マイオブレースとプレオルソの違いは?子どもの特徴に合わせた選び方
お子様の歯並びを歯科医院で相談したところ、マイオブレースとプレオルソという似た装置の名前を聞き、どちらを選べばよいのか迷っている保護者の方もいるのではないでしょうか。自分で調べても、医院によって扱う装置や説明が異なるため、違いの全体像はつかみにくいものです。
マイオブレースとプレオルソは、どちらも歯並びが悪くなる背景にあるお口の癖に働きかける、既製のマウスピース型矯正装置です。目指す方向は近いものの、装置の分け方や日中のトレーニングの位置づけ、素材などは同じではありません。
この記事では、両者の共通点と4つの相違点、家庭の状況別の考え方、費用や治療前の注意点までを順に整理します。装置の優劣ではなく、お子様のお口の状態が選択の軸になる理由も含めて解説します。
マイオブレースとプレオルソ、なぜどちらを選ぶべきか迷うのか?
マイオブレースとプレオルソは役割や使い方がよく似ており、名前を聞いただけでは違いが分かりにくい装置です。まず共通点を確認し、そのうえで考え方の違いを整理します。
どちらもお口の癖に働きかけるマウスピース型の既製装置という共通点
マイオブレースとプレオルソは、いずれもお子様の歯並び治療に使われる、取り外し式のマウスピース型矯正装置です。歯型に合わせて作製するのではなく、あらかじめ形やサイズが決まった既製品のなかから、お口の状態に合うものを歯科医師が選んで使用します。
どちらの装置も、歯を直接動かすことだけを目的にはしていません。日本小児歯科学会によると、口呼吸や頬杖、うつ伏せ寝といった癖は、歯並びやかみ合わせに影響を及ぼすことが分かってきています。装置の使用では、口呼吸や舌を前に押し出す癖などに働きかけながら、あごの成長する力を利用して、歯が並ぶための土台を整えることを目指します。
また、装着すれば自動的に歯並びが整う装置ではない点も同じです。どちらを使う場合も、検査と診断で装置を選び、経過を見ながら歯科医師の調整や指導を受けることが前提になります。
目的やアプローチに表れる設計の違い
似ている2つの装置ですが、治療の組み立て方には設計の違いがあります。マイオブレースは、鼻で呼吸する習慣や舌の正しい位置づけなど、お口まわりの機能を育てることに重心を置いた治療システムです。装置の装着に加えて、専用のトレーニング(アクティビティ)を毎日行うことが、治療の柱として組み込まれています。
一方のプレオルソは、装置そのものの形とかむ力、口の周りの筋肉の働きを利用して、歯並びやかみ合わせに働きかける装置です。装置の装着を軸にしながら、医院の方針によって、舌の使い方の練習などのトレーニングを組み合わせることもあります。
このように、目指す方向は近くても、毎日の取り組みの内容や配分は同じではありません。次の章では、違いを4つの観点に分けて具体的に整理します。
参照元:日本小児歯科学会「子どもたちの歯並び・かみ合わせの治療に関するQ&A」
参照元:Myofunctional Research Co.「The Myobrace® System」
参照元:大塚矯正歯科クリニック「『プレオルソ』こども歯ならび矯正法について」
【比較】マイオブレースとプレオルソの4つの相違点
装置の分け方、日中のトレーニング、素材と調整のしやすさ、通院と家庭での取り組みという4つの観点から、両者の違いを比較します。まず、主な違いを一覧で整理します。
<マイオブレースとプレオルソの主な違い>
| 項目 | マイオブレース | プレオルソ |
|---|---|---|
| 装置の分け方 | 年齢・発達段階別のシリーズ(症状や治療段階に応じた装置もある) | 歯並び・かみ合わせのタイプ別(TYPE I〜III) |
| 装着時間の目安 | 日中の1〜2時間程度と就寝中 | 日中の1時間程度と就寝中 |
| 日中のトレーニング | 専用のアクティビティを1日2回行う設計 | 医院の方針により口腔筋機能療法(MFT)などを併用 |
| 対象年齢の目安 | 3歳頃から15歳以上まで区分あり | 主に3〜10歳頃 |
| 承認状況 | 国内の薬機法上の承認を得ていない(未承認医薬品等に該当) | 管理医療機器として認証あり |
表の内容は、公式資料や文献にもとづく目安です。実際の装置の選択や進め方は、お子様のお口の状態と医院の方針によって異なります。
相違点1:装置の分け方|年齢・段階別か、歯並びのタイプ別か
マイオブレースは、年齢や歯の生えかわりの段階に応じてシリーズが分かれている装置です。開発元のMyofunctional Research Co.は、次のような発達段階ごとの装置区分を用意しています。
・乳歯の時期(3〜6歳頃)
