虫歯になりやすい場所があるって知っていましたか?その原因と予防方法
歯は、前歯や犬歯(前から3番目の歯、糸切り歯)、臼歯(奥歯)など、それぞれの形が異なります。また、歯がねじれている、顎が小さく歯が重なり合っている、親知らずが半分歯肉に埋もれているなど、歯の生え方にも個性があり、その個性により磨き残しが原因で、虫歯になってしまうことがあります。
このコラムでは、虫歯予防のために、ご自身のお口の中で虫歯になりやすい場所を知ると同時に、虫歯を予防する方法をご紹介します。
虫歯になりやすい箇所
まずは一般的に虫歯になりやすい箇所をご説明します。
以下の3か所は、誰にとっても磨き残しが多い箇所です。食べ物や飲み物の汚れが貯留するため、プラーク(歯垢)が形成しやすくなります。
①歯と歯が隣り合う面
歯と歯の隣り合う面は、歯ブラシが届きにくく磨き残しが多くなります。特に、歯と歯が接している面をコンタクトと呼びます。コンタクトの隙間は、前歯で70μm、奥歯では50μmほどの小さな隙間です。(0.001㎜=1μm)
②歯と歯肉の境目
歯と歯肉の境目は、歯周ポケットがあるため、プラークがたまりやすい箇所です。特にほほ側の歯と歯肉の境目は虫歯リスクが高くなります。
③奥歯の溝
前から4番目、5番目にある小臼歯、6~8番目にある大臼歯は、一般的に奥歯と呼ばれる箇所ですが、歯には、小さな溝が走っています。奥歯は食べ物をすりつぶす機能を担うため、食べかすが溝にたまりやすい箇所です。
ここまでが一般的な虫歯になりやすい箇所です。
続いて、歯並びや歯の生え方によって以下の箇所にも注意をしましょう。
④歯肉に半分埋まった親知らず
親知らずは、前から数えて8番目の一番奥にある歯です。人によっては、骨の中に埋まっている場合や、もともとない方もいます。横向きに生えていて半分歯肉が覆っている状態を“半埋伏”と呼びます。半埋伏の場合、歯磨きが難しいため、虫歯や智歯周囲炎という炎症が起こりやすくなります。
⑤重なり合った歯
歯並びが悪く歯と歯が重なり合って生えている状態を、“叢生(そうせい)”と呼びます。叢生の場合、歯と歯の間に歯ブラシの毛先を当てることが難しいため、磨き残しが多くなってしまうので注意が必要です。
⑥詰め物や被せ物の周囲
詰め物や被せ物の周囲から虫歯になることを“2次カリエス”と呼びます。2次カリエスは、詰め物や被せ物の下に広がっていくため、発見が遅れることがあります。定期的に健診を受けて、虫歯のチェックを受けましょう。
以上が、虫歯になりやすい箇所になります。続いて、虫歯にならないの予防方法をみていきましょう。
虫歯を予防するための定期健診(プロフェッショナルケア)
虫歯は早めに見つかれば、1度の治療で完了し治療にかかる時間や費用を抑えることができます。しかし、早期の虫歯は、症状がないためご自身では見つけることが困難です。3~4か月に1度の定期健診に通院し、効果的な虫歯予防を行いましょう。
定期健診では、主に以下の内容が行われます。
染め出し検査
プラークの付着箇所を明示する染め出し検査が行われます。視覚的に、磨き残しの特徴を理解することでより効果的な歯磨きを行うことができます。
ブラッシング指導
歯科医師や歯科衛生士によるブラッシング指導では、歯面への歯ブラシの当て方、適度な力加減、1本ずつ磨く歯ブラシの動かし方など、細やかな指導を受けることができます。
歯石除去
歯石は、歯ブラシでは除去することができません。歯石除去用のセルフケアグッズが販売されていますが、歯の表面にあるエナメル質を傷つけてしまう可能性もあるため、歯科医院での処置をお勧めします。
PMTC
Professional Mechanical Tooth Cleaningの頭文字をとったPMTCとは、日本語で機械的歯面清掃と呼ばれる処置です。専用の機械と、フッ素配合の歯磨剤を使ってプラークを除去します。
自宅でできる虫歯予防(セルフケア)
続いて、虫歯予防のために、毎日ご自宅でできることをご紹介します。
歯ブラシの他にも様々なセルフケアグッズが販売されています。実際、歯ブラシだけでは、プラークは約6割(※1)しか取り除くことができません。ブラッシング指導を参考に、効果的な歯磨きスキルを身につけましょう。
※1:日本歯科保存学雑誌48(2), 272-277, 2005-04-30
歯ブラシ
歯ブラシは、1か月に1度は取り換えましょう。それ以前にも、裏返してみた際に、毛先がヘッドから外側に見えるものは、交換時期です。
▶歯ブラシの正しい磨き方、選び方については「正しい歯磨きの持ち方とは?歯磨きの方法から歯ブラシの選び方まで」の記事をご確認ください。
オーラルケアグッズ
