矯正歯科治療はどんな流れで、どれくらいの期間かかる?
歯並びの乱れを改善する歯列矯正は、歯科治療の中でもかなり特殊です。それだけに、どのような流れで進行し、どれくらいの治療期間を要するのか、不安な点も多いですよね。ここではそんな矯正の期間の目安や治療の流れをわかりやすく解説します。
矯正歯科治療の期間の目安
矯正歯科治療は、以下に挙げる5つのSTEPで進行します。それぞれのSTEPの通院回数や治療期間の目安も併せて掲載します。
矯正治療全体では、4~6年の期間を要するのが一般的です。
歯並びの状態や選択した矯正法によっては、治療期間を1~2年短縮できることもありますので、上記の数値はあくまで参考程度にお考えください。
顎の骨という硬い組織に埋まった歯を人為的に動かそうとすると、それくらいの期間は必要となるのです。
治療STEP1:診断~計画(通院回数2~3回)
矯正治療のSTEP1は、カウンセリングから治療計画の立案、説明までです。
初診・相談(30~60分)
初診、相談はいわゆるカウンセリングです。歯並びに関する悩みを矯正医に相談しましょう。
矯正治療に関する疑問や不安なども、この時点で解消しておくのが望ましいです。治療への要望も伝えておきましょう。初診の段階では、お口の中を簡単に診査されます。
精密検査(30~40分)
矯正治療を希望する場合には、精密検査へと移行します。口腔や顔面の写真撮影、レントゲン撮影などに加え、セファログラムと呼ばれる特殊な画像診断も行われます。
その他、必要に応じて光学スキャナを用いた型取りや歯科用CTによる撮影も行われることがあります。口腔内診査では、虫歯や歯周病の有無も精密に調べます。
診断(30~60分)
検査結果をもとに、診断を下します。この時点で、上顎前突や下顎前突といった歯並びの種類や根本的な原因がわかります。現在の歯の状況についての詳しい説明です。
治療計画の説明(30~60分)
診断結果に基づいて、治療計画を立案します。
治療内容の細かい説明などは、この段階で行われますので、しっかり理解することが大切です。実際に使用する器具や過去の症例などを参照しながら、わかりやすく説明してくれます。
疑問点が生じたらためらわずに質問しましょう。矯正医の説明に心から納得できて初めて治療に同意することが重要です。
治療STEP2:矯正前治療(通院期間1~4週間)
事前検査で虫歯や歯周病が見つかった場合は、矯正前治療が必要となります。
虫歯・歯周病治療(1~複数回)
虫歯や歯周病を放置したまま矯正を始めることはできません。矯正装置の装着後は、清掃性が大きく低下するため、虫歯や歯周病もさらに悪化します。何より、歯や歯周組織に病気があると、計画通りに歯を動かすことができなくなります。
ですから、虫歯や歯周病は時間をかけてでもしっかり完治させる必要があります。その期間は、歯の状態によって大きく異なります。
歯磨き指導・歯のクリーニング(60分)
矯正開始後は、装置による清掃性の低下が予想されます。矯正を始める前に、正しいブラッシング法を身に付ける必要があります。プロフェッショナルによる歯のクリーニングも併せて行います。
治療STEP3:矯正治療(治療期間2~3年)
治療STEP3では、いよいよ矯正治療がスタートします。
装置の装着(60~120分)
ワイヤー矯正
一般的なワイヤー矯正では、ブラケットと呼ばれる金属やセラミックで作られたパーツを歯面に設置します。設置する位置は厳密にコントロールする必要があり、ほぼすべての歯に接着することから、少々時間がかかります。ブラケットの設置が完了したら、矯正用ワイヤーを通します。
マウスピース型矯正装置
インビザラインに代表されるマウス型矯正装置は、治療のスタートからゴールまでのマウスピースが治療開始前に完成しています。
この段階では、マウスピースの装着の仕方や取り扱い方法についての説明があるだけです。説明された内容をきちんと理解した上で、毎日自分自身で装着することとなります。
調整(20~60分)
矯正装置の装着後は、定期的に歯科を受診しなければなりません。ワイヤー矯正の場合は、ブラケットやワイヤーの調整が必要になります。マウスピース型矯正の場合は、経過を観察していくような流れになります。
歯磨き指導
矯正中は歯磨きも定期的に受けましょう。矯正装置の周囲に食べ物や歯垢、歯石などが堆積しないよう十分注意する必要があります。
治療STEP4:保定(治療期間2~3年)
マルチブラケットやマウスピース型矯正装置による動的治療が完了すると、歯の後戻りを防止するための保定期間へと入ります。
リテーナーへの切り替え
保定期間は、リテーナーと呼ばれる保定装置を装着します。リテーナーは、着脱式のものと固定式のものとがあります。その形態もさまざまで、お口の状態により異なります。動的治療に用いた矯正装置ほど複雑なものではないのでご安心ください。
保定の重要性
歯列矯正によって移動した歯は、そのまま放置すると、少しずつ元の位置へと戻っていってしまいます。せっかく数年かけて歯並びを改善したのに、その効果が水の泡になってしまうことはあまりにも残念ですよね。
ですから、そこからまた数年間、保定装置を装着することになりますが、頑張って乗り切りましょう。保定期間を終えて初めて、美しい歯並びが固定されるのです。
治療STEP5:定期メンテナンス(継続的に)
保定期間を終えても、定期的なメンテナンスの受診が推奨されます。歯並びは、口腔習癖や誤った生活習慣などによって再び悪くなることがあります。定期的にチェックしてもらうことで、そうしたトラブルを未然に防ぎましょう。もちろん、虫歯や歯周病の予防にもつながります。
まとめ
このように、矯正歯科治療の流れはいろいろと複雑ではありますが、歯並びを整える上でどれも欠かすことのできないステップです。
治療時間や治療期間も比較的長くなる傾向にあり、不安に感じる方もいらっしゃることでしょう。それでも長年のコンプレックスだった歯並びを美しくできるのであれば、乗り越えられることかと思います。
いずれにせよ、矯正治療を検討中で疑問や不安などがある人は、まず矯正医に相談することから始めてみてください。矯正相談を無料で行っている歯医者さんも少なくありません。
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■矯正歯科の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/kyoseishika-interview
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(このコラムは歯科医師によって執筆・監修されています)
【コラム執筆歯科医師の紹介】
運営サイト:「みんなの歯学」https://minna-shigaku.com
長崎大学歯学部歯学科卒業