子どもの受け口はいつ治療する?早めに相談したいケース

子どもの受け口はいつ治療する?早めに相談したいケース

お子様の下の前歯が、上の前歯より前に出ている。3歳児健診で噛み合わせを指摘された。そんなとき、「いつから治療できる?」「今すぐ受診した方がいいのかな…」と迷う保護者の方もいるのではないでしょうか。

受け口は、歯の傾きやあごの骨格、舌や唇の癖など、複数の原因が関わって起こります。原因によって治療を始めやすい時期や方法が変わるため、何歳になったら治療する、と年齢だけで決めることはできません。一方で、年齢を待たずに早めに相談しておきたいケースもあります。

この記事では、お子様の受け口の治療時期の目安、早めに相談したいサイン、原因別の考え方と主な対応、家庭で避けたい対応までを順に整理します。噛み合わせの現れ方や成長には個人差があるため、気になる様子があるときは、小児歯科や矯正歯科で相談しながら進めましょう。

お子様の受け口は「何歳から」だけでは判断できない

まず、受け口とはどのような状態か、なぜ年齢だけで治療時期を決められないのかを整理します。

受け口とは上下の前歯が逆に噛んでいる状態

通常の噛み合わせでは、奥歯で噛んだときに上の前歯が下の前歯より少し外側に重なります。日本小児歯科学会によると、受け口(反対咬合)は、噛み合わせたときに下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態です。

同じ受け口に見えても、背景はお子様ごとに異なります。前歯の傾きが原因のこともあれば、上下のあごの大きさや位置の差、舌や唇の使い方の癖が関わっていることもあり、その組み合わせによって治療の時期と方法の考え方が変わります。

乳歯の受け口でも一度相談しておきたい理由

乳歯の受け口は、永久歯への生え変わりの時期に自然に治ることもあるとされています。一方で、日本小児歯科学会は、遺伝的要因があると自然には治りにくいと説明しています。自然に整うタイプかどうかは、見た目だけでは判断できません。

相談しておきたい理由は、この原因の見極めにあります。あごの大きさの問題なのか、歯の傾きが原因なのかは、4~5歳頃になると精密な検査で確認できるとされ、同学会はそれ以前でも定期的に小児歯科専門医を受診し、診査してもらうことが大切だとしています。

相談時期と治療開始時期は同じではない

歯科医院に相談すると、その日から装置を使った治療が始まる、というわけではありません。日本臨床矯正歯科医会は、後からでも改善できることはあまり早くから介入しないことを原則とし、そのままにすると成長に悪影響が及ぶ問題がある場合に早期の治療を検討する考え方を示しています。

早めの相談は、治療をすぐ始めるためではなく、成長や生え変わりを定期的に確認し、開始に適した時期を逃さないための体制づくりにつながります。相談の結果、まずは経過観察となった場合も、焦らず定期的な確認を続けましょう。

お子様の受け口はいつ治療を始める?

ここでは、年齢帯ごとに何を確認できるかという視点で、治療時期の目安を整理します。実際の開始時期は、お子様一人ひとりの状態を見極めたうえで個別に判断されます。

3~5歳頃は乳歯の噛み合わせを確認する時期

乳歯は3歳頃までに生えそろい、噛み合わせを確認できるようになります。市町村が実施する3歳児健診は母子保健法に基づく健診で、歯や口の異常の有無も確認の対象です。日本小児歯科学会の判定基準では、前歯部で連続した3本以上の歯が逆に噛み合っている状態を「反対咬合」としています。

この時期は、治療を急ぐというより、状態の把握と定期的な観察を始める時期です。まずは健診や歯科医院で、噛み合わせの状態を確認してもらいましょう。

6~8歳頃は永久歯への生え変わりが判断材料になる

6歳前後から、前歯は永久歯へ生え変わります。永久歯の前歯の向きや位置を実際に確認できるため、噛み合わせの判断材料が増える時期です。日本臨床矯正歯科医会は、矯正装置で上下の前歯を動かして正しい噛み合わせに整える治療について、成長の早い時期(6~8歳)に開始するのが望ましいとしています。

