滑舌・発音の悪さは歯並びで変わる!?
滑舌や発音の悪さに悩まされている人は、口腔周囲に何らかの原因が認められます。声帯の状態や呼吸法に関してはイメージしやすい人も多いかと思いますが、意外に見落とされがちなのが歯並びです。ここではそんな滑舌が悪くなる要因について、歯並びを中心にわかりやすく解説します。
滑舌・発音が悪い4つの要因
滑舌や発音が悪くなる要因としては、主に以下の4つが挙げられます。
声帯に問題がある
声帯は、いわゆる発声器官であり、ここに異常がある場合は、そもそも声が出ない、声がかすれる、などの症状が認めらます。同時に、滑舌や発音にも悪影響が及ぶこともあります。声帯の病気や異常は歯科の領域ではないため、耳鼻科を受診しましょう。
呼吸法に問題がある
呼吸法が不適切だと、主に発声障害が現れます。滑舌や発音の異常も伴うことから、ボイストレーニング(発声練習)などを行うと良いでしょう。
口腔に問題がある
口腔領域で発音や滑舌に直結する要素は、歯並びです。歯並びが乱れていると、舌の運動範囲が狭められることから、発音や滑舌の異常を伴いやすくなります。特に「サ行」「タ行」「ラ行」の発音が悪くなります。
口周辺の筋肉に問題がある
言葉を発音する際には、口輪筋や頬筋、舌筋といった口腔周囲筋の運動が欠かせません。これらの筋肉に何らかの異常が生じると、発音にも障害が現れます。
具体的には筋肉の凝りや衰えなどです。全身の筋肉と同様、過剰な負担がかかると凝りが生じ、極端に使用しなくなると衰弱していってしまうのです。
滑舌が悪くなる歯並びの種類
滑舌が悪くなる原因は、歯並びの種類によって異なります。
出っ歯(上顎前突)
出っ歯は、上の前歯あるいは上顎骨が前方へと突出した歯並びで、口呼吸になりやすいです。口唇が正常に閉まらず、息漏れが生じて発音にも障害が現れやすいです。
受け口(下顎前突)
受け口は、下の前歯あるいは下顎骨が前方へと突出した歯並びです。上下の前歯部にすき間が生じることで発音障害が現れることがあります。
すれ違い(交叉咬合)
歯列の一部分にすれ違った状態の咬み合わせが認められる歯並びです。左右非対称の咬み合わせとなることから、舌の運動に支障をきたすことがあります。
乱ぐい歯、八重歯(叢生:でこぼこ)
歯列がでこぼこになっている乱ぐい歯は、主にスペースの不足が原因です。つまり、舌が運動する範囲も狭められることから、発音および滑舌に悪影響が生じます。
すきっ歯(空隙歯列)
歯列内にすき間が生じている歯並びで、息漏れが生じます。主に「サ行」の発音に障害が現れます。
口が閉まらない(開咬)
奥歯で咬んだ際、前歯部にすき間が生じる歯並びです。口が閉まらないだけでなく、上下の歯列間に異常な空間が存在することから、発音に深刻な異常をもたらします。
▶悪い歯並びの種類と、歯並びごとの原因・弊害は「歯並びが悪い原因と生活への影響とは!?」の記事をご覧ください。
歯並びを改善する矯正の種類
大人の矯正歯科治療には主にワイヤー矯正とマウスピース矯正の2種類があります。それぞれのどのような特徴があるのでしょうか。
ワイヤー矯正
最もポピュラーな矯正装置です。金属製のワイヤーとブラケットを歯列に設置する固定式の矯正装置です。適応範囲が広く、ほとんどの歯並びが対象となります。 ホワイトワイヤーやセラミック製のブラケット、歯列の内側に設置するリンガルブラケット(舌側矯正)であれば目立ちにくく、口元の審美性の低下を抑えることができます。
マウスピース(インビザライン)
透明な樹脂製のマウスピースを装着することで、歯並びの乱れを改善する方法です。インビザラインは、世界で最も普及しているマウスピース矯正のシステムです。
目立ちにくい、異物感や不快感が少ない、食事や歯磨きの際に取り外せるといったメリットがたくさんある矯正装置ですが、ワイヤー矯正ほど適応範囲は広くありません。
その他
小児矯正では、上顎の成長を抑制するヘッドギア、下顎の成長を抑制するチンキャップ、顎骨の幅を拡大する拡大床などが用いられます。いずれも成長期だからこそ効果が見込める矯正装置です。
滑舌の改善以外の歯列矯正のメリット
歯列矯正は、滑舌や発音の異常を改善するだけでなく、以下に挙げるようなメリットも得られます。
美しい見た目を手に入れる
歯並びが整うと、当然のことながら見た目が美しくなります。
▶歯並びと印象の関係については「歯並びが第一印象に影響する理由」の記事をご覧ください。
劣等感の解消
乱れた歯並びがコンプレックスになっている人は少なくありません。滑舌や発音が悪いことに劣等感を抱いている人もいらっしゃることでしょう。歯列矯正で歯並びが正常化されれば、そうした劣等感を解消することが可能となります。
咀嚼機能の改善
出っ歯や受け口、乱ぐい歯といった歯並びの乱れは、発音や見た目の問題に加え、咀嚼障害も引き起こします。歯列矯正を受ければ、咀嚼機能が改善し、効率良く咬めるようになります。
歯の寿命を延ばす
歯並びと咬み合わせの異常が解消されると、咀嚼能率が向上し、個々の歯にかかる負担が軽減されます。また、清掃性も高まることから、虫歯や歯周病のリスクも低下します。その結果、歯の寿命を延ばすことにつながるのです。
まとめ
このように、歯並びの状態は、発音や滑舌と深い関連が認められます。普段から滑舌や発音の悪さに悩まされている人は、歯並びの状態を一度、精査してみましょう。ケースによっては、歯列矯正によって大きく改善することがあります。
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■矯正歯科の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/kyoseishika-interview
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(このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています)
【コラム執筆歯科医師の紹介】
運営サイト:「みんなの歯学」https://minna-shigaku.com
長崎大学歯学部歯学科卒業