インプラントは日帰り治療も可能!?

インプラント治療は、手術が2回に分けて行われたり、人工歯根が顎の骨と結合するまで待機したりするなど、治療に時間がかかるイメージが強いかもしれません。実際、一般的なインプラント治療は長い期間を要しますが“日帰り治療”が可能なケースもあります。
1回法と2回法の治療の違い
インプラントの日帰り治療は、いわゆる1回法で行われます。ここではそんな1回法と2回法の違いを簡単にご説明します。
インプラント手術の1回法
1回法は、人工歯根の埋入とアバットメント(人工歯根と上部構造を連結させる部品)の装着を同時に行う手術法です。手術の回数が1回で済むため、このように名づけられています。
インプラント手術の2回法
2回法は、1回目の手術で人工歯根の埋入、2回目の手術でアバットメントの装着を行う手術法です。1回目の手術後は、人工歯根の安定が得られるまで数ヶ月待機する必要があります。
▶インプラント治療における1回法と2回法の違いを詳しく知りたい方は「インプラント治療における1回法と2回法の違い」の記事をご覧ください。
インプラントの日帰り治療のポイント
インプラントの日帰り治療には、以下に挙げるような特徴があります。
メリットは手術したその日に噛めること
インプラントの日帰り治療なら、その日にインプラントの埋入から仮歯の装着まで行うことが可能です。本来であれば、数ヶ月を要するプロセスをたった1日で行えるのです。
仮歯を装着するということは、手術したその日に食べ物を噛めるようになることを意味します。これは患者さんにとってとても大きなメリットといえます。
条件は埋入時に良好な「初期固定」が得られること
インプラントの日帰り治療は、専門的な言葉で「即時荷重法(そくじかじゅうほう)」と呼ばれています。人工歯根を埋入して、すぐに荷重を与えられることから、このような名前が付けられています。
つまり、仮歯を装着して、噛める状態をその日に作り上げることができるのです。これは人工歯根の埋入と同時に良好な初期固定が得られるからです。 初期固定とは、人工歯根を顎の骨に埋入した際の“収まりの良さ”のようなものです。人工歯根を埋め込んだ時に、骨と密着するようにしっかり固定されていれば、すぐに噛んでもズレたり、外れたりしませんよね。
即時荷重法は、顎の骨の状態が良いケースに適応されるため、初期固定も得やすいのです。
日帰り治療ができるケース
インプラントの日帰り治療ができるケースは、一部に限られています。
骨質が良い
インプラントの日帰り治療である即時荷重法は、骨質の良し悪しによって適応の可否が決まります。顎の骨がしっかりしていて、初期固定が得られやすければ、その日に仮歯で咬んでも問題なくなります。
オールオン4
4本のインプラントで、総入れ歯の上部構造を支えるオールオン4なら日帰り治療が可能です。オールオン4は、人工歯根を斜めに埋め込むことができるので、骨質にやや問題があったとしても手術を安全に進められます。
つまり、骨質が良い部分に向かって人工歯根を埋めることができ、その日のうちに仮歯も装着可能です。
▶オールオンの詳細は「インプラント治療のオールオン4という選択」の記事でご確認ください。
日帰り治療ができないケース
インプラントの日帰り治療ができないケースは、以下の通りです。
良好な初期固定が得られない
骨が不足しているなどの理由で、良好な初期固定が得られないケースは、日帰り治療ができません。無理して仮歯を装着すると、噛んだ時の圧力に耐えきれず、人工歯根が脱落します。
1回法が適応できない
1つ目のケースと重なる部分がありますが、1回法を適応できないケースは原則として日帰り治療も不可能です。手術を2回に分ける時点で、日帰りにはならないからです。
ちなみに、1回法が適応できないケースというのは、“骨質が悪い”以外にも傷の治りが遅くなる病気を患っているなど、いくつかの要因が挙げられます。
日帰り治療のスケジュール
インプラントの日帰り治療は、以下のスケジュールで進んでいきます。
治療内容の確認
まずは治療内容の確認から始まります。その後、歯科衛生士による口腔内の清掃が行われます。
麻酔処置
静脈内鎮静法や局所麻酔を施します。静脈内鎮静法は、歯科麻酔科医が行います。麻酔の導入には数分から数十分かかります。
▶インプラント治療における麻酔の方法を詳しく知りたい方は「インプラント治療の痛み・不安を軽減する麻酔術」の記事をご覧ください。
埋入手術
人工歯根を顎の骨に埋め込む手術です。埋入する部位や本数によっても変わりますが、一般的には1~2時間で終わります。痛みを感じることはありません。
歯の型取り
埋入手術が完了したら、歯の型取りを行います。仮歯を作るための工程です。
休憩(歯科技工士による仮歯の製作)
型取りが終わったら、患者さんは休憩に入ります。その間、歯科技工士が仮歯の製作・調整を行います。
仮歯の試適
出来上がった仮歯を試しに装着します。1回でぴったり適合することは稀であり、咬み合わせや全体のバランスの調整が必要となります。
仮歯の装着
仮歯の調整が終わったら、いよいよ装着です。見た目も自然な形に仕上がります。
▶仮歯の重要性は、「インプラント治療の仮歯の重要性」の記事をご覧ください。
帰宅
治療後の注意点などをしっかり理解した上で安静に過ごしましょう。その日の夕食から仮歯で噛むことが可能です。
本物の被せ物の装着
仮歯はあくまで仮の歯なので、数ヶ月後には本物の被せ物を装着します。その間、仮歯にトラブルが生じたら、速やかにかかりつけ科を受診しましょう。
まとめ
このように、インプラントは日帰り治療も可能です。インプラントの長い治療期間がネックとなっている場合は、非常に有用な治療法といえます。
ただ、日帰り治療が適応できるケースは一部に限られるため、まずは歯医者さんに相談することが大切です。
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■他のインプラント治療のコラム:https://teech.jp/column/inpurantochiryo
■インプラント治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/inpurantochiryo-interview
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
【コラム執筆歯科医師の紹介】
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長崎大学歯学部歯学科卒業