虫歯になると口臭がするって本当?口臭の原因と対策
虫歯の自覚症状には、痛みやしみるといった症状がありますが、これらの症状は自分でしか感じることがないものです。しかし、口臭はどうでしょうか?口臭は、嗅覚の慣れから、自分では気が付きにくいものです。今回は、虫歯と口臭について解説します。
口臭とは
口臭は、お口の臭いのことです。大きく分けて2種類に分けることができます。
生理的口臭と、病的口臭です。
生理的口臭とは
健康な人であっても、お口の臭いは無臭ではありません。これは、生理的口臭と言われるもので、寝起きにお口が乾いて臭いが強くなるといったことはありますが、基本的に他人に不快感を与えるほどのものではありません。
病的口臭とは
生理的口臭に対して、病的口臭とは、他人に不快感を与えてしまう位の強い臭いのことで、酸っぱい臭いや、生臭い臭いなど、原因によって特徴があります。
臭いの強弱はありますが、顔をそむけられる、鼻に手を当てられるといったことを、他人から仕草で表されることもあるかもしれません。
今回、ご説明する虫歯も、病的口臭の原因の1つと言われています。
虫歯が臭う原因とは
虫歯に由来する口臭には4つの原因が考えられます。
虫歯に詰まった食べかす
歯は、最表面からエナメル質→象牙質→神経という構造でできています。虫歯になると、エナメル質が溶けて歯の内部へと虫歯が進行していきます。虫歯の進行により、硬い歯の構造が破壊され、歯に小さな穴が開いた状態になっていくのです。
この小さな穴に食べかすが詰まると、腐敗した臭いの原因となることがあります。小さな穴の周囲は、健康な歯の表面と異なり、粘性があることが多いので、食べかすがたまりやすい環境になっているため、注意が必要です。
歯の清掃不良
虫歯になったということは、その歯を適切に磨けなかった、磨き残しがあったということです。そのため、もともとプラーク(歯垢)がたまりやすい箇所だったのかもしれません。
プラークは、細菌が住み着くため、口臭の発生しやすい場所になると言えます。
神経の腐敗
エナメル質→象牙質の下には、歯髄腔(しずいくう)と呼ばれる構造があります。
この歯髄腔には、神経の他に、血管が通っていますが、重度の虫歯になると、神経や血管が腐敗し、臭いの原因になってしまいます。
根尖性歯周炎
歯は顎の骨の中に、歯根と呼ばれる土台で植立し、歯肉でおおわれています。虫歯が神経まで進行した結果、炎症が歯根の先にある根尖孔(こんせんこう)と呼ばれる小さな穴から、あごの骨まで炎症が広がって膿の袋が形成されます。これは、根尖性歯周炎と呼ばれる状態です。この膿は、強い口臭が発生する原因となることがわかっています。
虫歯の臭いはどんな臭い
虫歯が臭うということをご存知ない方も多くいらっしゃいます。
では、実際に進行した場合どのような臭いがするのか、例を挙げて解説します。
真夏の生ごみの臭い
人のお口の中の温度(口腔温)は、36℃前後と言われています。特に、口は、呼気や唾液により湿度がある程度保たれています。この環境は、真夏の密室に似ているかもしれません。
あまり良い表現とは言えないかもしれませんが、虫歯に詰まった食べかすを、放置した際に起こる臭いは、真夏の暑い日に生ごみが腐っていく過程を想像すればわかりやすいのではないでしょうか。
卵が腐った臭い
口臭全般に言えることですが、臭い成分の内、代表的なものとして、たんぱく質を分解して発生する「揮発性硫黄化合物」があります。“硫黄”というワードから、お気づきの方もいらっしゃるかもしれません。あの温泉で有名な “卵が腐った臭い”です。
特に神経まで進行した虫歯の場合、神経や血管には、たんぱく質が含まれるため、結果として卵が腐った臭いがする可能性があるのです。
虫歯由来の口臭の治療方法
虫歯は、自然治癒することがありません。そのため、虫歯由来の口臭も虫歯を治さなければ、改善することは期待できないのが現実です。
応急処置
ご家族や友人に口臭を指摘されたとします。もしかしたら、“虫歯があるのはわかっているけれど、忙しくて歯科受診ができない・・”という方もいらっしゃると思うので、口臭対策の応急処置の方法をお伝えします。
■第一選択
第一選択は、忙しくても歯科受診をしていただくことです。虫歯が進行し、今なら保存することができる歯も、1、2週間後には、もう抜歯しか選択肢が無くなるかもしれません。
