歯周病は全身の健康にも関係する?関連が指摘される病気と予防のポイント
歯周病は歯ぐきの病気というイメージが強いかもしれません。ただ近年は、口の中だけでなく全身の健康との関わりも指摘されるようになっています。
この記事では、歯周病がどのような病気なのか、なぜ全身の健康と結びつけて語られるのか、そして関連が指摘されている病気や日々の予防のポイントまでを順に整理します。歯周病と全身の健康のかかわりが気になる方は、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
歯周病はお口だけの病気ではない?
歯周病は歯ぐきの病気と思われがちですが、近年は全身の健康との関わりも注目されています。まずは、歯周病がどんな病気なのか、なぜ全身と結びつけて語られるのかを整理します。
歯周病は歯ぐきや骨に炎症が起こる病気
歯周病は、歯と歯ぐきの境目にたまった歯垢(プラーク)の中の細菌によって、歯ぐきや歯を支える骨に炎症が起こる病気です。厚生労働省によると、炎症が歯ぐきにとどまっている状態を歯肉炎、歯を支える骨(歯槽骨)にまで広がった状態を歯周炎と呼び、これらをまとめて歯周病といいます。
初期のうちは痛みなどの自覚症状が乏しいため、気づかないうちに進行していることもあります。自分では気づきにくい病気である点が、歯周病の特徴のひとつです。
歯周病が進行すると歯を失う原因になることがある
歯周病が進行すると、歯を支えている歯槽骨が少しずつ吸収され、歯がぐらつくようになります。さらに放置すると、歯を失う原因にもなりかねません。
成人になってから歯を失う主な原因のひとつが、歯周病だとされています。痛みが出にくいぶん、気づいたときには進行していることもあるため、早めの対応が大切です。
近年は全身の健康との関連も注目されている
以前は、歯周病は口の中のトラブルとして捉えられることが多くありました。しかし近年は、全身の健康との関連が注目されるようになっています。
日本臨床歯周病学会によると、歯ぐきの炎症によって生じた物質が血管を通じて全身に入り込み、さまざまな病気と関わる可能性が指摘されています。これはあくまで関連が研究されている段階の話です。それでも、口の健康を全身の状態の一部としてとらえる見方が少しずつ広がっています。
ただし全身疾患の原因と断定せず、関連として理解することが大切
関連が指摘されているとはいえ、歯周病が全身の病気を直接引き起こすと断定できるわけではありません。現状のところ、リスク要因のひとつと考えられていたり、影響し合う可能性が研究されていたりする、という段階です。
歯周病と全身の健康の関係は、状態によって異なります。過度に不安を抱く必要はありませんが、口の健康を軽く見ないことが、全身の健康管理にもつながると考えられているのです。
参照元:e-ヘルスネット(厚生労働省)「歯周病とは」
参照元:日本臨床歯周病学会「歯周病が全身に及ぼす影響」
歯周病と全身疾患が関係すると考えられる理由
口の中の病気である歯周病が、なぜ全身の健康と関わると考えられているのでしょうか。理由として挙げられている主な背景を見ていきます。
歯周病菌や炎症性物質が体内に影響する可能性がある
歯周病が進むと、歯ぐきに炎症が起こり、出血しやすい状態になります。日本臨床歯周病学会によると、このとき歯周病菌や、炎症によって生じた物質が、歯ぐきの血管から血液中に入り込み、全身を巡ることがあると考えられています。
なお、血流に乗った細菌や炎症性物質が離れた臓器に影響を及ぼす可能性については、さまざまな研究が進められている段階です。
歯ぐきの炎症が慢性的に続くことが全身の負担になる場合がある
歯周病による歯ぐきの炎症は、急に強くなるというより、長い時間をかけて慢性的に続くのが特徴です。
こうした炎症が体の中で続くことは、全身にとって負担になる場合があると指摘されています。慢性的な炎症が全身の状態とどのように関わるかについては、現在も研究が進められています。
生活習慣や全身状態が歯周病の進行にも関わる
歯周病と全身の関わりは、口から全身へという一方向だけのものではありません。喫煙や食生活などの生活習慣、糖尿病などの全身の状態が、歯周病の進行に関わることも指摘されています。
たとえば喫煙は、歯周病に関わる生活習慣の代表例として挙げられます。口の健康と全身の状態は、互いに影響し合う関係だといえるでしょう。