・乳歯と永久歯が混在する時期(6〜10歳頃)
・永久歯への生えかわりが進む時期(10〜15歳頃)
このほかに、15歳以上を対象にした区分もあります。また、シリーズは年齢だけで分かれているわけではありません。開発元は、お口の癖の改善からあごの発育の促進、整った歯並びの保持(保定)までの治療段階や、お子様の症状に応じて、複数の装置を使い分ける設計を示しています。
プレオルソの装置は、歯並びやかみ合わせの状態によって分かれる仕組みです。メーカーが示す3タイプの対応は次のとおりで、各タイプにサイズと硬さの展開があります。
・TYPE I:出っ歯(上顎前突)、歯のでこぼこ(叢生)など
・TYPE II:奥歯をかんでも前歯が閉じない開咬
・TYPE III:受け口(反対咬合)
どちらの装置を使う場合も、区分やタイプを保護者が選ぶわけではありません。検査と診断をもとに、お子様のお口の状態に合うものを歯科医師が選びます。
相違点2:日中のトレーニング(アクティビティ)の時間と内容
装置を装着する時間の目安は、両者で大きくは変わりません。マイオブレースは日中の1〜2時間程度と就寝中、プレオルソは日中の1時間程度と就寝中の装着が示されています。一方、装着のほかに日中のトレーニングをどう組み込むかという点は、両者で異なる部分です。
マイオブレースの治療には、アクティビティと呼ばれる専用のトレーニングが組み込まれています。呼吸・舌の位置・飲み込み方・唇や頬の動きを整える運動を、開発元は装置の装着とセットで1日2回行うよう設計しており、1回あたり数分から10分程度が目安です。
プレオルソのトレーニングの位置づけは、医院の方針によって異なる部分です。装着を中心に進める医院もあれば、口の周りの筋肉や舌の使い方を整える口腔筋機能療法(MFT)などを併用する医院もあります。なお、実際の装着時間やトレーニングの内容はお子様の状態によっても変わるため、担当の歯科医師の指示が基準になります。
相違点3:素材の硬さと装置の調整のしやすさ
プレオルソは、弾力のあるポリウレタン製の装置で、同じタイプでも硬さの異なる展開があります。メーカーによると、温めることで装置の形状を変えられるため、お子様のお口に合わせた微調整が可能です。
一方、マイオブレースの素材は、開発元の公式資料に明記されていません。装置の形を温めて調整するというより、経過に応じて種類やサイズを見直しながら使用します。
素材の感触や硬さの感じ方は、お子様によってさまざまです。装置の特徴だけで決めず、装着感で気になる点は相談のときに歯科医院で確認しましょう。
相違点4:通院時の内容と保護者のサポートの中心
どちらの装置も、定期的に通院しながら経過を確認します。通院の間隔は、治療の段階やお子様の状態、医院の方針によって変わるため、一律ではありません。
家庭での保護者のサポートは、装置によって中心になる内容が異なります。マイオブレースでは、装着の管理に加えて、毎日のアクティビティにお子様が取り組めるよう、声かけや付き添いといった伴走が求められます。プレオルソでは、決めた時間に装着できているかの管理が中心です。外れた日や本人の様子を記録しておくと、通院時に状況を伝えやすくなります。
いずれの場合も、通院時には家庭での取り組みの状況をありのままに伝えることが大切です。装着やトレーニングがうまく進んでいない場合も、その情報が装置の調整や進め方の見直しにつながります。
参照元:Myofunctional Research Co.「The Myobrace® System」
参照元:Myobrace公式サイト「What is Myobrace」
参照元:株式会社フォレスト・ワン「プレオルソ」
参照元:独立行政法人医薬品医療機器総合機構「プレオルソ 添付文書」
わが子にはどちらが馴染みやすい?状況別・選択のヒント
装置選びでは、まず歯並びや骨格、成長段階などの医学的な適応を歯科医師の診断で確認し、そのうえで家庭での続けやすさを検討します。ここでは、適応の確認を前提に、お子様の状況や生活リズムと装置の特徴を照らし合わせるときの考え方を紹介します。
日中のトレーニング時間を確保しやすく、親子で取り組める場合
帰宅後の時間に余裕があり、保護者がアクティビティに付き添える家庭では、マイオブレースの体系化されたプログラムを生活に組み込みやすいと考えられます。トレーニングは1回数分から10分程度でも毎日の継続が前提のため、決まった時間帯を確保できるかどうかで取り組みやすさが変わります。
ただし、日中の時間を確保できることと、マイオブレースがお子様に適応することは別の問題です。お口の癖や歯並びの状態が装置に合っているかどうかは、検査と診断で確認する必要があります。
