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インプラント治療 2025/10/30

ザイゴマインプラントとは?メリット・デメリットやオールオン4との違いを解説

歯の模型を使って患者に説明する歯科医師

インプラント治療は失った歯の見た目や機能を回復できますが、上顎の骨が少ない場合や骨が痩せている場合には適応が難しいとされてきました。そうしたケースに対応するために開発されたのが、「ザイゴマインプラント(Zygoma Implant)」と呼ばれる新しいインプラント治療法です。

ザイゴマインプラントは、骨移植を行わずにインプラントを埋入できる可能性があり、手術回数の軽減や治療期間の短縮といった利点があります。一方で、特殊な技術と高い経験を要する治療であるため、デメリットや注意点も存在します。

本記事では「ザイゴマインプラントとは何か」をわかりやすく解説しながら、そのメリット・デメリット、治療の流れや費用についても詳しくご紹介します。オールオン4との違いにも触れつつ、治療法選択の参考になる情報をお届けします。

ザイゴマインプラントとは

ザイゴマインプラントは、従来のインプラント治療が難しいとされてきた症例にも対応できるよう開発された特殊なインプラント治療法です。ザイゴマ(Zygoma)とは頬骨(ほおぼね)を意味しており、通常のインプラントが顎の骨に埋入されるのに対し、ザイゴマインプラントは頬骨にインプラントを固定するのが特徴です。

これにより、骨造成などの前準備なしにインプラント治療を行える可能性が広がります。通常のインプラント治療には十分な骨の量と質が必要であり、骨の量が足りていない場合には骨造成手術を行うのが一般的です。一方、ザイゴマインプラントは頬骨の強固な骨質を活用するため、骨造成を回避できることが多く、治療期間の短縮にもつながります。

ここでよく比較対象となるのが、オールオン4と呼ばれる治療法です。オールオン4は4本のインプラントを顎に斜めに埋入し、全体の義歯を支える方法で、骨が少ない方にも対応できますが、ある程度の骨量が残っていることが前提条件となります。

一方、ザイゴマインプラントは、オールオン4でも対応が難しいほど骨が薄い・少ないケースでも適応できる可能性があります。

その特殊性から、全ての歯科医院で対応できる治療ではありませんが、骨量不足によるインプラント不適応の方にとって有力な選択肢となる画期的な治療法です。特に、長期間総入れ歯を使用していた方や骨の減少が著しい患者様にとって、生活の質を大きく改善できる可能性を秘めています。

ザイゴマインプラントのメリット

ザイゴマインプラントは、通常のインプラント治療にはないメリットを多く持つ治療法です。従来であれば骨造成が必要だったケースに対しても短期間での治療が可能となり、患者様の身体的・精神的な負担を大きく軽減できます。

また、手術回数が少なく、見た目や咀嚼機能の早期回復が期待できるのも大きな特徴です。インプラントの埋入に頬骨という硬く安定した部位を利用することでしっかりと固定し、手術当日に仮歯を装着する即時負荷にも対応しやすくなります。

以下では、ザイゴマインプラントが持つ具体的なメリットについて、4つの視点から詳しく解説します。

骨移植手術が不要

ザイゴマインプラントの最大のメリットの一つは、骨移植を必要としないことです。ザイゴマインプラントでは、硬くて厚みのある頬骨にインプラントを固定するため、骨移植を行う必要がありません。これによって、治療のハードルが大きく下がります。

手術回数が少ない

ザイゴマインプラントでは、インプラント埋入から仮歯の装着までを1回の手術で完了できる場合があります。これにより、身体的・心理的負担を軽減できるだけでなく、通院回数や治療期間の短縮にもつながります。忙しい社会人や、遠方から通院する方にとっても通いやすい治療法といえるでしょう。

顎の骨が少なくてもできる

ザイゴマインプラントでは、顎ではなく、骨量の多い頬骨にインプラントを固定するため、骨が痩せている方でも、治療の選択肢として考えることができます。

手術当日に人工歯を装着できる

条件が整えば、手術当日に仮の人工歯(プロビジョナル)を装着する「即時負荷インプラント」にも対応できます。

従来のインプラント治療では、埋入後に数か月の治癒期間を経てから人工歯を装着するのが一般的でした。

一方、ザイゴマインプラントは頬骨という高密度で安定した部位に固定するため、初期固定が得やすく、手術直後から咀嚼や会話が可能なレベルまで回復できるのが特徴です。

治療期間の短縮だけでなく、見た目や機能性の早期回復も実現できるため、患者様の満足度が非常に高い治療法といえるでしょう。

ザイゴマインプラントのデメリット

ザイゴマインプラントは画期的な治療法ですが、すべての方に適しているわけではありません。他のインプラント治療と同様、手術に伴うリスクや制約があるほか、専門的な技術を必要とするため、受けられる医療機関が限られている点も注意が必要です。

治療の効果やメリットに注目することも大切ですが、同時にデメリットやリスクについてもしっかりと理解し、納得したうえで選択することが重要です。以下に、ザイゴマインプラントにおける主なデメリットを詳しく解説します。

