歯の神経の治療(根管治療)でゴムのシート(ラバーダム)つけて治療しているのはなぜ?
皆さんは「ラバーダム」というゴム製のシートをご存知でしょうか?歯の根っこの治療で装着する器具なのですが、一般の歯科医院ではあまり使用されていないため、よく知らないという方が多いかもしれませんね。ここではそんな根管治療におけるラバーダム使用の重要性についてわかりやすく解説します。
▼ラバーダムとは?
ラバーダムとは、根っこの治療を行う歯に対して被せるゴムシートとメタルフレームです。これを装着することによって、処置を施している歯が唾液などで汚染されるのを防ぎます。見た目はとてもインパクトがある器具なので、戸惑われる方もいらっしゃるかもしれませんが、精密な歯の根っこの治療を実施する上で欠かすことのできないものといえます。
▼ラバーダムをつけないとどうなる?
虫歯治療や歯の根っこの治療を受けたことがある方ならわかるかと思いますが、歯の処置中はドリルで削った虫歯の切削粉や唾液などが常に飛散しています。治療中はこれらの切削粉や唾液が治療している歯と常に触れている状態になります。
切削片や唾液にはたくさんの細菌が含まれています。根管治療は根管内の消毒をすることが目的ですので容易にこれらの細菌が入る環境で治療を行えば、消毒をしている脇から新たな細菌を中に入れていることになり、治療としての意味合いが薄れてしまいます。それだけにラバーダム防湿を用いて細菌が根管内に絶対に入らない環境を整えてから治療を行うべきです。
▼ラバーダムを使っている歯医者さんが少ないのはなぜ?
現状の日本ではラバーダムを装着して根管治療を実施している歯医者さんは一部に限られます。
その最大の理由は、日本の歯学教育ではラバーダム防湿の手技を教わる機会がほとんどないことにあります。実際、治療費に加算されたとしても正しくラバーダム防湿を装着できる歯科医師がそう多くはないのが現状です。
▼ラバーダム防湿を使用している歯医者さんを探すには?
筆者が所属している根管治療専門のスタディークラブPESCJ(※)は原理、原則に従った根管治療を行うことを使命としているため、必ずラバーダム防湿を行います。
健康保険内での治療を承っておりませんので、受診前におおよその費用の確認をされても良いかもしれません。
また、日本歯内療法学会のHPから専門医の先生をお探しになるのも良いかと思います。但し保険診療の場合にはラバーダム防湿が必須条件ではありませんので事前に確認が必要です。
※PESCJについて(http://www.pescj.org/)
ペンシルバニア大学歯内療法学科(根管治療)の臨床コンセプトとテクニックを広く伝えることを主な活動として、2009年に設立したスタディークラブです。
活動の結果として日本国内における
・歯内療法専門医レベルの臨床歯内療法学の知識と技術の普及
・歯内療法(根管治療を含む)の社会的認知度の向上
・歯内療法治療費の適正化
を目指しております。
▼まとめ
ラバーダム防湿は本来、根管治療を行う上で必須になりますが現状あまり普及していないのも事実です。
確かにラバーダム防湿をしなくても治るケースもあります。しかしそれは結果論でしかありません。例えば衛生環境が行き届かない国で手術を受けられても毎回感染を起こすわけでは有りませんが、誰しも日本のような衛生基準の高い国で手術を受けようと思うはずです。
ちゃんとした根管治療を受診したい患者さんは、ラバーダム防湿を行っている歯科医院を選んでみてはいかがでしょうか。
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■他の根管治療のコラム:https://teech.jp/column/konkanchiryo
■根管治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/konkanchiryo-interview
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【コラム執筆歯科医師・監修歯科医師】
初台 はまだ歯科・矯正歯科 院長 濱田泰子先生
▼医院について
Teech掲載ページ:https://teech.jp/hospital/19711
医院ホームページ:https://www.hamada-dc.com/
〒151-0071 東京都渋谷区本町1-2-5 初台AIビル2F
▼経歴
2005年 日本歯科大学 歯学部 歯学科卒業
2010年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 博士課程修了
2010年 焼津市立総合病院 歯科口腔外科
2014年 はまだ歯科医院 開院
2016年 PESCJ第7期生として、根管治療を専門に1年間履修(その後、認定医を取得)
2021年 病院名を初台 はまだ歯科・矯正歯科に変更
▼資格
PESCJ認定医
※PESCJについて:ペンシルバニア大学歯内療法学科(根管治療)の臨床コンセプトとテクニックを広く伝えることを主な活動として、2009年に設立したスタディークラブです。
▼共著
『世界基準の臨床歯内療法 第2版』