大人の受け口は矯正で対応できる?手術の必要性と費用・治療法を解説

大人の受け口は矯正で対応できる?手術の必要性と費用・治療法を解説

小さい頃から受け口が気になっていて、大人になってから矯正を考え始めた方もいるのではないでしょうか。一方で、調べるうちに外科手術という言葉を目にして、そこで迷っている方もいます。

受け口は、噛んだときに下の前歯が上の前歯より前に出ている状態です。手術を併用するかどうかは、前歯の傾きや位置が主な要因なのか、上下のあごの大きさや位置のバランスが要因なのかによって変わります。同じように受け口に見えても、要因が違えば選択できる治療法は同じではありません。

この記事では、手術の要否が分かれる基準、そのままにした場合に起こりやすい影響、治療法ごとの費用と期間の目安、公的医療保険が適用される場合の条件、治療前に知っておきたい注意点を順に整理します。なお、受け口の矯正は、保険が適用される条件に当てはまる場合を除いて自由診療です。費用は歯並びの状態や治療計画、装置の種類、医院の方針によって異なります。

大人の受け口矯正、手術なしで対応できるケースと手術を併用するケース

まず、手術を併用するかどうかが何によって分かれるのかを整理します。手術の要否は、受け口の要因や噛み合わせの状態をもとに判断されます。

前歯の傾きや位置が主な要因なら矯正装置での対応を検討できる

日本矯正歯科学会によると、受け口(反対咬合)は下の歯が上の歯より前に出ている噛み合わせを指します。前歯の傾きや生えている位置が主な要因になっている場合、矯正装置で上下の前歯を動かし、噛み合わせを整える方法が選択肢のひとつです。歯を動かすスペースが足りないときは、抜歯や歯科矯正用アンカースクリューを併用する計画が立てられることもあります。

ただし、矯正装置で動かせるのは歯とその周囲で、あごの骨の位置そのものを変える治療ではありません。前歯の傾きが主な要因であれば、その範囲で歯を動かして噛み合わせを整えられる場合があり、手術を併用せずに進められることもあります。

どこまで歯を動かせるのか、装置だけで対応できるのかは、口の中の状態やあごの骨の位置関係によって変わります。自分で判断せず、検査を受けたうえで歯科医師と相談しましょう。

上下のあごのバランスが要因の場合は外科手術を併用する治療も検討される

日本口腔外科学会は、下顎前突について、下あごの骨が大きく発達したために、噛み合わせたときに下の前歯が上の前歯より前方にある状態と説明しています。上下のあごの大きさや形、位置のバランスの異常によって、顔の変形と噛み合わせの異常が生じている状態が顎変形症です。札幌医科大学によると、日本人の顎変形症では、上顎骨に比べて下顎骨が大きい下顎前突症が全体の約7割を占めるとされています。

日本臨床矯正歯科医会は、矯正歯科医が矯正歯科治療だけでの改善が難しいと判断した場合に、外科的矯正治療の適応となると説明しています。あごの骨の位置は歯を動かす治療では変えられないため、骨格的な要因が大きいときには、手術であごの骨の位置を整えたうえで噛み合わせを仕上げる方法が選択肢です。

手術と聞くと顔に傷が残ることを心配される方もいますが、日本口腔外科学会は、手術は口の中の切開によって行われるため、顔に傷がつくことはないとしています。どの方法が適しているかは、入院や術後の通院も含めた見通しとあわせて、検査と診断を経て判断されます。

どちらに当てはまるかは精密検査で判断される

受け口の要因は、鏡で見た印象や家族の歯並びからは判断できません。日本矯正歯科学会は、矯正歯科治療の前に行う検査として、次の項目を挙げています。

・問診
・口の中の診査
・レントゲン写真(頭部X線規格写真、パノラマX線写真など)
・顔と口の写真
・歯型

このうち頭部X線規格写真は、セファログラムやセファロとも呼ばれます。決められた条件で頭部を撮影し、上下のあごの前後的な位置関係や前歯の傾きを確認する検査です。歯の傾きが主な要因なのか、あごの骨のバランスが関わっているのかは、こうした検査の結果をもとに診断されます。

