インプラント治療で使うアバットメントって何?

インプラント治療では、人工歯根であるフィクスチャーを顎の骨に埋め込みます。その上に人工歯である上部構造を装着するのですが、両者を連結する装置が必ず必要となります。
それが”アバットメント”です。アバットメントは、単なる“つなぎ”のようなパーツに思われがちですが、実はいくつかの重要な役割を担っています。
ここではそんなアバットメントの重要性や装着するタイミング、使用する素材などをわかりやすく解説します。
アバットメントとは
アバットメントは、人工歯根と人工歯をつなぐ連結装置です。人工歯の土台ともなるパーツで、インプラント治療には欠かすことができません。製品によっては人工歯根と一体となっているものもありますが、基本的には独立したパーツです。
アバットメントの重要性
アバットメントは、以下に挙げるような役割を担っており、極めて重要なパーツといえます。
人工歯根と上部構造の保護
人工歯である上部構造は、常にいろいろな刺激や圧力にさらされています。アバットメントに適切な形態を付与することで、上部構造への負担が軽減され、人工歯根や顎の骨へと効率良く圧力を伝えることが可能となります。これは人工歯だけでなく、上部構造の保護にもつながります。
審美性の確保
アバットメントは、口腔に露出し得る部位でもあるため、高い審美性が要求されます。そのため、アバットメントの設計には審美性も考慮されています。
人工歯根の角度の補正
人工歯根を埋入できる角度には、一定の制限があります。顎の骨や厚み、幅などが個々人によって大きく異なるからです。理想的な角度で人工歯根を埋入できなかった場合は、アバットメントによって補正することができます。
その結果、人工歯を正しい角度で被せることが可能となり、噛んだ時の力の方向性もコントロールすることができるのです。
アバットメントを装着するタイミング
アバットメントを装着するタイミングは、手術の方法によって異なります。
2回法
1回目の手術で人工歯根の埋入、2回目の手術でアバットメントの装着を行う手術法です。1回目の手術から3~6ヶ月経過したのちアバットメントを装着します。人工歯根と顎の根が結合するのを待つためです。今現在、最も標準的なインプラント治療の流れです。
1回法
その名の通り人工歯根の埋入とアバットメントの装着を1回の手術で行う方法です。手術後はアバットメントが口腔内に露出した状態となります。
▶インプラント治療の1回法と2回法の違いは「インプラント治療における1回法と2回法の違い」をご覧ください。
抜歯即時埋入法
保存不可能な歯を抜歯すると同時に、人工歯根の埋入する手術法です。アバットメントを同時に装着することも可能です。
▶インプラント治療における抜歯即時埋入法とは何か知りたい方は「インプラントの抜歯即時埋入法vs抜歯待時埋入法」をご覧ください。
インプラント体との連結方法
インプラント体とアバットメントは、ネジによって連結します。両者が一体となっているワンピースタイプのインプラントは、例外としてネジが存在していません。
アバットメントの素材
アバットメントに使用される主な素材は、以下の3つです。
チタン合金
最も標準的なアバットメントの素材で、人工歯根にも使われています。生体親和性に優れ、強度も十分です。ただし、歯茎が下がった際に、金属色が目立ちやすくなるというデメリットがあります。
金合金
金合金は適度な硬さを備えた材料です。人工歯根にかかる圧力を緩和する作用が期待できます。費用はチタン合金よりも高くなります。歯茎が下がった際には、金属色が露出します。
ジルコニア
ジルコニアは人工ダイヤモンドとも呼ばれる材料で、極めて高い強度を誇ります。セラミック治療で用いられることが多く、審美性にも優れた材料です。歯茎が下がったとしても、アバットメントが目立ちにくい傾向にあります。
また、ジルコニアは金属ではないことから、金属アレルギーのリスクを解消できます。ただし、金属製のアバットメントよりも費用が高くなる傾向にあります。
まとめ
このように、連結装置であるアバットメントはインプラント治療における重要な役割を担っているパーツなので、素材等を慎重に選ぶ必要があります。インプラント治療を歯医者さんに相談する際には、人工歯根だけに意識を向けるのではなく、アバットメントにも注目するようにしましょう。
▶インプラントの構造や素材を全体的に知りたい方は「治療前に詳しく知りたい!インプラントの構造・素材」をご覧ください。
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▼このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています▼
【コラム執筆歯科医師の紹介】
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長崎大学歯学部歯学科卒業