを装着すると、必ず骨吸収と呼ばれる骨が痩せる現象が起こります。歯が抜けた部分には、噛んだ時の圧力がかからないからです。一方、インプラントは人工歯根を介して顎骨へと咬合圧がかかり続けるので、骨が痩せていくことはありません。
咬み合わせが安定する
奥歯は、咬み合わせの起点となる場所です。そこを着脱式の入れ歯で補うと、全体の咬み合わせが不安定になりがちです。ブリッジにおいても、噛む力を負担するのは両隣の歯なので、インプラントよりは咬み合わせのアンバランスを招きやすいです。人工歯根が存在するというのは、それくらいメリットの大きいことなのです。
発音しやすい
奥歯のインプラントで発音障害が現れることはまずありません。天然歯とほぼ同じ状態に回復できることから、しゃべりにくい、滑舌が悪い、といった症状も起こりにくいのです。比較的大型の装置となる入れ歯やブリッジでは、発音障害が起こることもあります。
奥歯をインプラントにするデメリット
奥歯をインプラントで治療する場合、いくつかのデメリットも伴います。
費用が高い
インプラントは保険が適用されません。使用する材料や必要となる設備も特殊であり、治療にかかる費用が高くなりがちです。
外科手術が必須
人工歯根を埋入するための外科手術が必須です。手術が怖い、手術の経験がない、という方にとってはデメリットに感じることもあります。とはいえ、インプラントの手術はそれほど大掛かりなものではありませんので、心配しすぎる必要もないといえます。
治療期間が長い
入れ歯やブリッジと比較すると、インプラントの治療期間は長いです。奥歯のインプラントでは、半年程度の治療期間を要します。
骨造成が必要なことがある
顎の骨が不足しているケースでは、インプラント埋入前に骨造成を行うことがあります。その分、治療期間が長くなるため、デメリットと捉える人も少なくありません。
▶インプラント治療に骨造成について詳しく知りたい方は「インプラント治療で骨造成手術は必要?」の記事をご覧ください。
※インプラントを選択できないケースとは?
入れ歯治療は、適応できないケースがほとんどありません。お口の中の状態に合わせて作るものなので、設計の自由度も高いです。その点、インプラントは人工歯根を埋め込む顎の骨がしっかりしていなければ適応できません。インプラントは「正常な顎の骨ありき」の治療と考えましょう。手術時に血圧が異常に上昇したり、出血が止まらなくなったりする持病を持っている場合もインプラントが難しくなるため、全身の健康とも関わりの深い治療法です。
奥歯のインプラントの治療期間
奥歯のインプラントの治療期間は、上顎と下顎で大きく異なります。顎の骨がしっかりしている下顎であれば、4~6ヶ月程度で治療が完了します。上顎骨は、インプラントが定着するまでに少し時間を要するため、6~8ヶ月程度の期間が必要です。ケースによって治療期間は大きく変動します。
▶インプラント治療にかかる期間や時間の詳細は「インプラント治療にかかる時間と期間」の記事をご覧ください。
奥歯のインプラントの寿命
多くの歯科医院では、インプラント治療に10年保証を付けています。一定の条件を満たしていれば、インプラントにトラブルが生じても無償で対応してくれるサービスです。
10年というのはとても長い年月に感じられますが、インプラント治療においては「10年持って当然」と考えても良いです。実際、インプラント治療を受けた人の9割以上は、10年経っても問題なくお口の中で機能しています。
適切なケアとメンテナンスを継続すれば、インプラントの寿命は20年、30年と延びていきます。ですから、奥歯のインプラントの寿命は、患者さんのケアの仕方次第であり、具体的な数字を挙げるのは難しいです。
▶インプラントの寿命と長持ちさせる秘訣は「インプラントの寿命~長持ちさせる秘訣は?~」の記事をご覧ください。
奥歯のインプラントの費用の目安
奥歯のインプラントは、一般的に1本当たり350,000~450,000円程度です。骨造成が必要であったり、上部構造の素材を厳選したりすることで、費用はさらに高くなります。マイナーなインプラントを選択すれば、1本あたり20万円程度で治療できることもあります。
▶インプラントの料金相場や内訳を知りたい方は「インプラントの費用は1本いくら?値段の相場と歯医者さん選びのコツ」をご覧ください。
まとめ
このように、奥歯をインプラントで治療すると、天然歯のようにしっかり噛めるようになります。使用中の違和感や異物感、痛みなどもほとんど生じません。それだけに、奥歯をインプラントにする人が多くなっています。
今回ご紹介した内容は、あくまでインプラントの特徴の一部となっていますので、実際にインプラントを受けたい、もっと詳しく知りたいという方は、迷わず歯医者さんに相談しましょう。最近では、無料でインプラントのカウンセリングを行っている歯医者さんも増えてきています。
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■他のインプラント治療のコラム:https://teech.jp/column/inpurantochiryo
■インプラント治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/inpurantochiryo-interview
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
【コラム執筆歯科医師の紹介】
運営サイト:「みんなの歯学」https://minna-shigaku.com
長崎大学歯学部歯学科卒業