大人の受け口では、あごの成長を利用して噛み合わせを整える小児期の治療とは考え方が異なります。あごの成長がどこまで進んでいるかも含め、現在の歯とあごの状態をもとに治療計画が立てられるため、まずは検査で要因を確認することが大切です。お子様の受け口については、相談や治療を始める時期の考え方が異なるため、下記の記事をご参照ください。

▶子どもの受け口はいつ治療する?早めに相談したいケース

大人の受け口をそのままにすると起こりやすい影響

受け口は見た目の悩みとして受け止められやすい一方で、噛む・話すといった働きにも関わります。ここでは、その状態が続いた場合に起こりやすい影響を整理します。

奥歯に負担が集中し、歯を失うリスクにつながることがある

上下の前歯が逆に噛み合っていると、前歯で食べ物を噛み切る動きがしにくくなります。そのぶん、奥歯で噛み砕く負担が大きくなりやすい状態です。日本臨床矯正歯科医会は、不正咬合では歯ブラシが届きにくいことに加え、食事や睡眠中の歯ぎしりなどで一部の歯に過剰な力や横揺れの力がかかるため、むし歯や歯周病の進行を助長すると説明しています。

同会は、8020達成者(80歳で20本以上の歯が残っている方)を対象とした咬合調査で、反対咬合や開咬の方はみられなかったとする報告も紹介しています。ただし、この調査だけで受け口が歯を失う原因と決まるわけではありません。歯にかかる力の偏りやむし歯・歯周病の進行を通じて、噛み合わせの状態が歯の残り方に関わると考えられています。

日本臨床矯正歯科医会によれば、中高年になってからでも矯正歯科治療は可能です。一方で、状態が長く続くと、むし歯や歯周病の治療、失った歯を補う治療が重なり、治療計画が複雑になることもあります。

食べにくさや話しにくさとして現れることもある

札幌医科大学は、顎変形症では、咀嚼障害や発音障害、審美障害を訴える方が多いとしています。前歯で噛み切る動きが使いにくいため、麺類や薄い葉物が食べにくいと感じる場面もあるでしょう。

発音については、日本矯正歯科学会が、受け口では聞き取りにくい話し方になりやすいと説明しています。ただし、どの音がどの程度発音しにくいかは人によって異なり、日常生活では気にならないという方もいます。

食べにくさや話しにくさは、長く続くほど本人にとって当たり前の状態になり、困りごととして自覚されにくくなる部分です。噛み切りにくい食品を避けている、人前で話すときに言いにくい言葉があるといった心当たりがあれば、検査のときに伝えておきましょう。

あごの関節への負担と顎関節症との関係

日本矯正歯科学会は、歯並びの乱れによって起こり得ることのひとつに、あごの関節に負担をかける点を挙げています。噛み合わせが上下で逆になっていると、噛むときの力のかかり方が偏りやすくなります。

一方で、あごの痛みや音が出る背景は、噛み合わせだけでは説明できません。日本顎関節学会は、顎関節症を、顎関節や咀嚼筋の痛み、顎関節雑音、開口障害、顎運動異常を主要症候とする病名としたうえで、痛みには身体的な傷害だけでなく心理的・社会的な因子も強く関連すると説明しています。受け口だから顎関節症になる、という関係ではありません。

あごが痛む、口が開けにくい、動かすと音がするといった症状が続く場合は、受け口の相談とは別に、歯科医院で状態を確認してもらいましょう。

大人の受け口矯正で検討される治療法と費用・期間の目安

ここでは、大人の受け口で検討される主な治療法を、特徴と費用・期間の目安とあわせて整理します。どの方法を選べるかは、受け口の要因や噛み合わせの状態によって変わります。

