インプラント1本の費用はいくら?インプラント費用の相場と歯医者選びのコツ
インプラント治療は、歯科医院によって費用が大きく異なるので、どのくらいかかるのか気になっている方も多いかと思います。ここではそんなインプラント1本あたりの値段や保険適用の有無、良心的な歯医者さんを選ぶコツなどをわかりやすく解説します。
インプラント1本あたりの費用
インプラント治療の費用について考える際、まず気を付けなければならないのが「内訳」です。インプラント1本○○万円と謳っていても、それがインプラントの手術代のみなのか、治療費の総額なのかは、歯医者によって変わります。ここでは誤解が生まれないよう、インプラント1本にかかる治療費の総額を前歯と奥歯に分けて内訳とともにご紹介します。
前歯1本の費用
検査・診断料:15,000~50,000円
インプラントの手術代:100,000~300,000円
上部構造の製作・装着:80,000~200,000円
メンテナンス:3,000~10,000円
→総額:200,000~500,000円
奥歯1本の費用
検査・診断料:15,000~50,000円
インプラントの手術代:100,000~300,000円
上部構造の製作・装着:50,000~200,000円
メンテナンス:3,000~10,000円
→総額:200,000~500,000円
前歯と奥歯では、上部構造の製作費に違いが見られます。前歯は審美性が重視される部位であり、被せ物の製作にもそれなりに手間がかかります。審美性の高い材料も使用することから、費用が少し高くなります。
骨造成の1本あたりの費用
顎の骨量が不足しているケースでは、骨造成が必要となります。骨造成にかかる費用は、手術の方法によって異なります。ここでは代表的な3つの術式の費用相場を記載します。
ソケットリフト:30,000~50,000円
サイナスリフト:50,000~200,000円
GBR:30,000~100,000円
▶骨造成手術の詳細は「インプラント治療で骨造成手術は必要?」の記事をご覧ください。
インプラントは保険適用外?
インプラント治療が高額になる理由として、保険が適用されない点が挙げられます。インプラント治療はまだまだ先進的な医療であり、保険を適用するには費用が高額であるからです。将来的には技術の進歩によって、治療過程が簡素化され、原材料費も安価になることで、保険が適用される可能性もあります。ただし、現状では全額自己負担で受けなければなりません。
▶インプラント治療が保険適用外である理由と保険適用になるケースは「インプラント治療が保険適用される条件は?」の記事をご覧ください。
インプラントは医療費控除の対象?
インプラント治療は、医療費控除の対象となります。医療費控除とは、1月から12月までの1年間に支払った医療費が10万円(総所得が200万円以下の場合はその5%)を超える場合に適用される所得控除です。
上述したように、インプラント治療では最低でも20万円程度の費用がかかるため、ほぼすべてのケースで医療費控除の対象となります。ただし、審美目的の治療は医療費控除の対処とはなりませんのでご注意ください。あくまで「歯がなくなって困っている」など、歯の機能性を回復させるための治療が対象となります。
医療費控除の算出方法
医療費控除の算出方法は以下の表の通りです。
▶医療費控除や申告方法については「インプラント治療は医療費控除の対象~確定申告を忘れずに~」の記事をご覧ください。
インプラントの費用が高い理由
上述したように、インプラント治療には、比較的高額な費用がかかります。それは以下に挙げるような理由があるからです。
保険が適用されない
インプラント治療には保険が適用されないため、10割負担となります。3割負担の保険診療と比較すると、単純に3倍以上の費用がかかることになります。
材料費が高い
人工歯根やアバットメント、上部構造には、それぞれチタンやジルコニア、セラミックなど、原価が高い材料を使用します。それだけでも一般的な歯科治療より高価になる傾向にあります。
外科手術が必要
人工歯根の埋入手術を安全に行うには、歯科用CTによる精密診断が欠かせません。また、専用ソフトでのシミュレーションや衛生的な手術環境、術中の安全を確保できる人員の配置なども必要となります。それらをすべてそろえるとなると、患者さんの負担額も大きくなるのです。
歯科医師に高い技術が求められる
インプラントは極めて専門性の高い治療なので、歯科医師であれば誰でも行えるというわけではありません。たくさんの勉強や診療実績を積んだ歯科医師だからこそ行える治療です。そこには自ずと技術料も加算されます。
インプラントとブリッジ、入れ歯の値段の違い
ここではインプラントとブリッジ、入れ歯の値段の違いについてわかりやすく解説します。それぞれ歯を1本失ったケースで、ブリッジと入れ歯については保険診療を想定しています。
■費用の総額
インプラント :200,000~500,000円
ブリッジ:20,000~30,000円
入れ歯(部分入れ歯):5,000~10,000円
インプラント
■費用
インプラントの“治療”の値段の目安は、200,000~500,000円です。自由診療であるため、歯科医院によって設定されている値段が大きく異なります。メジャーなインプラントシステムを採用し、良心的な価格設定をしている歯科医院であれば、350,000円程度が相場となっています。
■メリット
人工歯根があるので、天然歯のようにしっかり噛むことができます。使用中ズレたり、外れたりすることもありません。見た目も美しく、残った歯を犠牲にする必要もない治療法です。
■デメリット
インプラント治療には必ず外科手術が必要となります。また、保険が適用されないため、全額自己負担となるのも大きなデメリットといえます。
