【歯周病治療 若林歯科医院(東京都渋谷区恵比寿南)院長 若林健史先生】

多数のテレビCMに出られ、日本歯周病学会理事で歯周病専門医・指導医の若林健史先生に歯周病についてお話を伺いました。
Q1.なぜ歯科医師になられたのでしょうか。
小学校の5年生の時、歯が痛くて三日三晩学校も行かず布団の中で泣いていたのですが、歯医者に行って魔法のように治してもらい、歯医者のすごさを感じたことが歯科医師を目指すきっかけです!よくある親が歯科医師というわけではないんですよ。親は小学校の校長でして全く関係ないんです。ただ、私が大学や研修会で教えたり、講演会で話しすることが好きなのは親の血筋があるのかもしれません(笑)
Q2. 歯科医療において、先生が大切にしていることは何ですか?
私は患者さんから「先生の医院に来て良かった、先生ありがとうございました。」と言って帰っていかれることが嬉しいですし好きです。
歯科治療は『患者さんの為』の歯科医療だと思っているので、自分が自己満足するだけの治療はしません。ですので当院は『for the patient』を1番大切にしています。
Q3. 歯周病になった場合、歯周病治療すれば完治できますか?
完治はしない!完治は絶対しない!!一瞬治ったとしても、気を抜くとまた歯周病になります。(インタビュアーは絶句しました)なので一生歯科医院には通わないといけないです。歯周病は治らない病気だと思った方がいいです。
歯周病になった患者さんの歯周ポケットが3㎜以内になり出血が無くなった状態になり、学術的に完治したと思っても、その状態を維持するのはかなり大変で、メインテナンスのために歯科医院に3〜4カ月に1回通い続け、自宅でのセルフケア(歯磨きなど)も必要になります。
予防歯科学の権威として知られる歯科医師のアクセルソンとリンデのデータによると、歯周病で治療を受けた400人以上を対象に、3か月ごとに歯医医院でメインテナンス・歯のクリーニングをし、自宅でのセルフケア(歯磨きなど)もしたとしても、11%の患者さんは歯周病が悪化することがわかっています。また、歯科医院でメインテナンス・歯のクリーニングを受けずに、セルフケアだけをしていた方は89%の方が悪化します。つまり歯科医院でメインテナンスを受けないと9割が悪化する、歯科医院に行ってメインテナンスを受けたとしても1割が悪化するということがデータに出ています。
つまり、完治することは無いと思って頂いた方が良いと思います。また、良い状態を維持するのも歯科医院と患者さんが共に助け合っていかなければなりません。ただ、患者さんには完治しないとはっきり言いにくいのです・・・・。歯周病は慢性疾患なので本当に大変な病気です。
Q4. 歯周病にならないための予防が重要だと思うのですが、予防方法はありますか?
セルフケア(歯磨き)が大切!それと3・4カ月1回歯科医院に行ってセルフケアで落ちない汚れなどをとってもらうこと(メインテナンス・歯のクリーニング)!
このセルフケアとプロのケアの「両輪」をおこなうことで予防していくことです。
Q5. 昔の歯周病治療と現在の歯周病治療の違いはありますか?
基本的には変わっていません。歯周基本治療と言われているブラッシング、スケーリング、ルートプレーニングで歯周病の約8割は治ります。ただ治らない場合、歯周外科療法をおこないますが、最近ではそこに再生療法が加わり、無くなった骨を再生させるなど、増やす治療ができるようになりました。ただ、どの症例にでも再生療法が適応できるわけではないので注意が必要です。
Q6. 歯科医院・先生によって歯周病の治療方法に違いがありますか?
全然違います。
歯周基本治療を中心とした先生と歯周外科治療を中心とした先生に大きくは分かれます。世界的にも国によって違います。例えばスウェーデンは歯周基本治療を中心としていますが、アメリカは歯周外科治療を中心としています。歯周基本治療を中心とした先生は、歯の見た目より天然の歯を残す治療をする傾向にあります。
一方、歯周外科治療を中心とした先生は審美性を考慮し、状況によってはインプラント治療をしたり、抜歯しブリッジをしたりする治療を選択することが多いです。歯周基本治療を中心に学ぶか、歯周外科治療を中心に学ぶかで診療スタイルの特徴の違いが出てきます。
Q7. 若林先生が発起人となり日本臨床歯周病学会と一緒に提唱されているペリオドンタル・シンドロームとは何でしょうか?