就寝時を中心に、日中の負担をできるだけ減らしたい場合
習い事や宿題で平日の時間が埋まりやすく、日中のトレーニングまで手が回りにくい家庭では、装着を中心に進められる場合があるプレオルソの進め方が、生活に取り入れやすいことがあります。ただし、口腔筋機能療法(MFT)などのトレーニングを併用するかどうかは医院の方針によって異なるため、日中の取り組みの内容は相談のときの確認が必要です。
また、プレオルソにも日中1時間程度の装着はあり、就寝中とあわせて装着時間を守ることが治療の前提です。負担の軽さだけを理由に選ばず、お子様のお口の状態に適応するかどうかの診断とあわせて、実際の進め方を歯科医師に確認したうえで検討しましょう。
あごの骨格や年齢(成長段階)によって選択肢が変わる場合
年齢の面では、学会で報告された文献に、プレオルソは多くの場合、3〜10歳頃の一期治療を主眼に設計されていると記載されています。マイオブレースには10代半ば以降を対象にした区分もあり、生えかわりが進んだ時期でも検討の対象に入る場合があります。ただし、どちらの年齢も一律の基準ではありません。実際の適応は、歯の生えかわりやお口の状態を診たうえで判断されるものです。
また、上下のあごの骨格の差が大きい場合や、永久歯の強いねじれ・大きな位置のずれがある場合には、どちらの装置でも単独では対応が難しいことがあります。その場合は、別の装置や治療方法を含めた検討が必要です。
骨格や生えかわりの状態は、見た目だけでは判断できません。レントゲンなどの検査を踏まえた診断で、この2つの装置が候補になる段階なのかどうかから確認することが大切です。
鼻づまりやいびきがある場合は原因の確認が必要
口呼吸は、癖だけが原因とは限りません。鼻炎や、鼻の奥のリンパ組織が大きくなるアデノイド、扁桃の肥大など、鼻やのどの状態が関係している場合もあるためです。済生会も、アデノイドが大きくなると鼻づまりや口呼吸、いびきといった症状が現れ、口呼吸が原因で歯並びが悪くなる例もあると説明しています。
鼻やのどの病気が背景にある場合、装置やトレーニングだけでは鼻呼吸への切り替えが進みにくいことがあります。慢性的な鼻づまりやいびきが見られるお子様は、歯科医院への相談とあわせて、必要に応じて耳鼻咽喉科と連携して原因を確認しましょう。
参照元:小児歯科学雑誌「永久歯列期に既成型『機能的顎矯正装置』を用いた1例」
参照元:Myofunctional Research Co.「The Myobrace® System」
参照元:日本小児歯科学会「子どもたちの歯並び・かみ合わせの治療に関するQ&A」
参照元:社会福祉法人恩賜財団済生会「アデノイド増殖症」
治療を始める前に知っておきたい小児矯正共通の注意点
どちらの装置を選ぶ場合でも、小児矯正として共通する注意点があります。開始時期の限界、本人の継続、費用とサポートの3点を取り上げます。
適応時期(年齢)の限界と治療開始のタイミング
マイオブレースやプレオルソを使った治療は、あごの成長やお口の機能の発達を利用する一期治療の段階で検討されます。永久歯への生えかわりが進み、あごの成長が落ち着いてくると、こうした既製のマウスピース型装置による一期治療は選択肢に挙がりにくくなり、歯を計画的に動かす別の矯正治療が中心になります。
一方で、早く始めるほどよいとも限りません。乳歯の軽いでこぼこのように、歯の生えかわりを待ちながら経過を見る判断も選択肢のひとつです。日本臨床矯正歯科医会によると、矯正治療の開始時期や必要性は、一人ひとりの症状などを見極めて個別に判断する必要があるとされています。
どちらの装置も本人の取り組みと継続が欠かせない理由
マイオブレースもプレオルソも取り外し式のため、装着している時間だけ装置の力が働く仕組みです。日本小児歯科学会は、治療が計画どおりに進まない要因のひとつに、装置を使う協力が得られない場合を挙げています。装着やトレーニングが続かなければ、期待した変化にはつながりにくくなります。
お子様が装置を嫌がるときは、叱って無理に装着させるのではなく、その様子を歯科医師に伝えましょう。痛みや外れやすさの背景には、装置のサイズや種類が今のお口に合っていないことも考えられます。装置の調整や進め方の見直しによって、続けやすくなる場合もあります。
二期治療が必要になる場合もある
マイオブレースやプレオルソを使用しても、すべてのお子様で同じ結果が得られるわけではありません。お口の癖の改善の進み方や、あごの成長、永久歯の生え方に個人差があるためです。
一期治療で土台を整えたあとも、永久歯が生えそろった段階であらためて評価し、ワイヤー矯正(マルチブラケット装置)やマウスピース型矯正装置による二期治療を検討する場合があります。治療を始める前に、二期治療の可能性と、その場合の費用の扱いを歯科医師に確認しておきましょう。二期治療の考え方については、下記の記事をご参照ください。
