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神経の治療(根管治療) 2021/02/27

歯の神経を抜くメリット・デメリット

歯の神経を抜くメリット・デメリット

大きな虫歯などで歯の神経に炎症が起こった場合、多くのケースで神経を抜く治療が必要なります。一方で歯にとって神経は命をつなぐ生命線であり、神経を抜くことはそれ以後の歯の寿命を大きく左右するといっても過言でありません。したがって虫歯など歯のトラブルは早い段階で治療をし、神経を残すことに努めることが肝心です。
しかし、やむをえず神経を抜く治療が必要になった場合には、そのメリットとデメリット、さらに治療を途中で放置するリスクなどを十分に理解して治療に臨みましょう。

歯の神経とは

歯の“神経”とは、専門的には「歯髄(しずい)」と呼ばれる歯の内側にある組織のことを意味しています。 歯髄には歯の感覚をつかさどる神経と、歯に酸素や栄養を送る血管が含まれており、この神経や血管は「根管」という歯の根っこの中の管を通って全身につながっています。

歯の神経を抜くのは虫歯が“歯髄”にまで進行した時

歯は表面からエナメル質、象牙質、歯髄の3層構造になっており、一番内側にある歯髄に細菌が感染したり、炎症がみられたりした際に神経を抜く治療がおこなわれます。
その主な原因は虫歯で、以下に挙げる虫歯の進行レベルの「C3」「C4」が神経を抜く治療の対象となります。

歯の神経を抜くのは虫歯が“歯髄”にまで進行した時

CO/初期虫歯

歯の一番外側にあるエナメル質の表面がわずかに溶けだした状態です。自覚症状はなく、歯の表面がやや白っぽく見えるのが特徴です。COは基本的に治療の必要がなく、歯磨きの徹底やフッ素の使用などで元の健康な状態に戻すことができます。

C1/エナメル質の虫歯

虫歯がエナメル質の内部に進行した状態です。痛みなどの症状はありませんが、まれに「甘いモノがしみる」といった症状があらわれるほか、歯の表面がわずかに欠けたようにみえることがあります。C1レベルでは虫歯になった部分を削り、プラスチックなどの詰め物を入れる処置をおこないます。

C2/象牙質の虫歯

エナメル質のすぐ下にある象牙質にまで虫歯が進行した状態です。この段階になると冷たいものがしみはじめるほか、虫歯がさらに奥まで進行すると熱いものもしみるようになります。C2レベルでは歯を大きめに削り、詰め物や被せ物を入れる処置がおこなわれます。

C3/歯髄(神経)まで進行した虫歯

象牙質からさらに奥の歯髄(神経)にまで虫歯が進行した状態です。冷たいものや熱いものがしみるだけでなく、何もしなくてもズキズキする激しい痛みをともなうようになります。
これは虫歯の穴から歯髄の中に細菌が侵入して神経に炎症を起こしたためで、この状態に至ると神経を残すのは難しく、神経を抜く治療が必要となります。

C4/歯根(歯の根っこ)だけが残っている虫歯

虫歯で歯の大部分を失い、根っこだけが残っている状態です。この段階ではすでに神経が死んでしまった歯も多く、以前にはあった痛みも感じなくなります。
C4レベルでは多くのケースで抜歯が適応となりますが、歯ぐきより上に歯質が残っているケースでは、神経を抜く治療で歯が残せる可能性があります

歯の神経を抜くメリット

歯の神経を抜くメリットは、神経の炎症によって生じる痛みを抑えるほか、虫歯がそれ以上に進行するのを食い止め、自身の歯が残せることにあります。

痛みなどの症状が治まる

神経を抜く治療が必要になる歯の多くは、そこに至るまでに激しい痛みをともない、日常生活にも支障をきたしてしまいます。その痛みの元となる神経を抜き取ることで、痛みのストレスからも解放されます。

自分の歯が残せる

神経を抜く治療では虫歯になった歯質をすべて取り除くほか、根管の中を消毒して細菌の感染がそれ以上に広がるのを防いでいきます。これにより歯の土台となる歯根(歯の根っこ)が残せるため、被せ物を入れることでこれまでと同じように歯を維持できるようになります。

歯の神経を抜くデメリット

痛みを抑えたり、虫歯の進行を食い止めたりするためには、やむをえず神経を抜く治療が必要となります。しかし歯にとって神経を抜くことは、メリットよりもデメリットのほうが多いことを理解しておくことが大切です。

治療が長引く

虫歯が神経にまで達してしまうと、「歯を削る」「詰め物・被せ物を入れる」の2つのステップの間に「神経を抜く」という過程がプラスされます。そのため通常の治療よりも時間がかかり、さらに費用も別途必要となります。

歯がもろくなる

神経を抜いて酸素や栄養が行き渡らなくなった歯は、そのまま枯れ木のように弱ってもろくなります。神経を抜いた歯は強い衝撃にダメージを受けやすく、硬いものを噛んだ時に歯が欠けたり、根元から折れたりすることが多いほか、細菌に対する抵抗力も弱くなります。
以上のことから、神経を抜いた歯は神経のある歯に比べ、寿命が短くなる傾向があります。

歯が黒ずむ

神経を抜いた歯はツヤが失われ、さらに数年経つと黒っぽく変色していきます。これは歯への血流がなくなることで象牙質に含まれるコラーゲンが古くなり、黒くなったのが透けて見えるようになるためです。
この変色は着色(黄ばみ汚れ)とは異なり、通常のクリーニングやホワイトニングでは白くすることができません。

歯の異変に気づきにくくなる

歯の神経を抜くと、当然ながらその歯は刺激に対する感覚を失います。次に虫歯になっても痛みを感じないため、進行しても発見が遅れやすく、気づいた時には手遅れ(抜歯)になるケースも多くみられます。

歯の神経をどうやって抜くの?