ただし、この目安がすべての受け口に当てはまるわけではありません。あごの骨格が関わる場合は、成長を見ながらの管理が中心になります。生え変わりの進み方には個人差があるため、この時期は定期的な受診で状況を歯科医師と共有しましょう。

小学校高学年以降は下あごの成長にも注意する

日本矯正歯科学会によると、あごの大きさに問題がある場合、噛み合わせはあごの骨の成長によって変化します。小学校高学年以降は永久歯列への移行が進む時期で、骨格が関わる受け口では、前歯の噛み合わせだけでなく、下あごの成長の程度もあわせて確認したい段階です。

日本臨床矯正歯科医会は、骨の大きさに問題がある場合の対応として、成長期間中に上下のあごの成長を管理し、成長の終了後に最終的な噛み合わせを整える流れを示しています。受け口の程度が変わったように感じたときは、次の定期受診を待たずに歯科医師へ伝えましょう。

年齢を待たず、早めに相談したい受け口のサイン

次のような様子がみられるときは、年齢の目安にかかわらず、一度歯科医院で状態を確認してもらいましょう。当てはまる様子があっても、その場で受け口と決まるわけではなく、あくまで相談を検討する目安です。

前歯の逆の噛み合わせが続いている

奥歯でしっかり噛んだときに、下の前歯が上の前歯より前に出ている状態が続いているかどうかは、最初に確認したいポイントです。遊びで下あごを前に出しているだけの場合もあるため、食事中など、自然に噛んでいる場面で確認しましょう。

逆の噛み合わせが数か月にわたって続いている場合は、自然に整うタイプかどうかの見極めも含めて、歯科医院で相談する段階です。

噛むときに下あごが前や左右にずれる

食事の様子を見ていて、噛み込むときに下あごをいったん前に出す、左右にずらすといった動きに気づくことがあります。あごの動きと歯の当たり方の関係は、家庭で見分けるのが難しい部分です。

日本小児歯科学会は、口呼吸や頬杖、うつ伏せ寝といった癖が歯並びや噛み合わせに影響を及ぼすことがわかってきていると説明しています。あごの動きのずれが癖によるものか、噛み合わせによるものかも含めて、受診の際に食事の様子を伝えて確認してもらいましょう。

顔やあごの左右差が見られる

正面から見たときに、あごの先が左右どちらかにずれている、笑ったときの口元の高さが左右で違うといった左右差も、相談を検討する目安のひとつです。日本歯科医師会によると、頬杖やうつ伏せ寝などの姿勢の癖は、顔の左右差につながる可能性が示唆されています。

顔立ちには成長による個人差もあるため、左右差がある=噛み合わせの異常と決まるわけではありません。時間がたっても差が続く場合や、以前より目立つと感じる場合に、歯科医院で確認してもらいましょう。

食べ方や発音に気になる様子がある

小児科と小児歯科の保健検討委員会は、噛み合わせの異常により、舌の癖や口呼吸、構音障害(発音の乱れ)が起こりやすいとしています。前歯で食べ物を噛み切りにくそうにしている、特定の音が舌足らずに聞こえるといった様子は、噛み合わせと関わっている場合があります。

発音の発達には個人差が大きく、年齢によっては聞き取りにくい音があるのも自然な段階です。食べ方や話し方だけで受け口と判断することはできないため、気になる様子はそのまま歯科医師や健診の相談窓口に伝えましょう。

家族に受け口や下顎前突の人がいる

日本小児歯科学会によると、反対の噛み合わせは遺伝的要因があると自然には治りにくいとされています。家族に受け口や下顎前突(下あごが前に出た骨格)の人がいる場合、あごの骨格の特徴が関係している可能性を考えて、早めに状態を確認しておきたいケースです。