対応可能な医院が限られている

ザイゴマインプラントは、高度な外科技術と豊富な臨床経験を要する治療法です。そのため、すべての歯科医院で受けられるわけではなく、対応できる医院は限られています。

また、CTスキャンや3Dシミュレーションなどの専用設備も必要となるため、通院可能な範囲に対応医院がない場合は、長距離移動や宿泊を伴う通院が必要となるケースもあります。

抜歯が必要になることがある

ザイゴマインプラントを行う際には、残っている歯の状態によっては抜歯が必要になる場合があります。特に重度の歯周病によって歯が動揺していたり保存が困難だったりする場合には、すべての歯を抜いてから治療を進めるのが一般的です。

これによって口腔内の機能を統一的に再構築できるというメリットもありますが、同時に大きな負担に感じることもあるでしょう。

痛みや腫れが生じる場合がある

ザイゴマインプラントでは、術後に痛みや腫れが出る可能性があります。特に、頬骨周辺の骨や粘膜に処置を行うため、手術後数日間は腫れや内出血が見られることがあります。これらの症状は一時的なもので多くは数日から1週間程度で改善しますが、適切なケアや安静が必要です。

また、感染症を防ぐために抗生物質の服用や定期的なチェックも欠かせません。

ザイゴマインプラントの期間

ザイゴマインプラントの治療期間は、通常のインプラント治療と比べて短い傾向があります。従来のインプラントでは、骨造成手術や治癒期間を含めると半年以上かかるのが一般的ですが、ザイゴマインプラントは骨移植を必要としないため、手術から仮歯の装着までが数日〜1週間程度で完了するケースもあります

また、術後の経過が良好であれば、3〜6か月後には最終的な人工歯を装着できるのが一般的です。

ただし、治療期間は口腔内の骨の状態や全身の健康、治療計画によって変動します。実際にどのくらいの期間を要するかは、担当の歯科医師に確認しておくことが大切です。

ザイゴマインプラントの治療の流れ

ザイゴマインプラントでは、段階ごとに分けて治療が進められます。それぞれの段階には目的があり、患者様の状態に合わせた対応が行われます。以下に、ザイゴマインプラントの一般的な流れを5つに分けてご紹介します。

カウンセリング

治療はまず、歯科医師とのカウンセリングから始まります。患者様の悩みや希望を丁寧にヒアリングし、口腔内の状態や全身の健康状態についても確認します。ザイゴマインプラントは一般的なインプラントとは異なるため、治療に対する理解を深めてもらうための十分な説明が行われることが特徴です。

また、他の治療法との違いやリスクについても説明され、患者様が納得したうえで治療方針が決定されます。

精密検査

カウンセリング後には、CT撮影や3Dスキャンなどの精密検査が行われます。これは、頬骨の形状や厚み、神経や血管の位置を正確に把握するために非常に重要です。ザイゴマインプラントは精密性が求められるため、詳細なデータが必要となります。

これらの情報をもとに、安全で確実なインプラント埋入のための治療計画が立てられます。

治療計画の立案

精密検査の結果をもとに、患者様一人ひとりに合わせた治療計画が立てられます。インプラントの本数や位置、角度、使用する素材などが決定され、手術の流れや期間、費用についても詳しく説明されます。

手術~仮歯の装着

治療計画に沿って、インプラントの埋入手術を行います。麻酔をしたうえでインプラントを頬骨に埋入し、しっかりと固定させます。術後、状態が安定していれば、即日もしくは数日以内に仮歯が装着されます。この即時負荷の対応により、治療直後から見た目や会話、咀嚼に困らない生活が可能となります。

人工歯の装着

インプラントと骨がしっかり結合した後、最終的な人工歯が装着されます。仮歯の使用期間中に噛み合わせや見た目を調整することで、より自然な仕上がりになります。人工歯は患者様の希望に応じて素材や形を選ぶことができ、見た目の美しさや耐久性にも配慮されます。装着後も定期的なメンテナンスを行うことで、長期間にわたり快適な使用が可能です。

ザイゴマインプラントの費用

ザイゴマインプラントの費用相場は、片顎でおおよそ250万円〜300万円ほどが一般的です。

通常のインプラント治療では1本あたり30〜50万円が目安ですが、ザイゴマインプラントは上顎全体を対象とするケースが多く、特殊な設備と技術を要するため、自由診療の中でも高額になりやすい治療です。

費用には、手術費・インプラント本体・人工歯(上部構造)・麻酔費・検査費用などが含まれます。実際の金額は、インプラントの本数や素材、手術の難易度、麻酔の種類、通院回数によって変動します。

ただし、骨移植や複数回の手術が不要なケースでは、トータルの治療期間や通院回数を抑えられるため、結果的に費用対効果が高い治療となることもあります。治療を検討する際は、事前に見積もりを取り、費用の内訳や支払い方法を歯科医師に確認しておくことが大切です。

まとめ

ザイゴマインプラントは、上顎の骨が極端に少なく、従来のインプラント治療が難しい方にとって有力な選択肢となる先進的な治療法です。骨移植を必要とせず、手術当日に仮歯の装着が可能な場合もあるなど、多くのメリットがあります。

一方で、高度な技術を要することから対応できる医療機関が限られており、費用面や術後のケアにも注意が必要です。治療を検討する際は、歯科医師としっかり相談し、自身の口腔内の状態やライフスタイルに合った選択を行うことが大切です。

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