ペリオドンタル・シンドロームとは、歯周病と同時に歯周病に関連するとされる全身疾患がある状態を言い、歯周病関連全身疾患症候群のことです。
全身疾患のスタートの病気が歯周病に起因しているといわれており、歯周病菌が血液を介して体全身に回ることで心筋梗塞・脳梗塞・アルツハイマー病などになりやすくなります。
ペリオドンタル・シンドロームを提唱し患者さんが認知してくれることで、歯周病にならないような意識付けができるのではないかと考えております。
Q8. 歯周病治療の方向性はどのようになっていきますでしょうか?
歯周病はお口の中の1つの病気ではなく、ペリオドンタル・シンドロームにあるように「全身の病の中の1つ」の病気と考えるようになり、医科の中の1つ、という位置づけにしていかないといけない時代だと思っています。
例えば、糖尿病治療をしようとするなら、歯周病の治療も一緒に考えていかないといけないとか、動脈硬化になっている患者さんは、歯周病の治療することで動脈が若返って健康になったりするなど、全身との関わりの中からの歯周病治療を考えていく、「医科歯科連携」の方向に向かっていくと思っています。そういった意味では、医学部の中の専門で私は歯学やっています、という感じになっていくのが今後の流れになるのがいいのではないかと思っています。イメージとしては医学の中に内科・外科・歯科があるというとわかりやすいですかね。そうは言っても、削って、詰めて、被せて、咬み合わせまでを考える技術を習得する、となるとなかなか医科の中で歯科を習得できるか?というと難しいかもしれませんが・・・。ただ、歯科の中での歯周病は全身疾患にかかわってくるので特に医科との関わりが大きくなるとは思っております。
Q9.歯周病に困っている患者さんが歯科医院を選ぶときのポイントはありますか?
歯周病関連の学会の歯周病認定医・専門医の先生がいる歯科医院にまずは行くのが良いのではないのでしょうか。
例えば専門医になるには、歯周病治療10症例の資料提出が必要です。治療に関しては歯周病学会が設けている厳しい基準をクリアしなければならず、合格するにはかなり厳しい基準を設けています。近くという理由だけで歯科医院選びをするより、歯周病認定医・専門医の先生がいる歯科医院に行かれた方が、良い治療が受けられるのではないかと思っております。
Q10. 最後に患者さんに向けてメッセージをお願いします
患者さんはお口の中の病気はよほど何かないと歯医者に行かないと思います。特に痛みが出る虫歯と違い歯周病は自覚がないケースが多いので、なおさら歯科医院に行かないと思います。
自分で問題ないと思っていても、だいたい歯に関して何かしらの問題があることが多いと思います。そういった理由から「まず歯医者さんに一度行ってみてください」ということをお伝えしたいです。人間ドック・健康診断も健康だから行かないという方は少ないと思います。歯医者も同じです。定期的に歯医者に行き、細かくチェックしてもらうことから始められてもいいかと思います。それにより早期発見・早期治療ができるので、痛みも少なく、重度にならず、患者さんにとっていいことだと思います。特に歯科の場合、自覚症状がなくても症状が進んでいることがあり、痛くなって歯科に行くと軽度ではないことが多いです。そのために定期的に歯医者さんに行くことをおすすめします。そして歯のクリーニングをすることで歯の寿命は延びると思います。うまく歯医者さんを利用してほしいなぁと思っております。
【若林歯科医院 若林健史先生について】
■若林歯科医院
〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2丁目5−1
若林歯科医院 Teech掲載ページ 【https://teech.jp/hospital/3643】
若林歯科医院 医院ホームページ 【https://wdental.jp/】
■略歴
1982年:日本大学松戸歯学部 卒業
同年 :東京都練馬区若林歯科医院勤務
1989年:東京都渋谷区代官山にて開業
2014年:代官山から恵比寿南に移転
■所属学会・理事・専門医
日本歯周病学会理事
日本歯周病学会専門医・指導医
日本臨床歯周病学会認定医・指導医
日本大学客員教授
■その他
グラクソ・スミスクラインのポリデント、シュミテクト、ポリグリップ、などのテレビCMに歯科医師として出演。
院長をつとめる歯周病専門医若林歯科医院(東京:恵比寿)は、日本歯周病学会及び日本臨床歯周病学会の指定研修施設でもある。