根管治療(歯の神経の治療)は失敗しやすい!? 再発する要因と対処法
“以前、神経を取ったはずなのに、また治療が必要なの?”、“時間のかかる神経の治療を繰り返したくない” 根管治療の経験がある方は、根管治療について、様々な疑問や不安をお持ちではないでしょうか? 今回は、根管治療がなぜ失敗しやすいのか、その要因と対処法をご説明いたします。
根管治療の成功率は30%
東京医科歯科大学による調査では、一般の歯科医において根管治療が行った歯を、レントゲン撮影をしたところ、約7割(※1)の歯に再発を疑う結果が確認できたという報告があります。では、根管治療を成功させるにはどのような治療を受ければよいでしょうか?
国内における成功率
上記の通り、根管治療をした歯の約7割が再発を疑われる反面、十分な無菌化を行った場合の成功率は、約80~90%(※1)であると報告されています。 無菌化しているか否かで、成功率が異なるということです。
治療を無菌化した状態で行うためには、ラバーダムというゴム状のシートの装着がカギになります。
しかし、日本では、ラバーダムの使用に関するアンケート調査に対して、一般開業医が“ラバーダムを必ずつける”と回答した割合は5.4%(※1)だったという報告があります。
保険診療で行われる根管治療は、無菌化した処置が不十分な可能性があるのかもしれません。
アメリカにおける成功率
アメリカの一般開業医における根管治療の価格は、平均して日本の根管治療の約7倍(※1)といわれています。 これらの治療は、米国歯内療法学会ガイドライン「Guide to Clinical Endodontics」を遵守した治療となるため、徹底した無菌化処置を目的にラバーダムの使用が義務付けられており、日本に比べると高い成功率に見合った高額な費用が設定されているともいえます。
再根管治療が必要になる理由
では、再根管治療が必要となる原因にはどのような問題があるでしょうか。具体的な項目をいくつかご紹介いたします。
感染歯質の取り残し
虫歯が原因で根管治療が必要な場合、虫歯をしっかりと取り切ることが必要です。 取り残したまま根管充填(神経を除去し空洞になった根管内に薬剤を詰めること)を行い治療が一度完了してしまうと、神経を除去した歯(痛みを感じない)に虫歯が広がるため、かなり進行するまで虫歯に気が付きにくくなります。
神経の取り残し
根管は、大臼歯なら3本、小臼歯は2本といったように、歯種によって大まかな根管の数は決まっています。神経の取り残しは、枝分かれした側枝と呼ばれる細い根管で発生するケースが多いです。また、加齢など様々な原因で根管が狭くなり器具が入りにくいケースもあります。
不十分な仮詰
治療中は、仮のセメントと薬剤で根管を詰めています。仮詰が上手くいかないと、唾液や食渣(食べ物のカスなど)が流入し、せっかく消毒した根管が汚染されてしまいます。仮詰が取れてしまった場合には、予約を早めてもらいましょう。
治療用器具の不適切な使用
根管治療は、繊細な操作が必要な処置です。治療用器具の経年劣化や無理な操作により、根管内に器具の先端を取り残すことがあります。
穿孔(せんこう)
根管を形態通りに拡大できなかった時に起こる可能性があります。歯根に治療用器具で穴が空いてしまうことです。
歯根破折
歯根が割れている場合、多くの歯科医院では抜歯の処置をとることが一般的です。根管治療を得意とする歯科医院では、破折部を接着操作し、保存を試みてくれる場合があります。
消毒液のダメージ
最近では水酸化カルシウムを使うところが増えてきていますが、根管治療では、担当する歯科医師によって薬剤を使用します。薬剤によっては、頻回な使用により、歯質にダメージを与えてしまうものがあります。
根管治療で失敗しないための施策
繊細で高度な治療技術を必要とする根管治療は、歯科医師の技術や診療環境が成功率に大きな影響を与えます。根管治療で失敗しないためにできることは、以下の治療環境を整えた歯科医師を選ぶことです。
ラバーダム
ラバーダムは、治療する歯を唾液や呼気から隔離することでより無菌化した処置を行うために必要です。また、薬剤を使った洗浄や調薬の際に、粘膜に薬が触れるリスクを減少させ、安全な処置を行えます。
CT
一般的には、レントゲン写真により虫歯の進行や、根尖病巣の有無を確認し、根管治療を開始します。しかし、CTを使うことで、治療前に根管破折の有無や、根管の形態を把握することができます。
マイクロスコープ
根管は細く、口腔内は暗いため、目視で治療するには困難な環境です。マイクロスコープにより拡大することで、根管へのアプローチが容易になります。
精密器具の使用
根管治療では、根管の形態を適切に拡大することが基本です。そのためには、根管を無理なく器具でたどることができるかが重要になります。そのためには、根管を無理なく器具でたどることができるかが重要になります。(NiTiファイルを使用)
適切な薬剤
これまでは、FCやペリオドンといった薬の調薬がありましたが、最近は水酸化カルシウムによる調薬が増えてきています。FCやペリオドンには、発がん性があるため、使用する歯科医院が少なくなってきました。 根管充填の際に、MTAセメントを使っている歯科医院は、より高い封鎖性が期待できるため再根管治療のリスクが低いと言えます。
まとめ
根管治療は、成功率が30%と再発のリスクが高い処置です。これまで多くの患者さんが、費用や時間をかけて、治療を繰り返してきました。
根管治療を成功させるためには、根管治療を行うのに適した治療環境を整えた歯科医師を選びましょう。精巧な歯科医師の技術と、十分な無菌化した処置により、再発のリスクを予防することができます。
▶根管治療が得意な歯科医師が「きちんとした根管治療を行ってくれる歯科医院のポイント」を提示してくれているので、歯科医院選びの参考にしてください。
▶※1 参考資料:日歯内療誌32(1):1~10:2011 「総説 わが国における歯内療法の現状と課題」
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■他の根管治療のコラム:https://teech.jp/column/konkanchiryo
■根管治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/konkanchiryo-interview
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【コラム執筆・監修者の紹介】
木坂里子
東京医科歯科大学卒業 現役歯科医師として勤務