軽度の虫歯と重度の虫歯は違う!?歯の見た目、症状、治療の違いについて
虫歯のイラストの多くは、歯に黒く穴が開いて、痛みがある表情をしています。
そのため、“虫歯=痛み、歯に穴が開くこと”と思われがちですが、実際は初期の虫歯では痛みなど自覚症状がありません。今回は、虫歯の進行度についてご説明いたします。
虫歯の見た目
虫歯と言えば、黒くなることをイメージしがちですが、歯が黒くなる以外にも、見た目で気づくポイントがいくつかあります。
ホワイトポット、白濁
初期の虫歯に現れる見た目の変化として、白いシミや濁りがスポット様で起こることがあります。
黒ずみ
虫歯に限らず歯石や着色の可能性もありますが、奥歯の溝や、歯と歯の間に黒ずみが起こることがあります。
歯に物が詰まる
痛みがなくても、食事の際に歯と歯の隙間に、食べ物が詰まりやすくなった際にも注意が必要です。食後に鏡で食べ物が詰まりやすい箇所がないかを確認しましょう。
着色
歯の表面に、茶渋などステインが蓄積していることがあります。歯ブラシでは除去できない着色も、歯科医院での機械による清掃で除去することができます。歯の表面が初期の虫歯によりざらついて着色が起こりやすくなっている可能性があります。
虫歯の症状
以下の症状がある場合には、虫歯の可能性があります。
最後の歯科受診から期間が空いている方は、早めにかかりつけ歯科医を受診しましょう。
しみる
冷たいものや甘いものを摂取した際に、キーンとしみるような感覚があります。
痛み
痛みにも種類があります。
■自発痛
何もしなくても痛い状態です。
■誘発痛
冷たいものや熱いもの、甘いものといった刺激によって痛みが発生しますが、瞬間的な痛みです。
■咬合痛
咬み合わせたときに発生する痛みです。
会話や食事の際に、咬み合わせると瞬間的な痛みがあります。
腫れ
虫歯になった歯の周囲や、根尖(歯の根っこの先)相当の歯肉が腫れます。
歯が浮く
咬んだ際に、違和感があり、歯が浮いているような感じがします。
出血や膿(うみ)
虫歯の根元付近の歯肉から出血や膿がある場合があります。歯肉に小さなニキビ様の膨らみや、穴がみえることがありますが、瘻孔(ろうこう)と呼ばれる症状です。
デンタルフロスがひっかかる
歯ブラシの他に、予防に熱心な方はデンタルフロスを使用している方もいらっしゃいます。これまでスムーズに外すことができたデンタルフロスが、外れにくい、外した後に繊維が荒くなっている場合には歯と歯の隙間に虫歯ができている可能性があります。
詰め物や被せ物が外れた
これまで症状のなかった詰め物や被せ物がポロっと外れてしまうことがあります。単純にセメントの経年劣化による場合もありますが、被せ物や詰め物とセメントの隙間から虫歯が発生している可能性も否定できません。
上記のような症状がある場合には、早めに受診しましょう。
虫歯の進行度
次に、具体的な虫歯の症状についてご説明いたします。
医学用語で歯虫歯を“う蝕”と呼び虫歯の進行度は、英語のCaries(カリエス)のCをとってC0~4のステージで表します。
C0(初期う蝕)
歯の表面に白濁と呼ばれるスポット状のシミやざらつきが現れます。痛みはありません。
C1(エナメル質う蝕)
歯の最表面になるエナメル質の中に感染がとどまっている状態です。まだ痛みはありませんが、虫歯になった箇所に、飲食物の色素が集まり、黒ずみを自覚することがあります。
C2(象牙質う蝕)
エナメル質の下にある象牙質まで進行するため、自覚症状が現れています。冷たいものや甘いものを摂取した際に、しみたり痛みを感じることがあります。
C3(歯髄炎、根尖性歯周炎)
象牙質の下にある神経まで虫歯が進行しているため、強い痛みが発生します。痛みが落ち着いた後も、咬むことで違和感を生じるなど、不快症状が現れます。
▶歯の神経が虫歯の際の"痛みの原因"、"対処方法"については「根管治療(歯の神経の治療)の痛みの原因と対処法」の記事をご確認ください。
C4(残根)
虫歯により歯質が崩壊し、ボロボロの状態です。お口の中に根っこしか残っていない状態を残根と呼びます。神経が死んでいるため、痛みはありませんが、咬むと違和感があることや、歯の周囲が腫れるといった症状があります。
注意すべき2次カリエス
一度虫歯になった歯は、治療をすればもう虫歯にならないのでは?とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
虫歯の治療では、詰め物や被せ物をしますが、可能な限り歯質を残すように設計します。そのため、虫歯を除去して残った天然歯の部分は、変わらず虫歯になるリスクがあるのです。
詰め物や被せ物の周囲から虫歯になることを2次カリエスと呼びます。2次カリエスは、詰め物や被せ物の下に虫歯が広がるため、発見が遅れることがあります。
進行度別の治療方法
虫歯には、それぞれのステージにあった治療方法があります。
C0
適切な歯磨きや、フッ化物(歯質を強くする薬剤)を塗ることで白濁を改善することができます。
C1
エナメル質内に起こった虫歯は、除去して歯質に類似した色調のレジン(白いプラスチックの歯科材料)を充填します。治療回数は1回で完了します。黒くなった初期の虫歯もこの治療方法で対応することが可能です。
C2
小さな範囲の場合には、C1の時と同じ治療が可能です。
範囲が広く切削する歯質の量が多い場合には、インレーやクラウンの治療が必要となるため、治療回数が2~3回ほどになります。
C3
神経まで虫歯が進行しているため、神経を除去する根管治療が必要です。
その場合、根管治療で最短2回、土台を作って被せ物をするのに最短4回を想定することが必要です。歯の根管の数など、歯の状態によって治療回数は異なります。
▶根管治療のながれについては「根管治療(歯の神経の治療)の方法と流れ」の記事をご確認ください。
C4
多くの場合、抜歯です。清掃不良になるため、感染源となる残根を放置することはお勧めできません。抜歯した後は、インプラントやブリッジ、入れ歯といった選択肢があります。
▶インプラント、ブリッジ、入れ歯の比較について、もっと詳しく知りたい方は「徹底比較!インプラント・ブリッジ・入れ歯の違い」の記事をご確認ください。
まとめ
虫歯の進行度についておわかりいただけたでしょうか。虫歯は、早い段階で発見し治療できれば、治療回数や費用を抑えることができます。しかし、初期の虫歯は、見た目や症状からはわかりにくく、自覚症状が出た頃には、虫歯がある程度進行してしまっています。
虫歯の早期発見・早期治療のためにも、歯医者さんに定期的に通院する習慣をつけることをお勧めします。
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【コラム監修歯科医師】
岡本歯科医院 院長 岡本徹先生
▼医院について
Teech掲載ページ:https://teech.jp/hospital/658
医院ホームページ:https://www.okamoto-d.net
〒146-0091 東京都大田区鵜の木2-15-19
▼経歴
1986年 東京医科歯科大学 歯学部 卒業
2011年 公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 初代会長
2015年 岡本歯科医院 院長就任
▼役職
東京都歯科医師連盟 専務理事
公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 監事
全日本歯科医師剣道連盟 理事長
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【コラム執筆歯科医師】
木坂里子
東京医科歯科大学卒業 現役歯科医師として勤務