家族に受け口の人がいるからといって、お子様も受け口になると決まっているわけではありません。その場合も、定期的な診査で成長を見守るのが基本です。

受け口の治療時期は原因によって変わる

受け口とひとことでいっても、原因はひとつではありません。ここでは代表的な原因を4つに分けて、治療時期の考え方との関係を整理します。

歯の傾きや生える位置が原因の受け口

上の前歯が内側に傾いている、下の前歯が外側に傾いているなど、前歯の傾きや生える位置が主な原因となっているタイプです。あごの骨格のバランスに大きな問題がなければ、装置で前歯の向きを整える治療が比較的早い時期から検討されることがあります。

前歯の傾きだけが原因かどうかは、見た目では判断できません。骨格の問題が隠れていないかも含めて、検査で確認されます。

上下のあごの大きさや位置が原因の受け口

下あごが大きい、上あごの成長が十分でないなど、あごの骨格にずれの原因があるタイプです。骨格が関わる受け口は、あごの骨の成長とともに状態が変化するため、治療は成長を見ながら段階的に計画されます。

成長が続くあいだは経過の確認と管理が続き、最終的な治療は成長の終了後になる場合もあります。骨格のずれの程度によって対応の幅が大きく変わるため、早い段階で原因を確認しておきたいタイプです。

舌や唇の使い方、噛み方が関係する受け口

舌が低い位置にある状態(低位舌)や下あごを前に出す癖などが、反対咬合を悪化させる要因になる場合があります。舌で下の前歯を押す、下あごを前に出して噛むといった、毎日の口の使い方が関わるタイプです。

こうしたタイプでは、装置による治療だけでなく、舌や唇、頬の筋肉の使い方を整えるトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)が取り入れられることもあります。癖が残ったままだと治療がうまく進まない要因になるとされているため、癖への対応は治療時期の判断にも関わります。

複数の原因が重なっている受け口

実際には、歯の傾きとあごの骨格、筋肉の癖が重なって受け口になっている場合もあります。日本小児歯科学会は、治療がうまくいかない要因のひとつとして、口腔習癖や口呼吸など口腔機能に不正咬合の原因がある場合を挙げています。目に見える歯並びだけを整えても、背景の原因が残ることがあるためです。

どの原因がどの程度関わっているかは検査をとおして確認され、その組み合わせによって優先する対応と時期が変わります。治療時期は自己判断で決めず、診断をふまえて歯科医師と相談しながら計画しましょう。

お子様の受け口に行われる主な対応

ここでは、受け口のお子様に対して歯科医院で検討される主な対応を紹介します。どの対応が適しているかは原因・年齢・状態によって異なり、検査・診断をふまえた歯科医師の判断が前提です。

すぐに治療せず成長や生え変わりを観察する

受け口の対応は、装置を使うことだけではありません。成長や生え変わりの経過を定期的に確認しながら、治療を始めるかどうか、いつ始めるかを見極める経過観察も対応のひとつです。

経過観察は、何もしない期間ではありません。生え変わりの進み方やあごの成長を記録し、状態の変化に合わせて計画を立て直すための期間です。受診の間隔は状態によって異なるため、指示された頻度を守って通いましょう。

取り外し式の装置で噛み合わせを整える

乳歯期から生え変わりの時期には、取り外しできるマウスピース型などの装置で、前歯の噛み合わせや口の周りの筋肉のバランスに働きかける場合があります。日本小児歯科学会によると、乳歯の反対咬合で上下のあごの骨のバランスに問題がなければ、簡単な装置で比較的早期に噛み合わせを改善できることがあります。

装置の種類や使う時間は、お子様の状態によって異なるものです。取り外しできる装置は、決められた装着時間を確保できるかどうかが治療の進み方に関わるため、使い方は歯科医師の指示に従いましょう。

