歯に使用するクラウンを8種類紹介!それぞれの特徴や選び方を解説
虫歯や外傷などで歯が大きく損なわれた際に行われる治療の1つが「クラウン(被せ物)」です。クラウンにはさまざまな種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットが存在します。見た目や耐久性、費用に大きく関わるため、どの種類を選ぶかは非常に重要なポイントです。
この記事では、歯に使用される代表的なクラウンを8種類取り上げ、それぞれの特徴や選び方についてわかりやすく解説します。自分に合ったクラウンを選ぶためには、素材の特徴だけでなく、治療する部位やライフスタイルも踏まえて判断することが大切です。この記事を参考に、納得のいくクラウン選びを行いましょう。
クラウンとは
クラウンとは、虫歯や外傷などで大きく失われた歯の形や機能を回復するために、歯全体を覆うように装着する人工の被せ物のことを指します。
詰め物(インレー)が部分的な補修であるのに対し、クラウンは歯全体を覆うため、より大きな損傷や根管治療後の歯に用いられることが一般的です。
クラウンは、見た目を整えるだけではなく、噛む力を回復させ、歯の破折を防ぐという点でも非常に重要です。また、近年では機能性だけではなく、審美性や金属アレルギーへの配慮など、素材の選択肢が多様化しています。クラウン治療を検討する際には、その違いを理解した上で、自分に合った選択をすることが求められます。
クラウンの種類
クラウンには多くの種類があり、それぞれに異なる特性があります。どのクラウンを選ぶかによって、見た目の美しさや耐久性、費用、使用できる部位、さらには金属アレルギーのリスクまで変わってきます。そのため、自分に合った素材を選ぶことが大切です。
以下では、代表的な8種類のクラウンについて、それぞれの特徴や適応部位、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。クラウン治療を検討している方や素材の選び方で迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
CAD/CAM冠
CAD/CAM冠は、コンピューター上で設計(CAD)し、機械で自動加工(CAM)されたクラウンです。主にレジンとセラミックを混合したハイブリッドレジンブロックから作られます。
保険適用の範囲が拡大され、小臼歯や条件付きで大臼歯にも使用可能となりました。そのため、現在は保険診療の中で最も多く利用されています。銀歯のように金属を使わないため、見た目が自然で金属アレルギーの心配もありません。見た目を気にする方や金属アレルギーの方にとっては選びやすい選択肢と言えるでしょう。
ただし、耐久性の面ではセラミックや金属製クラウンよりもやや劣り、奥歯に使う場合は破損や摩耗のリスクがあります。また、強い着色汚れがつきやすい点もデメリットです。保険適用の範囲内で自然な見た目を求めたい方には適していますが、適応条件や耐久性については歯科医師とよく相談することが大切です。
硬質レジン前装冠
硬質レジン前装冠は、金属のフレームの表面に硬質レジンという樹脂を貼り付けたクラウンです。保険診療で認められており、主に前歯に使用されます。正面から見たときには白く自然な見た目に見えるため、審美性を重視する患者様によく選ばれています。
ただし、レジン部分が経年劣化で変色したり欠けたりするリスクがあるため、奥歯にはあまり使用されません。また、CAD/CAM冠の登場により、近年は使われることが少なくなっています。
銀歯
銀歯とは、正式には「金銀パラジウム合金冠」と呼ばれる、金属製のクラウンです。強度が高いため、以前は咬合力の強い奥歯によく使用されていました。
しかし「金属色が目立つ」「金属アレルギーのリスクがある」などのデメリットがあるため、近年はCAD/CAM冠が主流となっており、銀歯は限定的に利用されるだけにとどまっています。
オールセラミッククラウン
オールセラミッククラウンは、金属を一切使わず、セラミック(陶材)のみで作られたクラウンです。自然な透明感と美しい白さが特徴で、前歯などの見た目が重視される部位に使用されます。
金属を使用していないため、金属アレルギーの心配がなく、歯ぐきが黒ずむといったトラブルも起こりません。また、経年による変色が少なく、美しさを長く保てる点も大きなメリットです。
一方で、自費診療となるため費用が高くなりがちで、強い力が加わると割れやすいというデメリットもあります。審美性を重視する方や美しい仕上がりを求める方に非常に人気の高い選択肢です。
ジルコニアセラミッククラウン
ジルコニアセラミッククラウンは、内側に硬くて丈夫なジルコニアを使用し、その上に審美性の高いセラミックを焼き付けたクラウンです。見た目の美しさと高い強度を両立しているのが特徴で、前歯から奥歯まで幅広く使用可能です。
金属を使用していないため、金属アレルギーの心配もありません。また、長期間にわたって変色しにくく、美しさを維持できます。
ただし、セラミック部分が欠けるリスクがあるため、食いしばりや歯ぎしりが強い方には注意が必要です。自費診療となるため高額になりやすいですが、総合的に満足度の高いクラウンと言えるでしょう。
オールセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンなどについては「セラミッククラウンとは?種類やメリット・デメリット、費用などを徹底解説」で詳しく解説しています。こちらも合わせてご覧ください。
ジルコニアクラウン
ジルコニアクラウンは、人工ダイヤモンドの一種とも言われる酸化ジルコニウムを使用したクラウンで、高い強度と耐久性を持ち合わせています。非常に硬く、割れにくいため、奥歯など負荷がかかる部位に適しており、歯ぎしりや食いしばりが強い方にも人気です。金属を一切使わないため、金属アレルギーのリスクがなく、歯ぐきの変色なども起こりません。