▶インビザライン・ファーストの後は?二期治療の移行基準・追加費用を解説
自由診療における費用の考え方と歯科医院によるサポートの違い
マイオブレースやプレオルソを用いた小児矯正は、原則として公的医療保険が適用されない自由診療(保険適用外)です。全国一律の定価はなく、費用は医院によって異なります。参考として、日本小児歯科学会は小児矯正の費用の目安を、乳歯だけの時期で3万〜20万円、乳歯と永久歯が混在する時期で15万〜60万円と案内していますが、これはどちらかの装置単独の相場ではありません。
費用の総額は、次のような項目のうち何が含まれるかによって変わります。
・検査・診断料
・装置代
・アクティビティなどの指導料
・定期的な調整料
・装置の交換や作り直しの費用
・二期治療に進んだ場合の費用
治療期間や通院の回数も、お口の状態と治療計画によって異なります。矯正治療の費用の内訳については、下記の記事をご参照ください。
自由診療の主なリスクとして、使い始めの痛みや違和感、装置の変形・破損、清掃が不十分な場合のむし歯や歯肉炎、お口の癖や装着状況が改善されない場合に計画どおりに歯並びが整わない可能性、治療後の後戻りなどが挙げられます。
制度上の位置づけにも違いがあります。プレオルソは、歯列矯正用咬合誘導装置という一般的名称で認証を受けた管理医療機器です。一方のマイオブレースは、日本の薬機法における医療機器としての承認を得ていない未承認医薬品等に該当するため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
マイオブレースは、国内では輸入販売元(株式会社オーティカ・インターナショナル)を通じて歯科医院に提供されている装置です。開発元によると、30年以上にわたり世界中で使用されてきた治療システムとされています。また、マイオブレースと同一の装置として国内で承認・認証を受けたものはない一方、同じ目的で使われる既製のマウスピース型矯正装置には、プレオルソのように認証を受けた管理医療機器が存在します。
医院によるサポートの中身も一律ではありません。装置が合わなかった場合に別の装置へ切り替えられるかどうか、その際の費用の扱い、装着やトレーニングの指導の範囲は、医院ごとに設定が異なります。
治療を始める前に、費用や治療期間、通院回数、これらのリスク、装置の制度上の位置づけ、サポートの範囲について、歯科医師から十分な説明を受け、納得したうえで判断しましょう。
参照元:日本小児歯科学会「子どもたちの歯並び・かみ合わせの治療に関するQ&A」
参照元:公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会「早期治療についての見解」
参照元:独立行政法人医薬品医療機器総合機構「プレオルソ 添付文書」
参照元:株式会社オーティカ・インターナショナル「Myobrace®治療 こども歯ならび矯正法」
参照元:Myofunctional Research Co.「MRC公式サイト(日本語)」
参照元:厚生労働省「医療広告ガイドライン」
まとめ|まずはお子様のお口の状態を歯科医院で診てもらうことから
マイオブレースとプレオルソは、どちらもお口の癖に働きかけながら、あごの成長を利用して歯並びとかみ合わせを整えることを目指す、既製のマウスピース型矯正装置です。装置の分け方や日中のトレーニングの位置づけ、装置の調整のしやすさなどに違いはありますが、どちらが優れているかではなく、お子様のお口の状態と家庭の生活リズムに合うかどうかが検討の軸になります。
また、どちらの装置を用いた治療も、原則として公的医療保険が適用されない自由診療(保険適用外)です。主なリスクとして、使い始めの痛みや違和感、装置の変形・破損、計画どおりに歯並びが整わない可能性などが挙げられます。治療の結果には個人差があり、一期治療のあとに二期治療を検討する場合もあります。費用や治療期間、通院回数とあわせて、歯科医師から十分な説明を受けたうえで検討することが大切です。
同じように見える歯並びでも、癖の関わり方や骨格、歯の生えかわりの進み方はお子様ごとに異なります。どちらの装置にするかは、名前や特徴だけではなく、治療前の検査と診断を通じて判断されるものです。診断の結果、この2つ以外の装置や経過観察が選ばれる場合もあります。こうした複数の選択肢を示し、成長に合わせた治療計画を分かりやすく説明してくれるかどうかは、歯科医院を選ぶときの手がかりになります。まずは、お子様のお口の状態を歯科医院で診てもらうことから始めましょう。