上あごの成長や歯列の幅に働きかける

上あごの成長が十分でないタイプの受け口では、上あごの骨の成長を促す装置や、歯列の幅を広げる装置が検討されることがあります。日本臨床矯正歯科医会も、骨の大きさに問題がある場合の対応として、上あごの骨の成長を促進したり、下あごの骨の過剰な発育を抑えたりする管理を挙げています。

成長の力を利用する対応は、時期の見極めが重要です。あごの成長がどの段階にあるかによって選べる方法が変わるため、成長期間中の管理として、通院しながら段階的に進められます。

永久歯がそろってから歯を動かす

日本小児歯科学会は、乳歯列を含む混合歯列期の治療を一期治療、永久歯列になってからの治療を二期治療と表現しています。永久歯がそろった後の二期治療は、歯に装置をつけて位置や傾きを整え、最終的な噛み合わせに仕上げる治療です。

治療後は、装置を外したあとそのままにしておくと後戻りすることがあるため、良くなった状態を保つための保定装置を使った管理が続きます。

骨格的なずれが大きい場合は成長終了後の治療も検討する

上下のあごの骨格のずれが大きい場合は、成長の途中で無理に整えず、あごの成長が終わってから最終的な治療を行う計画も検討の対象です。日本臨床矯正歯科医会によると、あごの大きさに問題がある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもあります。

顎変形症と診断され、手術を伴う治療を施設基準に適合した届出済みの医療機関で受ける場合など、条件によっては矯正治療が保険診療の対象となることがあります。該当するかどうかは状態や医療機関によって異なるため、歯科医院で確認しましょう。

なお、受け口に対する小児矯正は、原則として公的医療保険が適用されない自由診療(保険適用外)です。費用は歯並びやあごの状態、治療計画、装置の種類、医院の方針によって異なり、治療期間や通院回数にも幅があります。自由診療の主なリスクとして、装置の使用に伴う痛みや違和感、清掃が不十分な場合のむし歯や歯ぐきの炎症、成長や装置の使用状況によって計画どおりに歯やあごの位置を整えられない可能性、治療後の後戻りなどが挙げられます。治療を検討する際は、費用や治療期間、通院回数、これらのリスクについて十分な説明を受け、確認しておきましょう。

矯正治療の費用の考え方については、下記の記事をご参照ください。

矯正歯科治療が高額な理由と費用の内訳を解説

早く治療すれば受け口は改善しやすい?

早く始めるほど有利なのかどうかは、受け口の治療で迷いやすいところです。ここでは、早めに相談することと、早く治療を始めることを分けて整理します。

早めに相談することと早く装置を使うことは別

早めの相談からは、原因の見極めと、成長に合わせた観察の体制が得られます。装置をいつから使うかは、相談の早さとは別に、検査の結果をもとに判断される事柄です。日本臨床矯正歯科医会は、矯正歯科治療の開始時期について、一人ひとりの症状や心理的な側面、生活背景も見極めて個別に判断する必要があるとしています。

相談が早くても、装置の使用は生え変わりや成長の段階を待ってからになる場合があります。治療がすぐ始まらないことは、相談が早すぎたという意味ではありません。

早期治療後も再治療が必要になる場合がある

一期治療で前歯の噛み合わせが整っても、その後の成長や生え変わりによって状態が変わることがあります。日本小児歯科学会は、治療がうまくいかない要因のひとつとして、成長発育が治療計画時の予測を超えている場合を挙げています。

骨格が関わる受け口では、あごの成長とともに噛み合わせが再び変化することがあり、その場合は永久歯列になってからの二期治療や、成長終了後の治療も選択肢です。早期の治療を検討する際は、その後の見通しと再治療の可能性についても説明を受けておきましょう。

治療結果は開始年齢だけでは決まらない

日本小児歯科学会は、治療がうまくいかない・長引く要因として、装置の使用や通院などお子様本人の協力が得られない場合、成長発育が予測を超えている場合、口腔習癖など口腔機能に原因がある場合、転居や転医で治療方針が一定しない場合を挙げています。治療結果は開始年齢だけで決まるものではなく、成長や口腔機能、装置の使用状況、通院の継続など複数の要因が関係します。

早く始めたかどうかよりも、装置を決められたとおりに使えるか、癖の改善に取り組めるか、通院を続けられるかといった積み重ねが結果に関わります。開始時期は、こうした続けやすさも含めて歯科医師と相談しながら決めましょう。

歯科医院では受け口の何を調べる?