歯ブラシとともに、セルフケアを向上させるオーラルケアグッズを併用して、隅々まで磨く習慣をつけましょう。
■タフトブラシ
ヘッド部分が通常の歯ブラシよりも小さく、山型にできています。歯間にある空隙を磨くのに適しています。
■デンタルフロス
デンタルフロスは、歯と歯の間を通して使うケアグッズです。歯と歯の間の汚れの他、歯周ポケット内部のプラークを掻き出すことができます。
■歯間ブラシ
ブリッジ(橋状の被せ物)がある場合、ポンティック(歯を抜いた部分のダミーの歯)の下を清掃するのに適しています。加齢により歯肉が退縮した場合に、歯間にある空隙を清掃することにも優れています。
■デンタルリンス
虫歯や、歯周病、口臭など、ご自身のお口の状態にあった効能を選びましょう。特に虫歯予防の場合には、フッ素配合のデンタルリンスがお勧めです。忙しく歯磨きができなくても、デンタルリンスでうがいだけでも欠かさずに行ってください。
虫歯予防の理想のスケジュール
虫歯予防には、毎日のセルフケアだけでなく、歯科医院で行うプロフェッショナルケアが有効です。
毎日のセルフケア
セルフケアは、毎食後のブラッシングが基本です。歯間ブラシやデンタルフロスを併用しましょう。
プロフェッショナルケア
特に虫歯の症状がなくても、3~4カ月に1回は定期健診に通うことをお勧めします。ブラッシング指導を受けたら、セルフケアにしっかりと活かしていきましょう。
より虫歯予防をする方法
より虫歯を予防する方法として忘れてはならないのが、フッ素とシーラントの活用です。
フッ素の活用
フッ素とは、初期虫歯に有効な成分で、歯の再石灰化を促進することで虫歯の進行を防ぐことができます。市販のオーラルケアグッズにも配合されています。
■歯磨き粉
成分表示を確認し、フッ素が配合されているものを利用しましょう。
▶フッ素入りの歯磨き粉を使用するメリットの詳細は「虫歯を防ぐ「フッ素歯磨き」のメリットとは?」の記事をご確認ください。
■デンタルリンス
デンタルリンスにもフッ素配合のものが、販売されています。パッケージには“虫歯予防”のキーワードとともに、フッ素についての表記があるので参考にしてみてください。
■フッ素塗布
歯科医院で行う処置です。高濃度のフッ素を直接歯面に塗布することで、歯質を強化し虫歯予防を行うことができます。定期健診に併せてフッ素塗布を受けてみましょう。
シーラント
シーラントとは、奥歯の溝をあらかじめ埋めることで、プラークが貯留しないようにすることです。歯科医院で行うことができます。
被せ物や詰め物の選択
被せ物や詰め物の治療をする際には、セラミックを選択することもおすすめです。金属やレジンに比べて汚れがつきにくいため、虫歯や歯周病のリスクが低いと言われています。
まとめ
虫歯予防は、毎日のセルフケアと歯科医院で行うプロフェッショナルケアが有効です。
虫歯になりやすい箇所や、上手な歯磨き方法を知ることで、効果的な虫歯予防を行いましょう。歯科受診の期間が空いている方は、まずは、かかりつけ医で定期健診を行うことをお勧めします。
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■他の歯冠修復、欠損補綴(虫歯)治療のコラム一覧:https://teech.jp/column/mushiba
■歯冠修復、欠損補綴(虫歯)治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/mushiba-interview
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【コラム監修歯科医師】
岡本歯科医院 院長 岡本徹先生
▼医院について
Teech掲載ページ:https://teech.jp/hospital/658
医院ホームページ:https://www.okamoto-d.net
〒146-0091 東京都大田区鵜の木2-15-19
▼経歴
1986年 東京医科歯科大学 歯学部 卒業
2011年 公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 初代会長
2015年 岡本歯科医院 院長就任
▼役職
東京都歯科医師連盟 専務理事
公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 監事
全日本歯科医師剣道連盟 理事長
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【コラム執筆歯科医師】
木坂里子
東京医科歯科大学卒業 現役歯科医師として勤務