歯が黒い!?これって虫歯?軽度の虫歯から重度の虫歯について
歯科医院に定期的に受診される方と、本当に痛くならないと受診しない人の2種類の患者さんがいます。
後者の場合、“歯医者に行くと、すぐに削られるから嫌”、“痛くもない歯を削られた”というような歯科治療にマイナスのイメージがあり、残念ながらかかりつけ歯医者難民になっているかもしれません。
今回は、軽度の虫歯から重度まで、虫歯の症状や治療方法について解説します。
歯医者さんから脚が遠のいてしまっている方は、ぜひご参考にしていただき、早めに歯科健診を受けることをおすすめします。
歯が黒くなる原因とは?
虫歯といえば、黒くなって穴があくといった絵を想像してしまいます。
実は、虫歯ではなくても歯が黒くなることがあります。そして、反対に、黒くなくても虫歯であることもあるのです。
歯が黒くなる理由
歯が黒くなる理由は、歯質が虫歯菌に汚染されて感染することや、歯の神経が死ぬことが原因です。その他に、歯石や補綴物(詰め物や被せ物)が原因の場合があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
■虫歯
虫歯が広がると、歯質に穴が開き黒くなる場合と、穴は無くても歯質が黒く透けて見えることがあります。
歯は、最表面からエナメル質→象牙質→歯髄(神経や血管)と言われる構造でできていますが、歯の内部に黒済みが透けて見える場合は、象牙質や歯髄まで虫歯が進行した状態です。
■失活歯
歯の神経が死んでしまった歯を失活歯と呼びます。失活歯の場合、歯髄が死んでしまっているため、歯に栄養が届かなくなります。そのため、健全な歯質が作られず、歯の黒ずみが発生します。
■外傷歯
転んだり、ボールがぶつかったりといったように、怪我による外傷も歯の黒ずみに関連します。外傷により、歯が折れる、亀裂が入ることで、歯髄まで炎症が波及します。その結果、歯髄が死んでしまい、上で説明した失活歯と同じ状況になってしまいます。
特に、外傷により歯髄が壊死してしまうと、血液に含まれる鉄と反応して硫化鉄となります。硫化鉄の色素である黒色が透けて見えることで、歯が黒ずんで見えてしまうのです。
■歯石
歯周病が重度の場合、歯周ポケットの中には歯石が蓄積していることが想定されます。特に、ポケットの中の歯石を縁下歯石と呼びます。通常の歯の裏側についている縁上歯石と異なり、細菌によって歯石が黒ずんでいることや、歯周ポケットからの出血もあるため、歯の根っこの縁が黒ずんで見えることがあります。
■メタルタトゥー
金属の詰め物や被せ物をした場合、経年劣化により金属イオンが口腔内に流出し、歯や歯肉に黒ずみを起こすことがあります。特に金属クラウン(被せ物)をセットした歯の根元の歯肉や、メタルインレー(金属の詰め物)の周囲の歯質が黒ずんできます。
いずれの場合も、歯に黒ずみを見つけたら、痛みやしみるといった症状がなくても一度歯科医師に相談することをおすすめします。
虫歯の黒ずみは治療が必要?