ただし、天然歯と比べるとやや白さが強く、自然さを求める方はオールセラミックなどのほうが適している場合もあります。
「ジルコニアクラウンとはどんな治療?人気の理由やお手入れ方法まで詳しく解説」では、より詳しくジルコニアクラウンについて解説しています。
メタルボンドクラウン
メタルボンドクラウンは、内側に金属のフレームを使用し、その外側にセラミックを焼き付けたクラウンです。セラミックによる自然な白さと、金属による高い強度を兼ね備えており、見た目と耐久性のバランスが取れたクラウンとして長年にわたり使用されてきました。前歯・奥歯ともに使用可能で、特に強い咬合力がかかる部位でも安心して使用できるのがメリットです。
ただし、金属を使用しているため、金属アレルギーや歯ぐきの変色が起こる可能性があります。また、長期間の使用で歯と歯ぐきの間に黒いラインが目立ってくることもあります。
ゴールドクラウン
ゴールドクラウンは、金を主成分とする合金で作られたクラウンで、高い生体親和性と耐久性を兼ね備えています。錆びにくく、金属アレルギーのリスクが低いのが特徴です。
また、柔軟性があるため、噛み合う歯に優しく、長期間の使用でも破損や摩耗が少ないといったメリットがあります。主に奥歯に使用され、見た目よりも機能性を重視する方に選ばれることが多いです。
ただし、目立ちやすいため、前歯にはほとんど使用されません。また、保険が適用されず自費診療となるため、費用は高額になります。
なお、詳細については「ゴールドクラウンとは?メリットやデメリット、費用などを徹底解説」にて解説しています。
クラウンを選ぶ際のポイント
先述の通り、クラウンにはさまざまな種類があります。見た目が自然なもの、強度に優れたもの、費用が抑えられるものなど、素材によって得られるメリットは異なります。
だからこそ、単に人気や費用だけで決めるのではなく、さまざまな要素を考慮し、総合的に判断することが大切です。
例えば、治療する歯の位置やかかる力、審美性、金属アレルギーの有無、そして保険が適用されるかどうかといった点は、素材選びに大きく影響します。歯科医師と相談しながら、これらの条件をしっかりと確認することで、治療後も安心して使い続けられるクラウンを選ぶことができるでしょう。
以下では、クラウン選びにおいて特に重要な4つのポイントを順に解説します。
治療する歯の位置や耐久性で選ぶ
クラウンを選ぶ際にまず考慮すべきなのは、治療を行う歯の位置です。奥歯は噛む力が強くかかるため、ジルコニアクラウンやゴールドクラウンのような高い耐久性を持つ素材が推奨されます。
また、噛み合わせの強い方や歯ぎしりの癖がある方は、割れにくく摩耗しにくい素材を選ぶことで、長期間安定して使用することが可能になります。素材ごとの強度の違いを理解することが、クラウン選びの第一歩です。
見た目の自然さ・色で選ぶ
クラウンを選ぶ上では、見た目の自然さや色味も非常に重要なポイントです。特に、前歯などの人から見える部位の治療では、色や透明感が周囲の歯と違和感なく調和するかどうかが大きな判断基準になります。
オールセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンは、天然歯に近い透明感と色調の再現性に優れており、審美性を重視する方に人気です。一方、銀歯や硬質レジン前装冠などは、金属の色味が透けたり、経年変化で色が変わったりする可能性があるため、審美性の面ではやや劣ります。
周囲の歯とのバランスを考慮し、自然な見た目に仕上がる素材を選ぶことが、後悔しない治療の鍵となります。
金属アレルギーの有無で選ぶ
金属アレルギーの有無も重要な判断材料のひとつです。金属を使用したクラウン、例えば銀歯やメタルボンドクラウン、硬質レジン前装冠などは、唾液と反応して金属イオンが溶け出し、それが体内に取り込まれることでアレルギー症状を引き起こす可能性があります。
皮膚のかゆみやかぶれ、口内炎などの症状が現れる場合があり、特にアレルギー体質の方は注意が必要です。こうしたリスクを避けるためには、金属を一切使用していないクラウンを選ぶのが安心です。
オールセラミッククラウンやジルコニアクラウン、CAD/CAM冠(保険適用のものを除く)などは、金属を含まないため、金属アレルギーの心配がありません。過去にアレルギーの症状が出たことがある方や、将来的なリスクを避けたい方は、金属不使用の素材を検討するとよいでしょう。
保険診療か自費診療かで選ぶ
クラウンを選ぶ際には、保険診療か自費診療かという点も重要な選択基準になります。保険診療では、国が定めた基準に基づいて治療が行われるため、費用を大幅に抑えることができます。銀歯や硬質レジン前装冠、条件を満たした場合のCAD/CAM冠などが保険適用の対象です。
ただし、使用できる素材や治療の自由度には制限があり、審美性や耐久性においては自費診療のクラウンに比べて劣る面もあります。
一方、自費診療では、より高品質な素材や最新の治療技術を選択することが可能です。オールセラミッククラウン、ジルコニアクラウン、ゴールドクラウンなどはその代表例です。費用は高くなりますが、見た目や機能性、長期的な耐久性を重視する方には適しています。
治療にかけられる予算や、仕上がりへの希望を考慮して、どちらを選ぶか検討しましょう。
まとめ
クラウンにはさまざまな種類があり、それぞれに素材、見た目、強度、費用といった点で違いがあります。銀歯や硬質レジン前装冠のように保険適用でコストを抑えられるものから、オールセラミッククラウンやジルコニアクラウンのように審美性や耐久性に優れた自費診療のものまで、選択肢は幅広く存在します。
クラウンを選ぶ際は、治療する歯の位置や見た目、金属アレルギーの有無、そして治療にかけられる予算などを総合的に判断することが大切です。信頼できる歯科医師としっかり相談した上で選ぶことで、満足のいく治療につながります。