目立ちにくさが気になる場合に検討されるマウスピース型矯正装置

マウスピース型矯正装置は、透明な装置を段階的に交換しながら歯を動かす方法です。インビザラインは、この装置のブランド名のひとつとして知られています。装置は自分で取り外せますが、装着時間を確保する必要があるため、取り外しの可否や時間については歯科医師の指示に従うことが大切です。

日本矯正歯科学会は、マウスピース型矯正装置による治療について、歯の移動量が少ない症例が対象で、骨格的な要因を含む症例には適さないという見解を示しています。受け口でも、前歯の傾きが主な要因で移動量が少ないケースでは選択肢に入りますが、あごの骨のバランスが関わるケースでは別の方法が検討されます。適応にあたるかどうかは、検査と診断をもとにした個別の判断です。

インビザラインなどのマウスピース型矯正装置(カスタムメイドの矯正装置)は、日本の薬機法における医療機器としての承認を得ていない「未承認医療機器」に該当するため、万が一重篤な健康被害が生じた場合でも、国の「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となる場合があります。使用にあたっては、装置の特徴やリスクについて歯科医師から十分な説明を受け、理解したうえで進めることが大切です。

マウスピース型矯正装置で受け口に対応できるケースについては、下記の記事をご参照ください。

▶インビザラインで受け口に対応できる?適応しやすいケースと注意点を解説

幅広い症例で使われるワイヤー矯正(表側・裏側)

ワイヤー矯正は、歯1本ずつにブラケットと呼ばれる装置を接着し、ワイヤーを通して歯を動かす方法です。日本歯科医師会は、固定式の代表的な装置としてマルチブラケット装置を挙げ、透明なプラスチックやセラミック製のブラケットもよく使われると説明しています。取り外しができないため、装着時間を自分で管理する必要はありません。

装置を歯の表側に付ける方法と、裏側(舌側)に付ける方法があります。裏側に付ける方法は、装置が見えにくいのが特徴です。動かす範囲が広い症例や、外科手術を併用する治療の術前・術後の矯正でも使われる方法です。

装置の周りは汚れが残りやすいため、日本歯科医師会は、清掃指導や食習慣の指導を受けて口の中を清潔に保つことが大切だとしています。装置を初めて入れたときや調整の後に、歯が浮いたような感じや痛みが出る場合もあり、同会は通常2日程度で治まる方が多いと説明しています。硬い食品や粘着性のある食品は装置を壊す原因になるため、食事で気をつける点も治療前に聞いておきたい部分です。

骨格的な要因が大きい場合の外科的矯正治療

外科的矯正治療は、顎変形症と診断された場合に、あごの骨の位置を手術で整えたうえで噛み合わせを仕上げる方法です。日本臨床矯正歯科医会は、治療の流れを次のように示しています。

・診察、検査、診断と治療計画の立案
・術前矯正治療(約1年半)
・入院と顎矯正手術(1〜2週間)
・術後矯正治療(約1年)
・保定観察(約2年)

札幌医科大学も、全体では約2〜3年程度を要すると説明しています。手術そのものよりも、その前後の矯正治療に時間がかかる点が、歯を動かすだけの治療との違いです。

手術後の経過について、札幌医科大学は、下唇やあごの先(オトガイ部)の皮膚に知覚の異常が出ることがあり、数週間から数か月で改善すると説明しています。腫れは術後2〜3日目がピークで1〜2週間で軽くなるとされ、腫れた感じが数か月続く場合もあります。回復の経過には個人差があるため、入院の期間や仕事を休む見通しも含めて、事前に確認しておきましょう。

顎変形症と診断され、条件を満たす場合に公的医療保険が適用される点は、次の章で整理します。

【比較表】治療法ごとの費用相場・治療期間の目安

ここまでの3つの方法を、主に検討される状態と費用・期間の目安で並べます。

<大人の受け口で検討される主な治療法の比較>

治療法 主に検討される状態 費用の目安 治療期間の目安
マウスピース型矯正装置 前歯の傾きが主な要因で、歯を動かす量が少ない場合 80万〜120万円程度 1〜3年程度
ワイヤー矯正 動かす範囲が広い場合や、細かく歯を動かす場合 60万〜150万円程度 1〜3年程度
外科的矯正治療 顎変形症と診断され、あごの骨の位置が要因の場合 40万〜70万円程度 全体で約2〜3年程度

