歯周病検査はなぜ必要?検査項目やその内容について徹底解説
“成人の約8割が歯周病になる”といわれる一方で、自身の身の回りで「歯周病に悩んでいる」あるいは「治療を受けている」という話を耳にする機会はそれほど多くありません。なぜこのようなズレが生じてしまうといえば、すでに歯周病になっていても自身でそれに気づいていない“隠れ歯周病”の割合が圧倒的に多いためです。そのため歯周病は「沈黙の病気」と言われることがあります。
この“隠れ歯周病”をあぶりだすのに有効な手段が、今回ご紹介する「歯周病検査」です。ここでは歯周病検査の重要性やその具体的な検査内容を詳しくご紹介していきます。
歯周病の検査はなぜ必要?
歯周病検査にはまだ症状がない早期の段階で歯周病を発見し、治療に結びつけるというメリットがあります。
歯周病は進行に応じて「歯肉炎」と「歯周炎」の大きく2つに分類されますが、初期の「歯肉炎」の時に適切な処置をおこなえば、元の健康な歯ぐきを取り戻すことができます。しかし歯肉炎から「歯周炎」へと進行してしまうと治療にある程度の期間を要するほか、中等度以降の歯周炎では治療による完治も難しくなります。つまり歯周病は初期の歯肉炎、あるいは軽度の歯周炎の段階で病気を見つけて治療を開始するのがベストなわけです。
一方で歯周病のやっかいなところは、初期の歯肉炎でははっきりとした症状がなく、それに気づかないまま病状が進行してしまう点にあります。そのため「異常に気づいた時には“手遅れ”になっていた」という事態に陥らないためには、症状がなくても歯科医院で定期的に歯周病の検査を受けることが肝心です。では次項から、その具体的な項目や内容についてご紹介していきましょう。
▶歯周病予防のための定期健診・予防歯科の詳細は「予防歯科のメリットとケア方法」の記事をご確認ください。
歯周病の検査にはどんな項目がある?
歯周病検査には、歯科医師が患者さんに現在の様子や症状などを確認する「問診」と、実際に歯周病の進行状態を調べる「歯周組織検査」があります。
問診
問診では現在の症状にくわえ、セルフケアの状況(歯磨きの回数・歯間クリーナーの使用の有無など)や、全身の健康状態についても確認していきます。
くわえて過去の治療歴や、食生活や飲酒、喫煙など普段の生活習慣についての聞き取りもおこなっていきます。
歯周組織検査の項目
歯周組織検査では歯や歯ぐき、骨の状態を専用の器具や検査機器を使って調べ、その結果をもとに現在の歯周病の状況や進行度を診断します。
次項では、検査項目について、さらに詳しくご紹介していきます。
歯周病の検査内容
ここでは先に挙げた「歯周組織検査」の各項目について、さらに詳しい検査の内容を解説していきます。
参照:歯周病治療の指針2015/日本歯周病学会
プロービング検査(歯周ポケット深さの測定)
プロービング検査では、歯周病の進行によって生じた歯周ポケットの深さを「プローブ」と呼ばれる器具を使って測定していきます。歯周ポケットの深さは歯槽骨の吸収具合を示すもので、一般にポケットの深さが4mm以上になると中等度の歯周病(歯周炎)と診断されます。なお検査は1歯につき4点以上(通常は6点)の計測が基本です。測定結果による大まかな診断は以下の通りになります。
・2mm以内:正常
・2~3mm:歯肉炎の疑い
・3~4mm:軽度歯周炎
・4~6mm:中等度歯周炎
・6mm以上:重度歯周炎
BOP(プロービング時の出血の有無)
BOP(Bleeding On Probing)では、先のプロービング検査で歯周ポケット内にプローブを挿入した際に、歯ぐきからの出血の有無を記録していきます。
BOPは歯周病の炎症活動を測る目安で、プロービング時に出血がみられる部位は炎症が強いことを示しています。
口腔清掃状態(プラークコントロールの状態)
全歯にプラークを赤く染め出す染色剤を塗布し、口内の清掃状態をチェックしていきます。検査では1つの歯を4面にわけ、すべて歯面に対して赤く染め出された面がどのぐらいの割合になるかをパーセントで数値化します。歯周病治療ではこの数値が20%以下になることを目標にブラッシング指導をおこなっていきます。
レントゲン検査
お口全体をうつす「パノラマレントゲン」を撮影し、歯周病による骨の吸収具合を視覚的にとらえるほか、虫歯など他の疾患の有無についても診査していきます。
歯の動揺度
歯周病の進行により骨の吸収が進むと、歯のグラつきがみられるようになります。動揺度の検査ではピンセットで歯の揺れ具合を1本ずつチェックし、以下の分類に照らし合わせながら進行具合を確認していきます。
・0度:ほとんど動かない(正常)
・1度:わずかに揺れがある(初期)
・2度:前後・左右に揺れがある(中等度)
・3度:前後・左右・上下に揺れがある(重度)
噛み合わせのチェック
歯周病の悪化や進行につながる噛み合わせの異常がないかチェックしていきます。
口腔内写真
お口全体の写真を撮影します。口腔内写真には検査の数値ではあらわしにくいお口の状態を記録として残せるメリットがあります。また治療前後の写真を比較することで、治療による歯ぐきの変化を客観的に評価しやすくなります。
細菌検査
歯周ポケット内のプラークや唾液を採取し、そこに含まれる歯周病菌の種類を特定していきます。歯周病を引き起こす原因菌は数十種類に及び、その中には進行が速く、重症化しやすい菌も存在しています。口内に生息する歯周病菌を特定すると、これからどのようなスピードで歯周病が進行するか、治療によりどの程度の改善が見込めるかが予測できるようになります。
診断と治療計画
以上に挙げた検査結果をもとに、歯科医師は現在の歯周病の状況、ならびに今後必要となる治療やその予後について診断していきます。その診断と患者さんの要望やライフスタイルを考慮したうえで、これからどのように治療を進めていくかの計画を立案します。
歯周基本治療後の再評価
立案した治療計画をもとに、歯周病では最初にスケーリングやルートプレーニングをはじめとする歯周基本治療をおこないます。
この基本治療が一通り終わったあと、上記に挙げたのと同じ項目の検査をおこない、治療によってどの程度の病状が改善されたかを評価していきます。
再検査で一定の改善がみられたケースではメンテナンス期に移行し、改善がみられないケースでは次のステップである歯周外科治療を検討していきます。
まとめ
歯周病は歯ぐきの内部で進行する病気であるため、実際に目でみてその状況を確認することは困難です。さらに初期の段階では明確な症状もないため、知らず知らずのうち進行し、気づいた時には深刻な状態にまで至ってしまうことも少なくありません。このようなことにならないためにも、歯科の定期検診を習慣化し、歯周病の早期発見・早期治療に努めていきましょう。
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■他の歯周病治療のコラム:https://teech.jp/column/shishubyochiryo
■歯周病治療の歯科医師インタビュー:https://teech.jp/interview/shishubyochiryo-interview
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【コラム執筆・監修者の紹介】
影向 美樹
歯科医師免許取得後、横浜・京都の歯科医院にて10年ほど歯科医として勤務。現在は歯科分野を中心とした医療系Webライターとして活動中。