歯並びが悪い原因と生活への影響とは!?
ひと言で“歯並びが悪い”といっても、その原因や症状は様々です。普段からお口をぽかんと開けていたり、歯ぎしりをしていたりするなど、何気ない習癖が深刻な歯並びの異常を招いていることもあるのです。 ここではそんな歯並びが悪くなる原因と生活への影響をわかりやすく解説します。
悪い歯並びと関係がある症状やクセ
次に挙げるような症状やクセがある場合は、歯並びの乱れが認められるかもしれません。
・ぽかんと口を開けている
・いつも唇が乾燥している
・歯ぎしりをしている
・寝起きが悪い
・食事に時間がかかる
・硬い食べ物が苦手
・猫背で姿勢が悪い
一見すると、いずれも歯並びとは直接関係のない症状や行為のように見えますが、習慣化することで歯列の乱れを誘導することがあるのです。その因果関係については、個別の歯並びの部分で解説します。
悪い歯並びの種類とその原因と弊害
歯列の乱れを治療によって改善する場合、まずは歯並びの種類と根本的な原因をしっかり見極める必要があります。出っ歯や受け口などは、ひと目見てわかる症状ですが、その背景には患者さん特有の習癖などが絡んでいたりするものです。ここでは悪い歯並びの原因と弊害について、個々のケースごとに解説します。
出っ歯(上顎前突)
出っ歯とは、上の前歯あるいは上顎骨が前方へと突出している歯並びです。専門的には上顎前突(じょうがくぜんとつ)といいます。
■原因
出っ歯の原因は、大きく2つに分けることができます。それは“前歯の生え方の異常と”上顎骨の大きさ・位置の異常“の2つです。 例えば、成長期にお口がぽかんと開いていることが多いと、口腔周囲の筋肉が発達せず、前歯に適切な圧力が伝わらなくなります。
その結果、前歯が前方に傾くなどの異常が生じます。 硬い食べ物が苦手で、軟らかいものばかり食べていると、下顎骨の発育が進まず、相対的に上顎骨が前方に位置することになります。その結果、出っ歯となることもあります。もちろん、遺伝的な要因も絡んできます。
■弊害
出っ歯による主な弊害は、口の乾燥や咀嚼障害、発音障害などです。重症度が比較的高い出っ歯では、唇を閉じるのが難しく、お口の中が乾燥しがちになります。
また、前歯で咬み切るのが難しくなったり、発音しにくくなったりするなどの弊害も認められます。特徴的な顔だちであることから、深刻なコンプレックスになることも珍しくありません。
受け口(下顎前突)
受け口とは、下の前歯あるいは下顎骨が前方へと突出している歯並びです。専門的には下顎前突(かがくぜんとつ)といいます。
■原因
受け口の原因も出っ歯と同様2つに分けられます。下の前歯が前方に傾いている場合と下顎骨が大きすぎる、もしくは上顎骨よりも前方に位置している場合の2つです。
受け口は、どちらかというと骨格的な異常が原因となりやすく、その兆候は早い時期から認められます。それだけに、受け口に関してはかなり早い段階から矯正を始めた方が良いといえます。
現在では、3~4歳から小児矯正を開始するケースも少なくありません。歯の生え方の異常に由来する場合は、それほど焦る必要はありません。
■弊害
受け口では、前歯で咬み切るのが難しくなるだけでなく、不自然な形で歯と歯が擦れ合います。その結果、前歯部の摩耗が促進されたり、歯周組織に過剰な負担がかかったりします。発音障害や審美障害も認められることがあります。
すれ違い咬合(交叉咬合)
すれ違い咬合とは、上下の歯列が一部、すれ違うように咬み合っている状態です。専門的には交叉咬合(こうさこうごう)と呼ばれています。正常な歯並びは、上の歯列が外側、下の歯列が内側にしていますが、すれ違い咬合では、下の歯列の一部が外側に位置しているのです。
正常な歯並びは、上の歯列が外側、下の歯列が内側に位置しています。すれ違い咬合、あるいは交叉咬合(こうさこうごう)と呼ばれる歯ならびでは、下の歯列が一部外側に位置しています。
その結果、顔だちが左右非対称になったり、効率良く咬めず歯や顎に過剰な負担がかかったりするため要注意です。自分では気付きにくいので、歯医者さんで診察を受ける必要があります。
■原因
すれ違い咬合の主な原因は、上下の顎骨のアンバランスです。骨格的な異常が原因なので、先天性の要因が強く関与していますが、頬杖をついたり、横向きで寝る癖があったりすることでも誘発されます。
■弊害
上下の歯列がすれ違うように咬み合うため、咀嚼能率が低下します。また、顔だちが左右非対称になるなどの審美問題も生じることがあります。
乱ぐい歯、八重歯(叢生:でこぼこ)
乱ぐい歯とは、1歯1歯が別々の方向を向いていて、歯列がでこぼこになっている状態です。専門的には叢生(そうせい)と呼ばれるもので、犬歯が外側に飛び出したものをとくに“八重歯”といいます。
■原因
乱ぐい歯の原因は、スペース不足です。顎の骨が小さいと、親知らずを除く28本の歯をきれいに並べることが難しくなります。その結果、歯が歯列から逸脱してでこぼこの状態となるのです。
■弊害
乱ぐい歯は、清掃性が著しく低下します。一般的な歯ブラシでは隅々まで磨くことが難しく、歯垢や歯石が堆積します。細菌の繁殖も促され、虫歯や歯周病のリスクが上がるだけでなく、口臭の原因にもなります。見た目もあまり良くないという弊害があります。咀嚼能率も当然低下します。
すきっ歯(空隙歯列)
歯と歯の間に、不自然な隙間がある歯並びです。専門的には空隙歯列(くうげきしれつ)と呼び、上の前歯の真ん中に隙間があるものをとくに正中離開(せいちゅうりかい)といいます。