治療期間は、日本歯科医師会が示す成人の矯正歯科治療の目安です。ワイヤー矯正には装置を歯の表側に付ける方法と裏側に付ける方法があり、どちらを選ぶかによって費用は変わります。外科的矯正治療の金額は、保険が適用される場合の自己負担(3割)の概算です。

表の内容は目安であり、実際にどの方法を選べるか、費用や期間がどのくらいになるかは、検査・診断の結果と医院の方針によって異なります。日本歯科医師会も、矯正歯科治療の費用は医療機関、治療方法、期間、地域によって異なると説明しています。

受け口の矯正は、保険が適用される条件に当てはまる場合を除き、原則として公的医療保険が適用されない自由診療(保険適用外)です。費用や治療期間、通院回数は、歯並びの状態や治療計画、装置の種類、医院の方針によって異なります。リスク・副作用として、装置装着に伴う痛みや違和感、清掃が不十分な場合のむし歯や歯周病、歯が計画どおりに動かない可能性、治療後の後戻りなどが挙げられます。外科手術を併用する場合には、手術に伴う腫れや知覚の異常も、事前に説明を受けておきたい内容です。治療を検討する際は、費用の内訳や治療期間、通院回数、これらのリスクについて十分な説明を受け、確認しておきましょう。

費用に幅が出る理由や内訳については、下記の記事をご参照ください。

▶矯正歯科治療が高額な理由と費用の内訳を解説

大人の受け口矯正で公的医療保険が適用される場合

矯正治療は全額が自己負担になると考えている方もいますが、条件に当てはまる場合には公的医療保険が適用されます。ここでは、その条件と確認先を整理します。

顎変形症と診断され、外科手術を併用する場合が対象になる

日本矯正歯科学会は、保険診療の対象となる矯正歯科治療として、次の3つを挙げています。

・厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常
・前歯と小臼歯の永久歯3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯の開窓手術を必要とする場合)
・顎変形症(顎離断などの手術を必要とするものに限る)の手術前後の矯正歯科治療

大人の受け口に関わるのは、主に3つ目の顎変形症です。あごの手術を必要とする程度の噛み合わせの異常と診断され、手術と組み合わせて矯正歯科治療を行う場合が対象になります。噛み合わせや見た目が気になるという理由だけで、矯正歯科治療のみを受ける場合は対象になりません。

日本臨床矯正歯科医会は、保険が適用される条件として次の3点を挙げています。

・顎変形症と診断され、矯正歯科治療と併用して外科手術を行うこと
・「顎口腔機能診断施設」の指定を受けた医療施設で矯正歯科治療を行うこと
・矯正歯科治療と外科手術のいずれも健康保険の適用範囲内で行い、混合診療をしないこと

保険診療を受けられるのは施設基準の届出をした医療機関

保険が適用される矯正歯科治療は、どの歯科医院でも受けられるわけではありません。日本矯正歯科学会は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合していると届け出た保険医療機関だけが対象になると説明しています。名簿には、厚生労働大臣が定める疾患などに対応する「矯診」と、顎変形症の手術前後の矯正歯科治療に対応する「顎診」の区分があります。

受け口で外科手術を併用する治療に関わる区分が「顎診」です。同学会によると、届出をしている医療機関の名簿は、地方厚生局のホームページに最新の情報が掲載されています。保険診療を希望する場合は、相談する段階で、その医院が保険適用の矯正歯科治療に対応しているかを確認しましょう。

また、保険診療では、矯正歯科治療も手術も健康保険の適用範囲内で行うため、使用できる装置や材料も保険で認められたものに限られます。目立ちにくい装置を希望する場合に、保険診療の中でどこまで選べるのかは、相談の際に確認しておきたい点です。

