【歯周病治療 オーラルケアクリニック青山(東京都港区)院長 佐々木直樹先生】
今回は日本歯周病学会の歯周病認定医で、オーラルケアクリニック青山院長の佐々木直樹先生に歯周病治療について伺いました。
Q.1 先生はなぜ歯科医師になられたのでしょうか?
両親は歯科とは関係ない職業で、父はピアニストで、母はそのマネージメントをしています。
両親からはピアニストになれとも言われず自由に育ててもらい、高校生の時に文系か理系かを選択する際、理系が好きだったので理系に進みました。将来は、漠然とエンジニアか医療関係かなぁと考えていました。
その中で、人と向き合う仕事に就きたいと思い、医療関係の道を選びました。
また、母方の家系に医療関係者がいたので話を聞くことが多かったことと細かい作業が好きだったことも医療関係に進む理由になりました。
Q.2 歯科治療の中でなぜ歯周病治療に深く興味を持つようになったのでしょうか?
基本的には補綴治療(虫歯などを削り、銀歯やセラミックなどの詰め物やかぶせ物で補う治療)・歯内療法(歯の神経の治療)・歯周治療などすべての分野を極めることを目標としていますが、臨床研修を終えて大学院進学を検討していた際に、元々全身疾患と歯周病の関連性に興味があったので、その分野の研究を深めたいと思ったことがきっかけです。
また、恩師の先生から「歯科治療は建築と同じで、家を建てる時に地盤・基礎がしっかりしていないと、どんな綺麗な家、かっこいい家を建てても意味がないんだよ」と指導を受けたことも歯周病を専門にしようと思ったきっかけです。歯科治療で言うと「綺麗な家・かっこいい家」というのが「被せ物・詰め物・義歯・インプラント」であり、「家の地盤・基礎」は「口腔内のプラークコントロールや、被せ物・義歯などを支える歯や骨の状態」だと僕は考えているので、まずは歯の地盤・基礎になる歯周病を専門に学ぶべきだと思いました。
Q.3 歯科医療について、先生が大切にしていることは何でしょうか?
患者さんとのコミュニケーションです。
歯の治療方法は歯科医師によって様々ですが、皆最善を尽くして治療をしているので全て正解なのだと思います。しかし、歯科医師が正解だと思った治療方法でも、患者さんにとっては違ったということがあります。
そういう意見の相違がでてくる原因としては、患者さんとのコミュニケーションが十分ではないからだ思うんです。僕は、患者さんとのコミュニケーションを一番大事にすることで、歯科医師と患者さん両方が正しいと思える治療を行えるようにしています。
また、歯科治療は患者さん自身に「今の状態を治したい」という気持ちになって頂かないと、根本的治療にならないことがあります。意識を変えてもらうには、説明をしっかりするだけではなく、歯に関する情報を共有することも大事だと思っているので、その点も十分に説明をさせていただいています。
Q.4 そもそも歯周病は完治するのでしょうか?
残念ながら完治しないです・・・。
歯周病は大きく分けて歯肉炎と歯周炎があります。歯肉炎は歯茎だけの炎症なので治療すれば元通りになりますが、歯周炎になってしまうと骨を含む歯周組織全体にまで炎症が進んでしまいます。歯周病治療は「その状態から悪くならないように阻止するか、その状態をいかに維持するか」という治療です。つまり、完治というよりは今より悪くならないようにする治療になります。
そのため、歯周治療を終えて炎症の状態が落ち着いた後でも、その状態を維持するようにメインテナンスを行わないと、すぐに再発してしまいます。
Q.5 歯周病治療はどれくらいの期間で改善するでしょうか?
これは非常に難しい質問ですね。
歯周病の状態は、①今までにどれだけ骨が溶けたかの度合い、②今現在歯周病が進行中なのか ③今後どれだけ回復が望めるか(患者さんの年齢・喫煙の有無・糖尿病などの全身疾患)の3つの要素から捉えます。
例えば中等度の歯周病患者さんでも、回復が望めなければ改善しない場合もありますし、重度の患者さんでも回復する可能性が高ければ改善する場合もあります。
それを踏まえた上であえて期間をお伝えすると、歯肉炎から歯周炎の始まりぐらいの症状でしたら、数カ月~半年6ヶ月で改善されますが、中等度になると歯周病の基本的な治療以外に歯周外科治療も必要な場合があるので1〜2年ぐらいかかると思った方がいいですね。
重度になると、歯がグラグラしているので、それを補うための被せ物や義歯を作製する必要があるので、もっと期間がかかります。
Q.6 重度の場合、歯を抜いてインプラントや入れ歯を入れた方が、治療期間・費用面を考慮すると良いような感じがするのですが、それでも自分の歯を残した方が良いでしょうか?
