インプラント治療を20代で検討するメリットと注意点
インプラント治療は、比較的年齢の高い方が受けるイメージが強いため、20代の人は不安な点も多いことかと思います。ここではそんなインプラント治療を20代で検討するときの注意点についてわかりやすく解説します。
20代でインプラント治療を検討するケース
20代でインプラント治療を検討するのは、以下に挙げるようケースです。
口腔疾患や外傷による歯の喪失
20代といえども、虫歯や歯周病を重症化させると、歯を失うことがあります。また、交通事故などの外傷によって、歯が抜けるようなこともあり得ます。いずれのケースも失った歯の本数によって、適した治療法が異なってきます。
1~2本の歯を失った場合
1~2本の歯を失った場合は、インプラント治療が推奨されます。ただし、ブリッジや入れ歯という選択肢もあり、ケースに応じた最善といえる治療法を選ぶ必要があります。
ほとんどの歯を失った場合
すべてあるいはほとんどの歯を失った場合は、入れ歯治療が第一選択となりやすいです。総入れ歯と呼ばれる装置です。インプラントもオールオン4という手法であれば、ほとんどの歯を失ったケースに対応できます。
先天的な永久歯の不足
生まれながらにして永久歯の数の不足がある場合は、ブリッジや入れ歯、インプラントで補う必要があります。欠如している歯の本数のよって最適な治療法は変わってきますが、当然、インプラントも選択肢の一つとして挙げられます。
20代でインプラント治療をするメリット
20代でインプラント治療を受けると、デメリットが大きいように思われがちですが、実際はたくさんのメリットがあります。
見た目が美しい
失った歯を補う「補綴治療」は、装置の種類によって見た目が大きく変わります。審美性が最も低いのが入れ歯で、その次がブリッジです。一方、インプラントは装置の形状から、欠損部を天然歯に限りなく近い状態まで回復させることが可能です。この点は20代の人にとって何より大きなメリットといえます。20代で違和感の大きい装置を装着するとなると、人生の質そのものが大きく低下しかねません。
他の歯に負担がかからない
インプラントは、お口の中に独立して設置できる装置です。ブリッジや入れ歯のように、その他の歯を犠牲にする必要がなく、お口全体の健康を保ちやすくなります。
顎の骨と結合しやすい
若い人は顎の骨が強く、傷口の治りも早いです。インプラント治療が成功するかどうかは、チタン製の人工歯根と顎骨との結合にかかっていることから、そうした傾向は治療に有利に働きます。治癒力が高い点は、治療期間の短縮にもつながります。
手術に耐えられる体力がある
インプラント治療に伴う手術は、それほど大掛かりなものではないため、高齢の方でも受けることは可能です。ただ、体力や免疫力が衰えていると、合併症を引き起こすリスクが高まります。20代であれば、体力も免疫力も充実しているので、合併症等のリスクは軽減されます。
20代でインプラント治療をするときの注意点
20代でインプラント治療を検討する際には、以下の点に注意しましょう。
インプラントの寿命
インプラントは審美性も機能性も天然歯に酷似した補綴物(失った歯を補う装置)ですが、その他の治療法と同様、いずれ寿命はやってきます。 20代は、その後の50年、60年という長い人生を念頭に入れて、歯科治療を選択しなければならないのです。
歯を失った場合、インプラント以外の選択肢である入れ歯やブリッジの寿命は、10年にも満たないです。一方、インプラントは30年、40年持ったというケースがあります。
また、インプラントの多くには10年保証が付けられており、治療後10年間の修理は一定条件のもと無料で受けることができます。これは厳密にインプラントの寿命とは言い難いですが、治療後10年を超えると保証が受けられなくなるという点を確認しておきましょう。
▶インプラントの寿命を縮める原因、長持ちさせる方法は「インプラントの寿命~長持ちさせる秘訣は?~」の記事をご確認ください。
治療期間が長い
インプラントは、半年前後の治療期間を要します。その間、日常生活に支障をきたす場面も出てくるため、若い人には負担が大きくなり過ぎる場合もあります。遊びたい盛りである20代で、そうした生活を半年間続けられるかどうか、心の整理をつけておく必要があります。
もちろん、インプラント治療を開始したからといって、日常生活が大きく制限されることはありませんのでご安心ください。
▶インプラント治療にかかる期間の詳細は「インプラント治療にかかる時間と期間」の記事をご確認ください。