虫歯の黒ずみは、歯質に穴が開き黒くなることや、感染した歯質が黒く透けて見えることが原因です。
現時点で、自覚症状がなくても、痛みやしみるといったつらい症状が発生する可能性があるので、早めに治すことが大切です。
虫歯の起こり方
虫歯は、細菌がプラーク(歯垢)を餌として作り出す“酸”によって歯質が溶けだすことで起こります。
歯は、最表面からエナメル質→象牙質→歯髄(神経や血管)と言われる構造でできており、内部に虫歯が進行すると強い痛みを感じる不快症状が現れます。
虫歯は、早期発見・早期治療が原則です。黒ずみだけで、痛みがなくても早めに治療をすることをおすすめします。
虫歯の症状
具体的な虫歯の症状についてご説明いたします。
医学用語で歯虫歯を“う蝕”と呼び虫歯の進行度は、英語のCaries(カリエス)のCをとってC0~4のステージで表します。
C0(初期う蝕)
歯の表面に白濁と呼ばれるスポット状のシミやざらつきが現れます。痛みはありません。
C1(エナメル質う蝕)
歯の最表面になるエナメル質の中に感染がとどまっている状態です。まだ痛みはありませんが、虫歯になった箇所に、飲食物の色素が集まり、黒ずみを自覚することがあります。
C2(象牙質う蝕)
エナメル質の下にある象牙質まで進行するため、自覚症状が現れています。冷たいものや甘いものを摂取した際に、しみたり痛みを感じることがあります。
C3(歯髄炎、根尖性歯周炎)
象牙質の下にある神経まで虫歯が進行しているため、強い痛みが発生します。痛みが落ち着いた後も、咬むことで違和感を生じるなど、不快症状が現れます。
C4(残根)
虫歯により歯質が崩壊し、ボロボロの状態です。お口の中に根っこしか残っていない状態を残根と呼びます。神経が死んでいるため、痛みはありませんが、咬むと違和感があることや、歯の周囲が腫れるといった症状があります。
虫歯の治療
虫歯には、それぞれのステージにあった治療方法があります。
C0
適切な歯磨きや、フッ化物(歯質を強くする薬剤)を塗ることで白濁を改善することができます。
C1
エナメル質内に起こった虫歯は除去して、歯質に類似した色調のレジン(白いプラスチックの歯科材料)を充填します。治療回数は1回で完了します。黒くなった初期の虫歯もこの治療方法で対応することが可能です。
C2
小さな範囲の場合には、C1の時と同じ治療が可能です。
範囲が広く切削する歯質の量が多い場合には、インレーやクラウンの治療が必要となるため、治療回数が2~3回ほどになります。
C3
神経まで虫歯が進行しているため、神経を除去する根管治療が必要です。
その場合、根管治療で最短2回、土台を作って被せ物をするのに最短4回を想定することが必要です。歯の根管の数など、歯の状態によって治療回数は異なります。
▶根管治療の流れをもっと詳しく知りたい方は「根管治療(歯の神経の治療)の方法と流れ」の記事をご確認ください。
C4
多くの場合、抜歯です。清掃不良になるため、感染源となる残根を放置することはお勧めできません。抜歯した後は、インプラントやブリッジ、入れ歯といった選択肢があります。
▶インプラント、ブリッジ、入れ歯の比較について、もっと詳しく知りたい方は「徹底比較!インプラント・ブリッジ・入れ歯の違い」の記事をご確認ください。
まとめ
お口の中に、歯の黒ずみを見つけたら、まずは虫歯を疑って早めに歯科受診をすることが大切です。もちろん、虫歯以外にも歯が黒くなる原因はありますが、いずれの場合にも、何らかの処置をすることが、お口の健康に大切です。
かかりつけ歯科医難民になっている人も、一度お口の中を鏡で、じっくり覗いてみましょう。きっと、気になる箇所があるはずです。黒ずみなど気になる箇所があったら、早めに虫歯治療が得意な歯医者さんを受診することをおすすめします。
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■他の歯冠修復、欠損補綴(虫歯)治療のコラム一覧:https://teech.jp/column/mushiba
■歯冠修復、欠損補綴(虫歯)治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/mushiba-interview
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【コラム監修歯科医師】
岡本歯科医院 院長 岡本徹先生
▼医院について
Teech掲載ページ:https://teech.jp/hospital/658
医院ホームページ:https://www.okamoto-d.net
〒146-0091 東京都大田区鵜の木2-15-19
▼経歴
1986年 東京医科歯科大学 歯学部 卒業
2011年 公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 初代会長
2015年 岡本歯科医院 院長就任
▼役職
東京都歯科医師連盟 専務理事
公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 監事
全日本歯科医師剣道連盟 理事長
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【コラム執筆歯科医師】
木坂里子
東京医科歯科大学卒業 現役歯科医師として勤務