これも難しい質問ですね。
インプラントの場合、骨がなければインプラントを入れられないので、まず歯周病を早めに改善させて、さらなる骨の吸収を抑える必要があります。歯周病を治さないまま進めてしまうとインプラントも歯周病(インプラント周囲炎)になってしまいます。
入れ歯の場合は、歯周病治療を終えていなくても早めに歯を抜いて入れ歯にすることも選択肢にはあります。しかし、Q.2でもお伝えした通り、歯周病治療はプラークコントロールなど歯の地盤・基礎になるので、歯周病治療をしっかり行ってから入れ歯・インプラントにする方が長期に維持できるようになります。
以上のことから、私は、歯周病治療は確実に行ない、歯を残す努力はした方が良いと思います。ただ、全ての患者さんに、というわけではなく、高齢の方や全身疾患がある患者さんなど歯周病改善の可能性が低いと考えられる場合は歯を抜くという選択を説明する場合もあります。もちろん、歯周病の改善が見込める方でしたら、頑張って歯を残しましょうとご説明させていただいています。
Q.7 歯周病にならないための予防が重要だと思うのですが、予防方法はありますか?
患者さんご自身で行うセルフケアと歯医者さんで定期的にメインテナンス・定期検診を行うことです!
歯周病は症状なく気づかないうちに進行してしまう疾患です。
たとえ、何も症状が無くても時々歯医者さんに行って検診を受けた方が良いですね。
また、歯周病は全身疾患とも関係があると言われていて、特に私が研究している糖尿病とは相互的な関係があります。
糖尿病の方は健康な方に比較すると、2~3倍歯周病になりやすいということが分かっています。逆に歯周病の方が糖尿病になりやすいという報告もあります。
その他にも、狭心症・動脈硬化、脳梗塞、低体重児出産、誤嚥性肺炎、骨粗鬆症、メタボリックシンドロームなど、歯周病と関係していると言われている疾患は多くあります。
これらを予防するためにも、歯医者さんで定期的に検診をうけて、歯周病にならないようにすることが重要なのです。
あとは、歯磨きがしやすいお口の中の状態というのは、歯並びが良い状態です。子供の頃から噛み合わせをチェックして、噛み合わせや歯並びが悪くなりそうだったら矯正治療を行うことも、将来的な歯周病予防になるかもしれません。
Q.8 正しい歯磨きを行い、歯間ブラシ、フロスを使用してセルフケアを行っていれば歯周病にならないでしょうか?
セルフケアをうまくやっても、患者さん自身で取れない汚れはあります。その汚れが歯石になります。その歯石にさらに汚れがついて歯周病を悪化させます。そのため、定期的に歯医者さんに行って汚れ・歯石を取ってもらう必要があります。
Q.9 歯周病に困っている患者さんが歯科医院を選ぶときのポイントはありますか?
これも難しい質問ですね(笑)
まずは、認定医・専門医の先生に治療の相談をする、ですかね。
私は自分のベストを尽くして歯科治療に臨んでいますが、自分の治療を過信し始めたらそれ以上成長はできないと考えています。常に「尊敬する先生が横で見ていたらどう思うか」という第三者の目を意識するようにしています。
私は、患者さんの口腔内写真を撮ったり様々な記録を取ることで、いつでも他の先生に見てもらい意見を聞けるようにしています。写真や記録を見せることで、口頭で伝えるよりも確実に状況を把握してもらえます。こうすることで、第三者の目を入れて自分の治療を過信しすぎないようにしています。
究極的なことを言ってしまうと、歯科治療の内容は担当した歯科医師と歯科衛生士と治療を受けた患者さんにしかわかりません。その中で、記録をしっかりと残しているということは、いつでも誰かに見てもらえる状態=自分の治療を過信せずに真摯に歯科治療に向き合っている先生なのではないかと思います。
Q.10 最後に患者さんに向けてメッセージをお願いします
歯周病だけでなく、虫歯も重度になればなるほど治療は大変になります。そうならないためには、早期発見、早期治療が重要です。
軽度の虫歯や軽度の歯周炎(歯肉炎)ならプラークコントロールだけで治るかもしれません。そのためには早い段階で気が付かなければなりません。つまり、歯医者さんに定期的に行って検診を受ける必要があります。たとえ何も症状がなかったとしても、虫歯や歯周病を予防するためにも定期的に歯医者さんに通うことをお勧めします。
そして、気軽に何でも相談できるホームデンティストを持ってほしいと思います。
【オーラルケアクリニック青山 佐々木直樹先生について】
■オーラルケアクリニック青山
東京都港区南青山3丁目15−6 リップルスクエアD 3階
オーラルケアクリニック青山 Teech掲載ページ【オーラルケアクリニック青山】
オーラルケアクリニック青山 医院ホームページ 【オーラルケアクリニック青山 HP】
■佐々木直樹先生の経歴
・昭和大学歯学部 卒業
・東京医科歯科大学総合研究科大学院 歯周病学分野 歯学博士
・オーラルケアクリニック青山 院長
■所属学会・認定医
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会会員
・日本歯科保存学会会員
・日本口腔インプラント学会会員
・東京医科歯科大学総合診療歯科学分野 非常勤講師