治療費が高い
インプラントの治療費の相場は、1本あたり30~50万円程度です。オールオン4では、数百万円の治療費がかかります。この点は若い人にとって非常に大きなデメリットとなります。
▶インプラント治療の費用感は「インプラントの費用は1本いくら?値段の相場と歯医者さん選びのコツ」でご確認ください。
20歳前後は顎の骨の成長次第
20歳を超えているからといって、必ずインプラント治療が受けられるわけではありません。インプラントは、顎の骨の成長が完了していなければ適応できないからです。
そのため、20歳前後でインプラント治療を検討中の人は、まずカウンセリングや事前検査を受けることをおすすめします。顎の成長次第では、その他の治療法を選択するか、インプラント治療を行う時期をもう少し待たなければならなくなります。
定期的なメンテナンスが必要
インプラントはあくまで人工物です。定期的なメンテナンスを怠ると、装置の破損や故障が生じます。
また、「インプラント周囲炎」と呼ばれる歯周疾患にもかかりやすいことから、定期的に歯科を受診する必要があります。インプラント保証を受ける条件として、定期検診の受診を課している歯科医院も多いです。20代は公私ともに忙しい時期ではありますが、必ず定期的なメンテナンスを受けなければなりません。
▶インプラント周囲炎の詳細は「インプラント周囲炎の症状と治療・予防方法」の記事をご確認ください。
▶インプラント治療後のメンテナンス方法は「正しいメンテナンスでインプラントの寿命を延ばそう」の記事をご確認ください。
20代の歯医者さんの選び方
20代の人は、歯医者さんに通った経験も少なく、インプラント治療をお願いする歯科医院をどのようにして選んだら良いか迷っていることかと思います。そんな人は、以下の点に着目してみてください。
将来を見据えたプランを提案してくれる
20代はまだまだ人生が始まったばかりです。目の前の問題を解決するだけでなく、将来まで見据えた治療計画を提案してくれる歯医者さんが必要です。20代のあなたになぜインプラント治療が必要なのか、あるいは適していないのかをしっかり説明してくれる歯医者さんが望ましいです。
インプラントの担当者がいる
インプラントは専門性の高い歯科治療ですので、その道の専門家にお願いするのが一番です。インプラント治療の担当医がいる歯科医院を探しましょう。インプラントの認定医などの資格を有しているとなお良いです。
総合的な治療が行える
インプラントの専門医がいることはとても重要ですが、虫歯や歯周病の治療、口腔外科治療なども行える歯科医院が望ましいです。
もちろん、1人の歯科医師がすべてを網羅する必要はありません。歯科医院内で総合的な治療を行えることが重要です。そのような環境が整っていれば、インプラント治療中に問題が起きても、適切に対応できます。
丁寧な説明と診断
カウンセリングの段階から丁寧に説明してくれる歯医者さんを選びましょう。20代のインプラント治療ともなると、事前の説明が極めて重要となります。
治療に伴うリスクも含め、しっかりと説明してくれる歯医者さんは信頼できます。インプラント治療の出発点となる術前検査や診断も丁寧に行ってくれることが重要です。
▶インプラント治療が得意な歯医者さんの探し方は「インプラント治療で失敗しないための歯医者さんの見つけ方」の記事をご確認ください。
まとめ
このように、20代でインプラント治療を検討する際には、いくつかの点に注意しなければなりませんが、想像以上にメリットが大きい点に注目してみてください。
若いからインプラント治療は良くない、と盲目的になるのではなく、ひとつの治療の選択肢として真剣に考えてみる価値は十分あるといえます。20代でインプラント治療に関心のある人は、何よりまず一度、歯医者さんに相談しましょう。
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■他のインプラント治療のコラム:https://teech.jp/column/inpurantochiryo
■インプラント治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/inpurantochiryo-interview
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
【コラム執筆歯科医師の紹介】
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長崎大学歯学部歯学科卒業