受け口の相談では、見た目の印象ではなく、検査に基づいて原因が確認されます。ここでは、歯科医院で調べられる主な内容を整理します。

前歯と奥歯の噛み合わせ

口の中の診査では、前歯の逆の噛み合わせの程度に加えて、奥歯の噛み合わせや左右のずれも確認されます。歯型から作製した模型の分析により、上下の歯列の関係を立体的に評価できます。

前歯だけを見て受け口と判断するのではなく、歯列全体の噛み合わせから原因を絞り込むための検査です。

歯の生え変わりと永久歯の位置

エックス線写真では、乳歯の下で育っている永久歯の位置や向き、本数を確認できます。外から見えない生え変わりの状況は、治療をいつ始めるかの判断材料です。

生え変わりの進み方には個人差があるため、年齢だけでなく、実際の発育段階に合わせて計画が立てられます。

上下のあごの大きさと成長方向

日本臨床矯正歯科医会によると、頭部エックス線規格写真(セファログラム)の撮影は矯正歯科の検査で特徴的とされ、あごの骨格のバランスの分析に使われます。前歯の傾きが原因なのか、あごの骨格のずれが関わっているのかを分ける判断材料になります。

あごの成長方向は、一度の検査だけでは確定しません。定期的に記録を重ねて比較することで、成長の傾向が確認されます。

口呼吸や舌、唇の使い方

口の周りの筋肉の使い方や癖も、検査の対象です。日本臨床矯正歯科医会は、矯正歯科で行われる検査として筋機能検査を挙げており、舌の位置や飲み込み方、口呼吸の有無などが確認されます。

癖が関わるタイプの受け口では、装置だけでなくトレーニングの併用が検討されるため、癖の確認は治療計画に直接関わります。

受け口が気になるときに家庭で避けたい対応

受け口が気になると、家庭で何とかしたくなるものです。ここでは、避けたい対応を3つと、家庭でできる備えをひとつ整理します。

下あごを手で押して戻そうとする

毎日下あごを手で押していれば戻るのではないか、と考えたくなりますが、受け口の背景には歯の傾きやあごの骨格、筋肉の癖など複数の要因があり、手で押すことで噛み合わせが整うという根拠は確認されていません。

力のかけ方によっては、お子様の負担になることも考えられます。押して戻そうとするのではなく、なぜ逆の噛み合わせになっているのかを歯科医院で確認してもらいましょう。

市販の装置を自己判断で使用する

マウスピース型の装置は市販品や通販でも入手できる場合がありますが、日本臨床矯正歯科医会は、マウスピース型の矯正装置には推奨されない不正咬合があり、適応を見極められる矯正歯科医による治療が必要だとしています。

お子様の受け口にその装置が合っているかどうかは、検査と診断なしには判断できません。装置の使用は、歯科医師の診断と指示のもとで始めましょう。

永久歯になれば治ると決めつけて放置する

乳歯の受け口には、永久歯への生え変わりの時期に自然に整うケースもあります。一方で、遺伝的要因があると自然には治りにくいことも示されており、自然に整うタイプかどうかを家庭で見分けることはできません。

自然に治ると考えて相談を先延ばしにすると、成長の力を利用できる時期が過ぎることもあります。放置と経過観察は別のものです。様子を見る場合も、歯科医院の定期的な診査とあわせて見守りましょう。