■原因
すきっ歯の原因は、乱ぐい歯と逆です。スペースが必要以上に存在しており、歯列にゆとりがある状態です。歯の本数が少ない、歯の大きさが小さい場合もすきっ歯になりやすいです。
■弊害
歯列に不自然な隙間があると、食べ物が詰まりやすいです。発声の際に呼気が漏れることから、発音障害が生じることもあります。正中離開に関しては、隙間がとても目立つため、口元のコンプレックスになりやすいです。
口が閉まらない(開咬)
口を閉じても、前歯部に空間が生じる歯並びを開咬(かいこう)といいます。奥歯ではしっかり咬み合っており、隙間が生じることはありません。
■原因
上下の前歯が前方に傾くことで開咬になります。指しゃぶりや舌を前方に突き出す癖などが長く残ることが主な原因です。下顎の発育が正常に進まないことでも開咬の症状が認められることがあります。
■弊害
開咬では前歯で食べ物を噛むことが不可能です。口が閉まらず、口腔内や唇が常に乾燥するようになります。食事に時間がかかる、正しく発音できないなどの症状も認められます。
歯並びを矯正する方法とメリット・デメリット
上述したように、歯並びにはたくさんの種類がありますが、いずれも矯正治療によって改善することは可能です。ここではワイヤー矯正とマウスピースによって歯並びを整えるメリット・デメリットをご紹介します。
ワイヤー装置矯正
■メリット
ワイヤー矯正のメリットは、ほとんどの症例に適応できる点です。マルチブラケットと矯正用ワイヤーを用いて三次元的な歯の移動を行うため、比較的重症度の高い症例でも矯正できます。歯の移動速度も早く、細かな調整にも長けた矯正法といえます。固定式の装置であり、取り外して毎日ケアする必要もありません。
・適応範囲が広い
・歯の移動速度が速い
・細かな調整がしやすい
・自分で着脱する必要がない
■デメリット
ワイヤー矯正には、装置が目立ちやすいというデメリットがあります。目立ちにくいホワイトワイヤーや審美ブラケットなどを選択することもできますが、マウスピース型矯正には敵いません。装置に汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクも上昇します。治療に伴う痛みも比較的強いです。
・装置が目立ちやすい
・歯磨きしにくい
・痛みや不快感が比較的強い
・装置が外れることがある
マウスピース(インビザライン)
■メリット
インビザラインなどのマウスピース型矯正には、装置が目立ちにくいというメリットがあります。異物感や違和感も少なく、日常生活に支障をきたす場面がほとんどありません。装置が故障しても、すぐに複製することが可能です。着脱式の装置であり、食事や歯磨きの際には取り外すことができます。
・装置が目立ちにくい
・装着感が良好
・故障しても簡単に複製できる
・治療前と同じように食事、歯磨きできる
・お手入れしやすい
■デメリット
インビザラインは、ワイヤー矯正よりも適応範囲が狭いです。歯を三次元的に大きく移動しなければならない症例には向いていないといえます。また、着脱式の装置ということもあり、患者さんの協力が不可欠です。装着時間を守れない場合は、治療計画に大きな乱れが生じます。
・適応範囲が比較的狭い
・装着時間を守らなければならない
・マウスピースのケアを怠ると虫歯、歯周病のリスクが高まる
歯並びが悪いまま放置するとどうなる?
悪い歯並びを放置すると、以下に挙げるようなリスクが生じます。
虫歯・歯周病になりやすい
歯磨きしにくいため汚れが溜まり、虫歯菌や歯周病菌の活動が活発化します。
しっかり噛めず体に影響が出る
歯並びの乱れは、必ず咬み合わせの異常も伴います。咬み合わせが悪いと、顎や口腔周囲の筋肉、さらには首や肩にまで過剰な負担がかかり、肩こり、倦怠感といった全身症状を引き起こすこともあります。
発音障害が生じる
歯並びは、発音する際に重要な役割を担っています。歯並びに乱れがあると、発音に癖が生じたり、滑舌が悪くなったりすることもあります。
歯茎が下がり歯が抜けやすくなる
歯並びの乱れによって歯周組織に過剰な負担がかかると、歯茎の吸収が起こります。歯を支える組織が壊されて、歯が抜けやすくなります。
顎関節症になりやすい
咀嚼運動の起点となるのは、顎関節です。歯並びや咬み合わせに異常があると、そのしわ寄せは結果的に顎関節へと及び、顎関節症などの異常を引き起こします。
まとめ
このように、歯並びが悪い原因は、生活習慣に関わるものも意外に多いです。同時に、歯列不正による生活への悪影響も出やすいため、今回紹介したような症状に悩まされている人は、一度歯医者さんに相談することをおすすめします。
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■他の矯正歯科のコラム:https://teech.jp/column/kyoseishika
■矯正歯科の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/kyoseishika-interview
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(このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています)
【コラム執筆歯科医師の紹介】
運営サイト:「みんなの歯学」https://minna-shigaku.com
長崎大学歯学部歯学科卒業