なお、自立支援医療は別の制度です。日本臨床矯正歯科医会は、唇顎口蓋裂に起因した音声・言語・そしゃく機能障害の改善に関する医療が対象で、認可を受けた医療機関で1割負担になると説明しています。顎変形症の外科的矯正治療とは対象が異なるため、自分が当てはまるかどうかは、歯科医院や自治体の窓口で確認しましょう。

保険が適用される場合の自己負担と確認先

日本臨床矯正歯科医会は、保険が適用される顎変形症の治療について、自己負担は3割で、概算の費用は40万〜70万円程度としています。ただし、実際の負担額は、治療の内容や入院の期間、医療機関によって異なる点に注意が必要です。保険診療であっても、術前矯正から手術、術後矯正、保定観察まで数年にわたって通院が続き、装置による痛みや違和感、むし歯や歯周病、治療後の後戻りといったリスク・副作用については、自由診療の場合と変わりません。入院や手術で医療費が高額になる場合は、高額療養費制度の対象になることもあります。

厚生労働省によると、高額療養費制度では、1か月に支払う医療費の自己負担額に上限が設けられ、上限額は年齢や所得に応じて決まります。制度の内容や手続きの確認先は、加入している公的医療保険の窓口です。保険が適用されるかどうか、自己負担がどのくらいになるかは、診断を受けたうえで、歯科医院と加入先の窓口に確認しておきましょう。

大人の受け口矯正を始める前に知っておきたい注意点

治療が終わってから「思っていたのと違う」とならないために、事前に理解しておきたい点があります。ここでは、見た目の変化、治療後の保定、抜歯の3つの観点で整理します。

あごの骨の形そのものは歯を動かす治療では変わらない

歯列矯正は、歯とその周囲の骨に力をかけて歯を動かす治療です。あごの骨の大きさや位置そのものを変える治療ではないため、骨格的な要因が大きい場合には、歯並びが整っても横顔の見え方が想像と異なることもあります。日本矯正歯科学会も、顎変形症について、矯正歯科治療のみで安定した噛み合わせにするのは非常に困難だという見解です。

横顔の見え方をどこまで変えたいのかは、人によって違います。治療前に、噛み合わせをどこまで整えるのか、見た目にはどの程度の変化が見込まれるのかを歯科医師に確認し、治療計画のうえで共有しておきましょう。

治療後は保定装置(リテーナー)の使用が欠かせない

矯正装置を外した直後の歯は、まだ元の位置に戻ろうとする状態です。日本矯正歯科学会は、保定装置を使用しなければ、もとの不正咬合に戻ると説明しています。日本歯科医師会も、装置を外した後、数年の間は保定装置などで管理する必要があるとしています。

保定期間中は、決められた時間の使用を続けることが大切です。装置が合わない、入りにくいと感じたときは、自分の判断で使用をやめず、歯科医院へ相談しましょう。

日本歯科医師会は、矯正歯科治療の経験にかかわらず、加齢による変化や歯周病によって歯並びや噛み合わせは変わり続けるとしています。治療が終わった後も、定期的な受診を続けながら状態を確認することが大切です。

抜歯が必要になる場合と、抜かずに進められる場合がある

歯を並べるスペースが足りるかどうかは、歯の大きさとあごの骨の大きさの関係で決まります。日本臨床矯正歯科医会は、歯槽骨の大きさを無視して歯列を広げると、将来的に歯ぐきが下がりやすい、歯周病が進行しやすいといった問題が起こる可能性を示しています。

日本歯科医師会によれば、抜かずに治療する場合は、歯列の幅を広げたり奥歯を後ろへ移動させたりしてスペースを作る方法です。ただし、あごの大きさによって得られる量には限りがあり、限界を超えると後戻りなどの弊害が起こることがあるとしています。どの歯をどれだけ動かすか、抜歯を伴うかどうかについては、模型やレントゲンをもとにした総合的な診断が必要です。