お仕事や学校の都合で、治療時間をとれない場合には、歯科医師にスケジュールを相談すれば、臭いの原因となる感染した歯質を除去し、仮詰をしてもらうこともできます。
■歯科受診までのセルフケア
歯科受診をするまでは、虫歯の歯の周りを重点的に磨きましょう。
もしも歯に穴が開いているのが見えて、食べかすや、プラークが詰まっていたとしても、つまようじや、歯間ブラシなど、とがったもので無理に取り除かないでください。弱くなった歯質を貫いてしまい、強い痛みや腫れの原因になることがあるからです。
できるだけ、早く歯科受診を行いましょう。
虫歯治療
虫歯には、進行度によって治療の方法が異なります。
初期の虫歯であれば、削って白いプラスチックであるレジン(光照射で固まる歯科材料)を詰める方法が有効ですが、進行すると詰め物や被せ物、場合によっては抜歯が必要になることもあります。
虫歯由来の口臭は、虫歯を治さない限り、原因を除去できません。
虫歯を治療して、口臭が改善した後も、定期的なクリーニングや健診に通院することをお勧めします。
虫歯由来の口臭の予防
虫歯が原因の口臭を予防するためには、まずは虫歯にならないことです。
虫歯の早期発見・早期治療
虫歯の臭いが強くなるのは、進行した虫歯の場合です。
そのため、虫歯を初期の小さな段階で見つけて、治療することで虫歯由来の口臭を予防することができます。
そのため定期的な歯科検診をお勧めします。年に4回~、クリーニングを含めて通院することが理想的です。
▶虫歯予防のための定期健診・予防歯科の詳細は「予防歯科のメリットとケア方法」の記事をご確認ください。
虫歯になりにくい口腔環境
まずは、お口の衛生状態を改善するプラークコントロールが大切です。歯磨きを行う際には、プラークがたまりやすい歯と歯の間や、奥歯の溝、歯肉との境目、詰め物や被せ物の周囲をデンタルフロスや歯間ブラシを活用しながら磨いていきましょう。
フッ化物を塗布
市販されている歯磨き粉やデンタルリンスの中には、“フッ素”を配合しているものが多く販売されています。虫歯予防に有効なフッ素を上手に取り入れましょう。
歯科医院では、高濃度のフッ素を歯面に塗ることができるので、定期健診と併せてフッ素の歯面塗布を受けることもおすすめです。
食生活の見直し
虫歯の原因には、間食の回数も1つとして挙げられます。
だらだらと間食を続けてしまう人や、飴やガムを食べる習慣、糖分の多い飲み物を摂取するタイミングが多い方は注意が必要です。
まとめ
今回は、虫歯が原因の口臭についてご説明いたしました。虫歯は進行すると臭いの原因になります。また、虫歯になってしまったということは、歯磨きが不十分であったとも言えます。虫歯があることは、お口の環境が口臭のリスクが高いということなのです。
大切なことは、虫歯にならないこと、虫歯になっても治療を早期に受けることです。定期的に通えるかかりつけ歯科医を見つけておきましょう。
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■他の歯冠修復、欠損補綴(虫歯)治療のコラム一覧:https://teech.jp/column/mushiba
■歯冠修復、欠損補綴(虫歯)治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/mushiba-interview
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【コラム監修歯科医師】
岡本歯科医院 院長 岡本徹先生
▼医院について
Teech掲載ページ:https://teech.jp/hospital/658
医院ホームページ:https://www.okamoto-d.net
〒146-0091 東京都大田区鵜の木2-15-19
▼経歴
1986年 東京医科歯科大学 歯学部 卒業
2011年 公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 初代会長
2015年 岡本歯科医院 院長就任
▼役職
東京都歯科医師連盟 専務理事
公益社団法人東京都大田区大森歯科医師会 監事
全日本歯科医師剣道連盟 理事長
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【コラム執筆歯科医師】
木坂里子
東京医科歯科大学卒業 現役歯科医師として勤務