インプラント治療のオールオン4という選択
インプラント治療は、”失った1本の歯を1本の人工歯根で補う”だけの治療法ではありません。すべての歯を失った症例にも適応可能なのです。この場合の治療を「オールオン4」といいます。本記事ではオールオン4の特徴についてわかりやすく解説します。
オールオン4とは
オールオン4とは、すべての歯を失った、あるいは抜歯する予定のケースに適応されるインプラント治療です。その名の通り総入れ歯を4つのインプラントで支えます。手術当日に仮歯を装着できる、骨が不足していても施術できる、などの特徴があります。
オールオン4のメリットとデメリット
オールオン4には、以下に挙げるようなメリット・デメリットがあります。
メリット
オールオン4は、骨に埋入したインプラントに固定するタイプの装置を使用することから、使用する中でズレたり、外れたりすることはまずありません。入れ歯が歯茎に当たって、痛みが生じるようなトラブルも起こりにくいです。また、噛んだ時の圧力を顎の骨が直接支えるので、天然歯のようにしっかり噛むことが可能です。
デメリット
インプラントのメンテナンスを怠ると、「インプラント周囲炎」のような歯周病にかかるリスクが高まります。また、保険が適用されないため、費用が比較的高額になります。
▶インプラント周囲炎について詳しく知りたい方は「インプラント周囲炎の症状と治療・予防方法」の記事をご覧ください。
■総入れ歯とオールオン4のメリットデメリット
オールオン4の料金相場
オールオン4の料金は、上部構造の素材と手術の内容によって変動します。
素材による違い
■アクレリックレジン(プラスチック)
いわゆる歯科用プラスチックです。経年的な摩耗や変色が起こりやすいですが、費用は比較的安いです。ただし、数年ごとに作り変える必要があります。
・料金相場:250万円前後(総額)
■ハイブリッドセラミック
レジンとセラミックを掛け合わせた素材です。レジンよりも品質が高いものの、セラミックには及びません。
・料金相場:250~300万円(総額)
■オールセラミック
人工歯にセラミックのみを使用します。経年的な劣化がほとんど起こらず、作り変える必要性も低くなります。
・料金相場:300~400万円(総額)
骨造成の費用
骨が不足していて、骨の再生が必要となるケースでは、骨造成の費用も加算されます。
■GBR法
・料金相場:30,000~100,000円(1ヵ所当たり)
■ソケットリフト
・料金相場:30,000~50,000円(1ヵ所当たり)
■スプリットクレスト
・料金相場:30,000~100,000円(1ヵ所当たり)
▶インプラント治療における骨造成について詳しく知りたい方は「インプラント治療で骨造成手術は必要?」の記事をご覧ください。
オールオン4の治療の流れ
オールオン4の治療は、以下の流れで進行します。基本的には、通常のインプラント治療と同じです。
カウンセリング
オールオン4に関する説明を受けます。疑問点や不明な点などがあれば、カウンセリングですべて解消しておきましょう。
検査・診断
口腔内診査、レントゲン撮影、CT撮影などを実施します。検査結果をもとに、診断が下されます。お口の状態によっては、その他の治療法を提案されることもあります。
埋入手術
人工歯根であるフィクスチャーを顎の骨に埋め込む手術です。原則として、上下にそれぞれ4本の人工歯根を埋入します。顎の骨の状態が悪く、より多くの人工歯根で支える必要がある場合は、埋入する本数が増えることもあります。埋入処置が終わったら、仮歯を装着します。
上部構造の製作・装着
インプラントの状態が安定したら、最終的な上部構造の製作および装着です。手術から最終的な上部構造を装着するまでには、3~4週間かかるのが一般的です。
メンテナンス
インプラント治療が終わった後は、定期的なメンテナンスを受けるようにしましょう。メンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎のリスクが高まるだけでなく、保証制度も受けられなくなることがあります。
▶インプラントの正しいメンテナンス方法を知りたい方は「正しいメンテナンスでインプラントの寿命を延ばそう」の記事をご覧ください。
オールオン4を選択するときの注意点
オールオン4は、インプラント治療の中でもさらに専門性が高い分野です。そのため、以下に挙げるような点に注意しましょう。
表示料金があまりにも安い
オールオン4にも料金相場があります。提示された費用が相場よりも極端に低い場合は、要注意です。必要な治療プロセスを省いていたり、質の悪い材料を使用していたりする可能性があります。あるいは、インプラントの埋入費用のみを提示している場合もありますので、事前にしっかり確認しましょう。
▶インプラント治療をする際に、安すぎる料金を疑った方がいい理由を知りたい方は「安いインプラントは避けるべき?」の記事をご覧ください。
オールオン4ありきの提案をされる
オールオン4はあくまで治療の選択肢のひとつです。ケースによっては、総入れ歯の方が適していることも珍しくありません。それにも関わらず、オールオン4ありきの提案をしてくる歯科医院には注意しましょう。その他の選択肢もきちんと提示してくれる歯科医師の方が信頼できます。
治療する歯医者の診療実績が乏しい
オールオン4は、高度な技術を要する治療法です。豊富な診療実績がなければ、安心して任せることはできません。カウンセリングの段階で、オールオン4に関する実績をしっかり確認しておきましょう。
まとめ
このように、すべての歯を失った症例でもインプラント治療が受けられます。総入れ歯と比較して優れた面も多いため、審美性・機能性・耐久性を追求する方にとってはおすすめの治療法といえます。とはいえ、オールオン4にもデメリットは存在していますので、バランスよく考えることが大切です。総入れ歯かオールオン4で迷っている方は、まず歯科医院に相談することが大切です。
▶インプラント治療が得意な歯医者の見つけ方は「インプラント治療で失敗しないための歯医者さんの見つけ方」の記事をご覧ください。
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■他のインプラント治療のコラム:https://teech.jp/column/inpurantochiryo
■インプラント治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/inpurantochiryo-interview
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
【コラム執筆歯科医師の紹介】
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長崎大学歯学部歯学科卒業