覚えておきたい!インプラントの種類
インプラントと聞くと、「チタン製のネジ」を頭に思い浮かべる人が多いことでしょう。失った歯を歯根の部分から補うことができる治療法ですが、どれも同じ形をしているわけではありません。メーカーによって構造や素材、形状などに違いが見られます。ここではそんなインプラントの種類について、それを覚えておく理由を含めて解説します。
インプラントの種類を覚えておく理由
自分が受けたインプラントの種類について、覚えておかなければならない理由は次の通りです。
引っ越し
インプラントは、10年20年と長持ちする装置です。その間、引っ越しをする可能性は十分あり得ますよね。
引っ越しによって転院を余儀なくされた場合、新しい歯科医院で自分が受けたインプラントの種類について説明しなければならなくなります。
その際、インプラントを入れてくれた歯医者さんに説明をお願いするのも良いですが、ケースによってはそれが難しいこともありますので、少なくとも自分が受けたインプラントの種類については把握しておきましょう。
▶インプラント治療途中、治療後に引っ越しする場合は「引っ越ししたら困る!?インプラント治療の引継ぎ」の記事でやるべきことを確認してください。
インプラントの表面処理の種類
閉院
インプラント治療を受けた歯科医院が将来、閉院する可能性もあります。治療を担当した歯医者さん自体いなくなってしまうことから、インプラントに関する情報が得られなくなります。そうしたケースも想定して、自分のインプラントの種類については知っておくことが大切です。
外出先でのアクシデント
海外も含めた旅行先で、何らかのアクシデントに巻き込まれ、インプラントへの迅速な対応が求められることもあり得ます。そんな時に主治医と連絡が取れなかったら、深刻な状態を招きかねません。
とてもレアなケースではありますが、自分のお口の中にあるインプラントの種類を知っておくだけでも、トラブルによる被害を最小限に抑えることは可能です。
インプラントのメーカーの種類
インプラントを開発・販売しているメーカーにはたくさんの種類があります。
インプラントは100種類以上ある
今現在、世界では100社以上のインプラントメーカーがそれぞれの製品を開発・販売しています。主なメーカーは以下の通りです。
■世界4大インプラントメーカー
世界で最も使われているインプラントです。北欧とアメリカに集中しています。
・ストローマン社(スイス)
・ノーベルバイオケア社(スウェーデン)
・ジンマー社(アメリカ)
・アストラテック社(スウェーデン)
■主な海外メーカー
世界4大インプラント以外にも、世界には以下のようなメーカーの製品がよく使われています。
・BIOHORIZONS社インプラント
・アストラテックインプラントシステム
・カムログインプラントシステム
・SPIシステム
・キーストーンデンタル社
■主な国内メーカー
日本国内の主なインプラントメーカーは以下の通りです。
・京セラメディカル株式会社
・バイオメット3iジャパン株式会社
・株式会社ジーシー
・ストローマン・ジャパン株式会社
・ノーベル・バイオケア・ジャパン株式会社
・バイコンジャパン株式会社
・株式会社プラトンジャパン
・株式会社ブレーンベース
日本でよく使われるインプラントの種類
上述したように、インプラントメーカーの種類は実に豊富です。とはいえ、日本でよく使われているインプラントは、世界4大メーカーに集中しています。信頼性が高く、治療実績も豊富なので、おそらく皆さんも一番目の選択肢として、世界4大メーカーのインプラントを検討することでしょう。
インプラントの構造の種類
インプラントの構造は、2つの種類に分けられます。
1ピースタイプ
人工歯根であるフィクスチャーと連結装置のアバットメントが一体化したタイプです。手術が1回で済む反面、アバットメントに不具合が生じたら、インプラントごと撤去しなければならないという欠点もあります。
2ピースタイプ
フィクスチャーとアバットメントが分離しているタイプです。一次オペでフィクスチャーを埋入し、二次オペでアバットメントを連結します。2つのパーツから構成されているので、さまざまな調整が利きやすいという利点があります。
インプラントの素材の種類
インプラントのフィクスチャーと被せ物には、それぞれ以下に挙げるような素材が使われます。
フィクスチャー(人工歯根)
■純チタン・チタン合金
骨との結合性が高い「チタン」が大半を占める素材です。強度が高く、長持ちしやすいです。
■チタン・ニッケル合金
純チタン・チタン合金よりも骨への結合性が劣ります。形を整えやすいという点においては、優れています。
被せ物(上部構造)
インプラントの被せ物である上部構造には、以下に挙げるような素材が使われます。
■オールセラミック
セラミックのみを使用した被せ物です。審美的に美しく、金属アレルギーのリスクもありません。ただし、強い衝撃に対して弱い性質があります。
■ジルコニア
天然歯に近い色を再現できる材料ですが、オールセラミックには審美的に劣ります。強度は極めて高く、強い衝撃を受けても割れにくいです。
■メタルボンド
外側をセラミック、内側を金属で構成された被せ物です。金属色が透けることがありますが、強度が高いというメリットが得られます。費用もオールセラミックやジルコニアより安いです。
■ハイブリッドセラミック
セラミックとレジン(白いプラスチック)を組み合わせた材料で、比較的安いのが特長です。レジンが配合されていることから、経年劣化が起こりやすいです。
■ゴールド
ゴールド(金)を使用した被せ物です。金属アレルギーが比較的起こりにくいメタルクラウンです。金属色が目立ちます。
▶インプラントの構造や素材の詳細は「インプラントの構造・素材」記事をご覧ください。
インプラントの表面処理の種類
インプラント体の表面には、以下に挙げる処理が施されます。
サンドブラスト処理
フィクスチャーに砂(アルミナ粒子)を吹き付けて、表面を粗くする処理です。フィクスチャー表面の酸化膜も除去され、骨との結合性が向上します。
酸処理
サンドブラスト処理を施した後、酸によって洗浄します。
酸化処理
フィクスチャーに「酸化チタン」を形成する目的で酸化処理が行われます。骨との結合性が向上します。
機械研磨処理
機械で磨き上げることで表面が滑らかになり、骨との結合性が高まります。
ハイドロキシアパタイトコーティング
歯や骨の主成分である「ハイドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)」をフィクスチャー表面にまぶします。その結果、骨と結合しやすくなります。
インプラントの形状の種類
フィクスチャーの形状には、以下に挙げる種類があります。
スクリュータイプ
ネジの形をした人工歯根です。最もポピュラーな形状といえます。骨と接する面積が多く、骨と結合しやすいインプラントです。
シリンダータイプ
ネジのらせんが付与されていないタイプのインプラントです。ハンマーで顎の骨に打ち込みます。埋入処置は容易なのですが、スクリュータイプほど安定性は高くありません。
バスケットタイプ
外見上は、スクリュータイプに酷似していますが、中心部が空洞であり、表面にも複数の穴が形成されています。空間へと骨が入り込むため、たくさんの面積で骨と結合できます。ただし、高度な技術が必要であり、現在ではあまり採用されていません。
まとめ
このように、インプラントにはメーカーに始まり、構造や素材、表面処理にもたくさんの種類があります。将来、別の歯科医院にかかるときのことを考えると、そうした種類についてしっかり覚えておく必要があります。
現状、引っ越しや転居などでインプラントのメンテナンス先を探している方は、自分が受けたインプラントを取り扱っていることはもちろん、インプラント治療が得意な歯医者さんを探すことが大切です。
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■他のインプラント治療のコラム:https://teech.jp/column/inpurantochiryo
■インプラント治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/inpurantochiryo-interview
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
【コラム執筆歯科医師の紹介】
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長崎大学歯学部歯学科卒業