噛み方や顔つきの変化を記録する

ここまでの3つと違い、家庭でやっておきたい備えが記録です。正面と横顔の写真、食事の様子の動画、気づいたことと日付のメモを、数か月ごとに同じ条件で残しておくと、変化を見比べやすくなります。

記録はあくまで参考情報で、診断は検査に基づいて行われるものです。家庭での経過が分かる記録は、相談の際に状態の変化を伝える手がかりになります。

お子様の受け口に関するよくある質問

最後に、お子様の受け口について保護者の方からよく挙がる質問を整理します。

3歳児健診で指摘されたら治療が必要?

指摘された時点で、治療が必要と決まったわけではありません。3歳児健診は母子保健法に基づいて市町村が実施する健診で、日本小児歯科学会は、反対咬合を含む不正咬合の判定基準を示しています。健診で指摘された場合は、小児歯科などで詳しい状態を確認してもらい、経過観察や治療の必要性を相談しましょう。まずは小児歯科などで詳しく状態を確認してもらい、観察の間隔や今後の見通しを相談しましょう。

乳歯の受け口は自然に治ることがある?

日本小児歯科学会によると、反対の噛み合わせは永久歯への交換期に自然に治ることもあります。ただし、遺伝的要因があると自然には治りにくいとされています。自然に整うかどうかを事前に見分けることは難しいため、様子を見る場合も、定期的な診査を受けながら経過を確認しましょう。

受け口は遺伝する?

受け口には、あごの骨格など遺伝的要因が関わる場合があります。日本小児歯科学会も、反対の噛み合わせについて、遺伝的要因があると自然には治りにくいと説明しています。一方で、舌の癖や姿勢など生活のなかの要因が関わる場合もあるため、家族に受け口の人がいるときは、早めに状態を確認して見守りの計画を立てておきましょう。

小児矯正をすれば大人の矯正は不要?

一期治療で噛み合わせが整っても、その後の成長や生え変わりによって、永久歯列になってからの二期治療が必要になる場合があります。とくに骨格が関わる受け口では、成長終了後まで経過を確認したうえで最終的な治療を検討することもあります。小児矯正を始める際は、二期治療の可能性と費用の考え方について、事前に説明を受けておきましょう。

小児歯科と矯正歯科のどちらに相談する?

小児歯科と矯正歯科は、どちらも相談の入口です。かかりつけの小児歯科があれば、定期受診の機会に相談するところから始めやすく、専門的な検査や治療が必要な場合には矯正歯科と連携して進められることもあります。日本小児歯科学会は、相談先を選ぶ際の観点として、次のような点を挙げています。

・検査をしなくても分かる範囲で、大まかな説明をしてくれる
・治療前に検査・診断を行い、治療方針を丁寧に説明してくれる
・治療を迷っている段階で、無理に勧めない
・できれば小児歯科や矯正歯科の専門医・認定医である

まとめ お子様の受け口は相談時期を逃さないことが大切

受け口は、噛み合わせたときに下の前歯が上の前歯より前に出ている状態で、歯の傾き、あごの骨格、舌や唇の癖など複数の原因が関わって起こります。原因によって治療の時期と方法が変わるため、何歳になったら治療する、と年齢だけで決めることはできません。

相談した結果、まずは経過観察から始まる場合もあり、早めの相談は、早く装置を使うためではなく、成長に合わせた見守りの体制を作るためのものです。前歯の逆の噛み合わせが続いている、噛むときに下あごがずれる、顔やあごの左右差、食べ方や発音の気になる様子、家族の受け口といったサインに気づいたら、年齢を待たずに小児歯科や矯正歯科で状態を確認してもらいましょう。

治療の結果には、開始年齢だけでなく、装置の使用や通院の継続、癖の改善といった積み重ねも関わります。気になったときが相談のタイミングです。かかりつけの歯科医院で、お子様の成長に合わせた見通しを聞くところから始めましょう。

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