見た目に影響する前歯の虫歯。おすすめの治療方法は?
前歯が黒ずむ、白い斑点、前歯の隙間に物が挟まりやすい・・・などの症状がある場合には、虫歯の可能性があるかもしれません。今回は、見た目の印象に大切な前歯の虫歯について、お勧めの治療方法についていくつかご紹介いたします。
前歯は目立つ
前歯は、自分では直接見ることができません。毎日の歯磨きや口紅を塗る時、コンタクトレンズを入れる時など、鏡越しでしか、変化を実感することができないパーツです。では、他人からは前歯はどのように見えるでしょうか?
前歯が虫歯になる人の印象は?
前歯に虫歯があると、
・歯磨きが不十分
・歯磨きが下手
・不潔
・自己管理ができない
といったマイナスのイメージを持たれかねません。
そのため、前歯に気になる点があると、話下手になることや、十分な笑顔になれず、コミュニケーションにおいて、消極的になることが考えられます。
そのため前歯は、明るく健康的な日常を送るために大切なパーツの1つです。
前歯が見えるタイミング
現在は、新型コロナウィルスの予防のため、マスクを着用する機会が多いですが、会話やプレゼンなど様々なタイミングで、口元には人の視線が集まります。
前歯は、唇からのぞくため、コミュニケーションの際に、目立つパーツであると言えます。
前歯にできた虫歯の見た目とは
前歯に虫歯ができると、以下のような見た目の変化があります。
色が変わる
虫歯のため、歯の表面に白いシミや、茶色い着色が起こります。
透明感の減少
歯の最表面にあるエナメル質は、光を透過するため、健康な天然歯には透明感があります。虫歯になると、歯の表面に白濁が生じるため、透明感が失われてしまいます。
前歯と前歯の隙間に物が詰まる
歯と歯の隙間が虫歯になると、虫歯になった面は、表面が粗造になるため食べものが詰まりやすくなります。
前歯にできた虫歯の症状
前歯に限らず、虫歯になると、見た目の変化の他に、痛みやしみるといった不快症状が現れます。具体的な症状についてご説明いたします。
初期
初期の虫歯は、透明感が失われ “白濁”が起こります。歯の最表面にあるエナメル質に限局して、硬組織が“溶け始めている状態”です。白濁や透明感の減少といった見た目の変化のみで、痛みはありません。
中程度
虫歯がエナメル質の下にある象牙質まで進行すると、虫歯は急速に悪化し見た目の変化の他に、痛みやしみるといった症状が出てきます。
重度
象牙質の下にある歯髄(神経と血管)まで虫歯が進行すると、強い痛みが発生する歯髄炎になります。
感染による炎症で、歯髄が死んでしまうと、歯の根っこの先に炎症が広がる根尖性歯周炎まで進行してしまいます。神経が死んでしまった歯は、歯質が大きくかけても痛みを感じることがありません。
▶重度の虫歯の治療(根管治療)のながれについては「根管治療(歯の神経の治療)の方法と流れ」の記事をご確認ください。
前歯の虫歯治療
日本の歯科治療は、保険診療と、保険適応外の自由診療の2種類があります。
前歯の治療の場合にも、保険診療と自由診療のいずれかを選択することができます。
保険診療と自由診療では、選択できる治療方法や使える材料が異なるので、ご自身の状態やご希望に合った治療方法を選択することが大切です。
保険診療
虫歯の状態によって、選択する治療方法が異なります。
■フッ素塗布
初期の虫歯の場合、唾液とフッ素の働きにより、歯の再石灰化といってエナメル質を強化する方法があります。治療というよりは、予防の側面が強いため、ブラッシング指導と併せて受けることをお勧めします。
■コンポジットレジン修復
中程度の小さな虫歯の場合には、必要に応じて局所麻酔を行い、虫歯を除去します。その後、コンポジットレジンという歯科用材料を充填します。コンポジットレジンは、素材の性質により、吸水性があるので経年変化により変色が起こることが欠点です。また、2次カリエス(治療した箇所が再度虫歯になること)にも注意が必要です。
■レジン前装冠
歯の切削量が多い虫歯の場合、レジン前装冠による歯冠修復(歯の形態と機能の回復)が行われます。虫歯が神経まで波及している場合には、神経を除去する根管治療を行い、コアという土台を合着をする前処置が必要です。(レジンコアをファイバーポストで補強する方法もあります)
レジン前装冠は、金属の被せ物の表面にレジンが築盛されています。レジンは、吸水性があることから、経年変化により、劣化し黄ばんでしまう欠点があります。
重度の虫歯のため、歯を抜歯した場合には、レジン前装冠によるブリッジ(橋状の被せ物)をセットします。
■入れ歯
こちらも重度の虫歯により、歯を抜いた場合の治療方法です。
隣の歯を切削するブリッジの治療を選択しない場合には、義歯と呼ばれる入れ歯をセットします。
自由診療
前歯の治療にも、様々な自由診療の選択肢があります。
自由診療は、歯科医院によって価格が異なります。良好な予後や満足度の高い治療を受けるためには、価格だけでなく、歯科医師の過去の症例など経験を参考にしましょう。
■ダイレクトボンディング
歯は、歯頚部(歯の歯肉側に近い部分)から、歯の切縁(切端)までを1つの色で表すことができません。透明感を感じるグラデーションがあるからです。
ダイレクトボンディングでは、ハイブリッドレジンを複数のシェード(色調)を用いて、天然歯の色調を再現します。ハイブリッドレジンは、保険診療で使用するコンポジットレジンと比べて、セラミック粒子を含むため強度に優れています。
■セラミッククラウン
前歯の被せ物をする際に、最も審美性に優れるのがセラミッククラウンです。
セラミックの場合、透明感の再現や、経年劣化による変色が起こりにくいというメリットがあります。表面に傷が付きにくく、プラークの蓄積が起こりにくいため、口腔衛生にも優れています。
■ジルコニア
人工ダイヤモンドとも呼ばれるジルコニアのみで作られた被せ物です。修復材料としては最も高い強度や安定性を誇ります。歯質を削る量も少なくなります。白くて美しい素材ですが、透明度はそれほど高くありません。
まとめ
会話やプレゼンなど、他人の目につきやすい前歯は、虫歯になると清潔感がない印象を与えかねません。
前歯が虫歯になった場合、虫歯の進行度によって、レジン修復から被せ物までいくつかの治療方法があり、より審美性の高い技術が求められます。
特に、自由診療で行う治療が審美性に優れていますが、歯科医院ごとに価格が異なり、歯科医師の技術力により予後や満足度が異なります。
前歯の虫歯にお悩みの場合には、審美性に優れた治療を高い技術力で提供する歯科医師を選ぶことが大切です。審美歯科医や、補綴専門医が在籍する歯科医院を検索し、前歯のお悩みについて相談することをお勧めします。
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■歯冠修復、欠損補綴(虫歯)治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/mushiba-interview
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【コラム監修歯科医師】
岡本歯科医院 院長 岡本徹先生
▼医院について
Teech掲載ページ:https://teech.jp/hospital/658
医院ホームページ:https://www.okamoto-d.net
〒146-0091 東京都大田区鵜の木2-15-19
▼経歴
1986年 東京医科歯科大学 歯学部 卒業
2011年 公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 初代会長
2015年 岡本歯科医院 院長就任
▼役職
東京都歯科医師連盟 専務理事
公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 監事
全日本歯科医師剣道連盟 理事長
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【コラム執筆歯科医師】
木坂里子
東京医科歯科大学卒業 現役歯科医師として勤務