食べ物によって虫歯になりやすくなるの?虫歯になりやすい食べ物、予防につながる食べ物
“甘いものが嫌いなのに、虫歯になるのはなぜ?”とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。虫歯は、チョコレートやクッキーといった甘いものだけでなるものではありません。食べ物や食事のタイミングなどを意識することで、虫歯予防を効果的に行っていきましょう。
虫歯の原因“4つの輪”
虫歯の原因には、“4つの輪”という考え方があります。
これは、50年以上前に提唱されたKyesの輪 という考えを基にしています。
Kyesの輪では、虫歯の原因には①宿主(歯の質)、②細菌、③環境(食べ物)があり、それぞれの原因(輪)が重なり合うと、虫歯が発生しやすいという理論です。近年は、これら3つに④時間が追加された考えが主流になってきました。
①宿主(しゅくしゅ)
具体的には、歯並びや、被せ物の有無、口腔乾燥など、ご自身のお口の状態のことです。
②細菌
虫歯菌の数や、活動性(虫歯を作る働きをしているか)の程度が虫歯発生の鍵となります。
③環境
環境とは、食べ物の種類や、食事の回数などのことです。
④時間
時間とは、①~③の原因に長い時間さらされることで虫歯が発生しやすくなることを表しています。例えば、だらだらと間食することや、食後歯磨きをしないことなどが挙げられます。
“4つの輪”うち、①宿主、②細菌については、ご自身ですぐに改善することができるものではありません。しかし、③環境や④時間については、生活習慣の見直しが有効です。
では、③環境に関連する食べ物について考えてみましょう。
虫歯になりやすい食べ物・飲み物
虫歯になりやすさには、食べ物や飲み物の形状・成分が関係します。
粘着性
例えば、キャラメルや、ソフトキャンディー、餅などは、歯にくっつくため、歯磨きするまで時間があいてしまうと、歯についたままになってしまいます。
また、クッキーやビスケットのような感触のものは、水分を含むことで、歯の溝に詰まることがあります。
繊維質
野菜や、肉など繊維質なものは、歯と歯の間に挟まることがあります。違和感を生じて自分で除去することができますが、歯周病が進むと歯が動揺し、より挟まりやすくなります。結果として、歯と歯の間に挟まっても、気がつきにくくなります。
糖分
お茶やミネラルウォーターと異なり、ジュースや炭酸飲料、イオン飲料などは、糖分を含んでいます。そのため、虫歯菌の餌が豊富です。歯の健康のために摂取する方もいらっしゃるかもしれませんが、ヨーグルトドリンクは、糖分を含むことにも注意しましょう。
虫歯が起こる仕組み
4つの輪が重なり合うと、虫歯が起こることは先ほどお伝えしました。では、虫歯はどのような仕組みで起こっていくのでしょうか?
虫歯=歯が溶ける
虫歯は、虫歯菌がプラークに住み着き、糖分などを餌とすることで、酸を産生します。この酸により、歯の表面からリンやカルシウムといった成分が溶けだすことから虫歯がはじまります。これは、ステファンカーブ(※1)という理論で証明されており、㏗でいうと、5.5を下回ると歯の表面からリンやカルシウムといった成分が溶けだしやすくなります。
※1:公益財団法人 日本学校保健会 1.学校教育と「歯・口の健康づくり」
虫歯予防には、お口の中を酸性状態のままにしないことが大切です。
虫歯予防につながる食習慣
飲食のたびに、お口の環境は酸性に傾きますが、通常は、唾液の働きにより中和され食後30分程度で回復します。手軽にできる対策をいくつかご紹介いたします。
間食時間のルール化
1日3度の食事の他に、仕事が煮詰まったときのおやつタイムや、お風呂上がりのビールとおつまみなど、間食のタイミングがあります。しかし、ながら食べなど、飲食のタイミングが増えると、もとに戻るまでに時間がかかり、虫歯が起こりやすい環境になってしまいます。
基本は、“食べたら磨く!”が鉄則ですが、歯磨きができない場合には、お茶を飲む、水で口をゆすぐなど、お口の中に食べ物や飲料の成分が残らないようにしましょう。
よく咬んで食べる
よく咬むことは、唾液の分泌を促します。唾液の中には、抗菌成分も含まれ、口腔乾燥による細菌が活発に活動しやすい環境を防止することができます。
繊維質のある食べ物
繊維質のある食べ物は、咬む回数が増えるため、唾液の分泌が盛んになります。
歯と歯の隙間に挟まったままになると、虫歯の原因になるため、食後はしっかりと歯磨きを行いましょう。
カルシウムの摂取
カルシウムの摂取を目的に牛乳を飲む習慣がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?実は、牛乳は虫歯予防にも効果があります。牛乳由来成分の“CPP-ACP”は、溶け出したリン酸カルシウムを取り戻す再石灰化や、歯が溶けにくくなる耐酸性に効果があることがわかっています。
糖分が添加されているヨーグルト飲料は、虫歯のリスクを上げる可能性があるのでご注意ください。
ビタミンDの摂取
カルシウムを効果的に摂取するには、ビタミンDと一緒に取ることが理想的です。ビタミンDは、魚や卵の黄身、キノコに含まれています。
ビタミンDとカルシウムを併せて摂取することは、歯質の強化や、虫歯予防に効果的です。
キシリトールの活用
口寂しい時に、ガムや飴など間食をしたくなりますが、糖分としてキシリトールが使用されているものを選びましょう。キシリトールのガムは、唾液の分泌にも効果があるため、口腔乾燥による虫歯菌の繁殖を防止することが期待できます。
まとめ
虫歯予防は、①宿主、②細菌、③環境、④時間の4つの輪の対策を行うことがポイントです。特に、③環境や④時間に関わる食べ物や、飲食習慣は、ご自身で改善することができるものです。食生活の見直しから虫歯予防に取り組みましょう。
併せて歯医者さんを受診し、今ある虫歯の治療や、虫歯菌が増加しにくいお口になるようなアドバイスをもらうことも大切です。
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【コラム監修歯科医師】
岡本歯科医院 院長 岡本徹先生
▼医院について
Teech掲載ページ:https://teech.jp/hospital/658
医院ホームページ:https://www.okamoto-d.net
〒146-0091 東京都大田区鵜の木2-15-19
▼経歴
1986年 東京医科歯科大学 歯学部 卒業
2011年 公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 初代会長
2015年 岡本歯科医院 院長就任
▼役職
東京都歯科医師連盟 専務理事
公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 監事
全日本歯科医師剣道連盟 理事長
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【コラム執筆歯科医師】
木坂里子
東京医科歯科大学卒業 現役歯科医師として勤務