では実際に、歯の神経を抜く治療はどのように進められていくのか、治療のステップごとに詳しく解説していきましょう。

歯の神経をどうやって抜くの?

STEP1:歯を削る

神経を抜く歯の多くは大きな虫歯をともなうため、まずはその虫歯をきれいに取り除いていきます。すでに詰め物や被せ物が入っている場合は、それも一緒に削り取っていきます。そこから歯髄まで歯を削り進めたら、次の「根管清掃」のステップをおこなっていきます。

STEP2:歯の神経を抜き、根管を清掃する

「ファイル」「リーマー」と呼ばれる針のような細い器具を使って、歯髄や根管内の神経を抜き取ります。それと同時に細菌に汚染された根管の歯質も丁寧に削り取り、薬剤を併用しながら根管内を無菌に近い状態にしていきます。
最後に殺菌作用や炎症を鎮める作用のある薬剤を根管内に塗布し、仮のフタを詰めたら初回の治療が終了です。

STEP3:根管の中に詰め物を入れる

初回の治療から1週間ほど間隔をあけ、症状が落ち着いたのを確認したら、次の根管充填(こんかんじゅうてん)」のステップに進みます。根管充填では「ガッタパーチャ」と呼ばれるゴム状の詰め物を根管内に緊密に詰め、細菌の再感染を防いでいきます。
なお、1週間がたっても痛みなどの症状が治まらない場合や、根管の清掃が不十分と判断される場合は、再度STEP2の作業を繰り返しおこなっていきます。根管充填が終わったら、歯に土台と被せ物を入れて治療が終了です。 

▶歯の神経を抜く”根管治療”の流れは「根管治療(歯の神経の治療)の方法と流れ」の記事をご確認ください。

神経を抜く治療:放置するとどうなる?

歯の神経を抜く治療は最短で2回、長くなると4~5回ほど回数がかかり、すべての治療が終わる(被せ物が入る)までには約1~2か月の期間を要します(週1回の通院ペース)。
通常の虫歯の治療に比べると期間は長くなりますが、治療を途中でやめてしまうと以後に様々なリスクを生じさせてしまうため、最後まで根気よく治していきましょう。また神経を抜いた歯については、それ以降も歯科医院での定期的なチェックを受けておくことをおすすめします。

治療の途中で放置した場合

治療の途中で放置してしまうと、根管の中で再び細菌が増殖し、痛みを再発させるおそれがあります。また最悪なケースでは、再治療をしても歯が残せなくなる場合もあるため注意が必要です。
歯の神経を抜く治療をすると、多くのケースでこれまであった強い痛みから解放されます。そのため「痛みを何とかしたい」と歯科医院を受診された方の中には、治療で痛みが治まったのを期に通院を中断される方も少なくありません。
しかし痛みは消えてもその根本の原因が完全に治ったわけではないので、最後まできちんと治療しましょう。

治療後に放置した場合

先述にもあるように、神経を抜いた歯は以後少しずつ弱っていくほか、虫歯になっても痛みなどの症状を感じなくなります。したがって異変に気づかないまま手遅れにならないためにも、神経を抜く治療が終わった後も定期的に歯科を受診し、トラブルが起こっていないかチェックしてもらいましょう。
また神経を抜いた歯については、根っこの先に膿が溜まる「根尖病巣(こんせんびょうそう)」にも注意が必要です。これは細菌に対する抵抗力が弱まったことや、神経を抜く治療の不備などが原因で、歯根の先に再び細菌が感染して生じていきます。
根尖病巣では「歯ぐきが腫れる」「噛むと痛い」といった症状が代表的ですが、なかには自覚症状がないまま進行し、レントゲンで偶然発見されるケースも少なくありません。進行した根尖病巣では歯が残せなくなることも多いため、こちらも定期的なチェックが必要です。

まとめ

歯にとって神経を抜くことはメリットよりもデメリットのほうが大きいため、可能なかぎり神経は残すほうが賢明といえます。そのためには虫歯などのトラブルは長く放置せず、早めに歯科を受診して治療を受けることが肝心です。
痛みや虫歯の進行を抑えるためにやむをえず神経を抜く場合にも、メリットやデメリットをよく理解のうえ、治療が終わるまで根気よく通院し、歯の温存に努めましょう。

▶虫歯にならないための予防方法は「虫歯の予防方法とは。フッ素やキシリトールは効果的?」の記事をご確認ください。

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■他の根管治療のコラム:https://teech.jp/column/konkanchiryo
■根管治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/konkanchiryo-interview
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【コラム執筆・監修者の紹介】 
影向 美樹
歯科医師免許取得後、横浜・京都の歯科医院にて10年ほど歯科医として勤務。現在は歯科分野を中心とした医療系Webライターとして活動中。

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