日本臨床矯正歯科医会は、歯を抜くかどうかは矯正治療の手段のひとつであって目的ではないとしています。抜歯を避けたい気持ちがある場合も、その希望を伝えたうえで、抜く場合と抜かない場合で見通しがどう変わるのかを説明してもらいましょう。

受け口の矯正を相談する歯科医院を選ぶときの確認ポイント

受け口の治療方針は、要因の見極めによって変わります。ここでは、相談先を決めるときに確認しておきたい点を整理します。

どのような検査を行い、結果をもとに説明してくれるか

受け口では、前歯の傾きとあごの骨の位置関係の両方を確認したうえで、治療方針が決まります。頭部X線規格写真などの検査を行っているか、その結果をどう説明してもらえるかは、相談の段階で確認できる点です。状態によっては、CTなどの検査が加わることもあります。

検査の前に治療法だけを示された場合は、何をもとにその判断になるのかを尋ねてみましょう。

複数の治療方法を示し、それぞれの違いを説明してくれるか

マウスピース型矯正装置、ワイヤー矯正、外科的矯正治療は、対応できる範囲も体への負担も異なります。ひとつの方法を前提にした説明だけでは、自分の受け口にとって何が適しているのかを比べられません。

それぞれの方法で治療期間や費用、通院の負担がどう変わるのかまで説明があるかを確認しましょう。日本歯科医師会は、複数の医療機関に相談してセカンドオピニオンを求めてもよいとしています。

費用・期間・リスクまで説明があるか

費用については、総額だけでなく内訳の説明があるかどうかが確認したい点です。検査料、装置の費用、調整のたびにかかる費用、保定装置の費用が総額に含まれるのか、別にかかるのかは医院によって異なります。追加の費用が発生する場合の条件も、あわせて確認したい内容です。

期間と通院についても確認が必要です。日本歯科医師会は、歯を動かしている間は装置の調節のために1か月に1回程度の通院になり、治療後もしばらくは数か月ごとに通って噛み合わせを管理してもらう必要があるとしています。仕事の予定と照らして続けられるかどうかは、治療を始める前に見ておきたい部分です。

リスク・副作用の説明も、判断の材料になります。痛みや違和感、むし歯や歯周病のリスク、計画どおりに歯が動かない可能性、治療後の後戻りについて説明があるか、マウスピース型矯正装置を用いる場合は未承認医療機器に該当する点まで説明があるかを確認しましょう。

まとめ|大人の受け口は、まず検査で要因を確認することから

大人の受け口で手術を併用するかどうかは、要因によって分かれます。前歯の傾きや位置が主な要因であれば、矯正装置で歯を動かして噛み合わせを整える方法を検討できます。上下のあごの大きさや位置のバランスが要因で顎変形症と診断された場合の選択肢が、外科手術を併用する治療です。どちらに当てはまるのかは、見た目では判断できません。頭部X線規格写真などの検査を受けて、要因を確認することから始まります。

治療法は、マウスピース型矯正装置、ワイヤー矯正、外科的矯正治療のいずれかに限られるものではなく、組み合わせて計画されることもあります。受け口の矯正は、保険が適用される条件に当てはまる場合を除き、原則として公的医療保険が適用されない自由診療(保険適用外)です。顎変形症と診断されて外科手術を併用する場合は、施設基準の届出をした医療機関で保険診療を受けられることもあります。費用や治療期間、通院回数は、歯並びの状態や治療計画、装置の種類、医院の方針によって異なる点にも注意が必要です。リスク・副作用として、装置装着に伴う痛みや違和感、清掃が不十分な場合のむし歯や歯周病、歯が計画どおりに動かない可能性、治療後の後戻りなどが挙げられます。

治療後は保定装置の使用が続き、通院も定期的に必要になります。始める前に、検査の内容、選べる治療法、費用の内訳、期間、リスクについて説明を受け、納得したうえで進めましょう。ひとつの医院の説明だけで決めかねるときは、複数の医院で相談し、説明を聞き比べたうえで判断する方法もあります。

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