ブリッジ
■費用
ブリッジの値段の相場は、保険診療で20,000~30,000円程度です。
■メリット
保険が適用されるので、費用が比較的安くなります。固定式装置であることから、入れ歯のようにズレることはありません。審美性や機能性はインプラントに劣るものの、入れ歯よりは快適に使用できます。
■デメリット
支えとなる歯を大きく削らなければなりません。また、人工歯根がないので、インプラントほど噛み心地は良くありません。顎の骨も経年的に痩せていきます。
入れ歯
■費用
保険診療の入れ歯(部分入れ歯)の値段は、5,000~10,000円程度です。
■メリット
3つの治療法の中で最も安価です。治療期間も短く、気軽に作ることができます。故障した際も修理が容易です。取り外せるので、お手入れしやすいというメリットもあります。
■デメリット
着脱式の装置であることから、使用中にズレたり、外れたりすることがあります。その他の装置と比べて、故障しやすく、異物感や違和感も大きい傾向にあります。見た目もあまり良くありません。
▶インプラント、ブリッジ、入れ歯のメリットデメリットをしっかり把握したい方は「徹底比較!インプラント・ブリッジ・入れ歯の違い」の記事をご覧ください。
歯医者さんによって費用が違う理由
インプラント治療は、歯医者さんによって値段の設定が大きく異なります。その理由は以下の通りです。
自由診療である
インプラントの値段が歯医者さんによって違うのは、自由診療だからです。これはインプラントに限らず、すべての歯科治療にいえることです。その名の通り医院側が自由に料金を設定できます。
治療環境の違い
インプラント治療の実績豊富な歯科医師が執刀すれば、自ずと高い技術量が加算されます。また、インプラント専用のオペ室を備えていたり、術中の全身管理を行う環境が整っていたりすると、治療費も高くなる傾向にあります。
インプラントシステムによる違い
インプラントシステムは、世界で100種類以上存在しています。治療にかかる費用もそれぞれのシステムで異なります。
インプラント治療で歯医者さんを選ぶポイント
インプラント治療に対応している歯医者さんは年々増えてきていますが、必ずしもすべての医院で治療の質が保証されているというわけではありません。それだけに、施術をお願いする歯医者さんは慎重に選ぶ必要があります。以下のポイントに気を付けながら、納得がいく歯医者さんを見つけましょう。
診療の実績が豊富
専門性の高い治療を成功させるには、知識だけでなく、豊富な実績も必須といえます。
そのため、勤務医として働く前や歯医者さんを開業する前に、大学院や大学病院で専門的にインプラント治療の経験を積んだ実績を持っている歯科医師、勤務医や開業医でも積極的にインプラント治療の知識や治療実績を積んだ経験を持つ歯科医師に相談するのが良いでしょう。
とはいえ、単に症例数の多さだけを謳う歯医者さんはあまり好ましくありません。実際にどのような手術を行い、成功してきたのかを説明してくれる歯医者さんを選ぶようにしましょう。
治療内容・費用の説明が丁寧
インプラントは特殊な治療法です。費用の内訳も一般の歯科治療とは大きく異なるため、わかりやすく丁寧に説明してくれる歯医者さんが望ましいです。
安さを売りにしていない
適切なインプラント治療を実施するとなると、それなりの費用がかかってしまいます。それにも関わらず、相場より極端に安い治療費を設定している歯医者さんには少し注意が必要といえます。質の低い材料を使用していたり、治療のプロセスを省いていたりする可能性があります。
▶インプラントが安い理由を詳しく知りたい方は「安いインプラントは避けるべき?」の記事をご覧ください。
認定医・専門医などの資格を保有
歯科治療には、それぞれの治療に対して専門の学会があります。
その学会の中でもインプラント治療に関する代表的な学会は日本口腔インプラント学会、日本口腔外科学会などがあり、その学会がインプラント治療の知識や技術をもつ歯科医師として認定した専修医・認定医・専門医・指導医などの資格制度があります。その情報をもとに歯科医院を選択するのも1つです。
ただ、インプラント治療は歯科医療の中でも外科治療になりますので、インプラント治療における「様々な経験や実績」をもっていることが重要です。そのため資格制度を絶対視するのではなく、あくまで参考程度にするのが良いでしょう。
まとめ
このように、インプラント1本あたりの費用は200,000~500,000円程度となっており、その他の治療法より高額な費用がかかります。それでも得られるメリットが大きいので、インプラント治療を希望する患者さんはどんどん増えています。ですから、インプラントを検討する際には、費用の面だけにとらわれず、治療全体のメリット・デメリットを勘案することが大切ですので、気になる方はまず歯医者さんでカウンセリングを受けましょう。
▶インプラント治療を費用より質で探したい方は「インプラント治療で失敗しないための歯医者さんの見つけ方」の記事をご覧ください。
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■他のインプラント治療のコラム:https://teech.jp/column/inpurantochiryo
■インプラント治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/inpurantochiryo-interview
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
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長崎大学歯学部歯学科卒業