お口の健康管理は全身の健康管理の一部と考えられている
こうした関わりから、口の健康管理は全身の健康管理の一部としてとらえられるようになってきました。
歯周病の予防と管理に取り組み、口の中を健康に保つことは、全身の健康管理を考えるうえでも大切な習慣のひとつです。そのためにも、毎日のケアと歯科での定期的な管理を続けることが基本になります。
参照元:日本臨床歯周病学会「歯周病が全身に及ぼす影響」
参照元:e-ヘルスネット(厚生労働省)「歯周病とは」
歯周病との関連が指摘されている病気
歯周病との関連が指摘されている病気には、いくつかの種類があります。代表的なものを取り上げますが、いずれも関連が指摘されている、あるいは研究が進められている段階であり、歯周病が直接の原因と断定されているわけではありません。
糖尿病|歯周病と相互に影響し合う可能性がある
糖尿病と歯周病は、互いに影響し合う可能性が指摘されている関係です。糖尿病があると歯周病が進行しやすくなることや、反対に歯周病の炎症が血糖の状態に関わることが研究されています。
両者の関係については、このあとの章でもう少し詳しく整理します。
心疾患・動脈硬化|血管の健康との関連が研究されている
心臓の病気や動脈硬化と歯周病の関連も指摘されています。日本歯周病学会によると、歯周病による炎症が血管に影響し、動脈硬化の発生や進行のリスクに関わる可能性が研究されています。
ただし、この関連については十分な根拠がまだそろっていないという指摘もあり、確立した事実とまではいえません。現時点では、血管の健康とのつながりが調べられている段階だと理解しておくとよいでしょう。
誤嚥性肺炎|お口の細菌が肺に入ることで関係する場合がある
誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液が誤って気管に入る際に、口の中の細菌が肺へ入り込むことで起こることがある肺炎です。日本臨床歯周病学会によると、口の清掃状態がよくないと歯周病菌などの細菌が増え、誤嚥性肺炎に関わる場合があると指摘されています。
とくに高齢の方や飲み込む力が弱くなっている方では、口の中を清潔に保つことが、誤嚥性肺炎のリスク管理の観点から大切だと考えられています。
早産・低体重児出産|妊娠中の歯周病管理が大切とされる
妊娠中の歯周病と、早産や低体重児出産との関連も指摘されている話題です。日本歯周病学会によると、歯ぐきの炎症で生じた物質が影響する可能性が研究されていますが、関連の程度には個人差があり、状態によって異なります。
妊娠中はホルモンの変化などから歯ぐきが腫れやすくなることもあります。気になる場合は、かかりつけの歯科医院や産科で相談してみましょう。
認知症|関連が研究されている
認知症と歯周病の関連は、近年関心が高まっている分野のひとつです。日本臨床歯周病学会によると、歯周病菌やその関連物質と認知症との関わりについて研究が進められていますが、現時点でははっきりと断定できる段階ではありません。
現時点では、関連が調べられているテーマのひとつとして受け止めておくとよいでしょう。過度に心配するのではなく、口の健康を保つことを日々の習慣として続けることが大切です。
骨粗しょう症|骨の健康と歯周組織の関係に注意が必要
骨粗しょう症と歯周病の関連も、指摘されている話題のひとつです。日本歯周病学会によると、骨粗しょう症により骨密度が低下している場合、歯を支える骨の状態にも影響する可能性があり、歯周病との関連が研究されています。
とくに閉経後の女性はホルモンの変化から骨が弱くなりやすいといわれており、骨の健康と口の健康をあわせて意識しておくと、気になる変化に早めに気づきやすくなります。
参照元:日本歯周病学会監修 ペリオブック「歯周病と全身疾患」
参照元:日本臨床歯周病学会「歯周病が全身に及ぼす影響」
歯周病と糖尿病の関係
関連が指摘されている病気のなかでも、糖尿病は歯周病と相互に影響し合う可能性が指摘されている代表的なものです。両者の関係をもう少し詳しく整理します。
糖尿病があると歯周病が進行しやすくなることがある
日本歯周病学会によると、糖尿病がある方は、歯周病が進行しやすい傾向があるとされています。血糖値が高い状態が続くと、免疫機能や炎症反応に影響し、歯周病が進行しやすくなることがあると考えられています。
そのため、糖尿病がある方は、歯周病が進みやすい状態にあることを知っておくことが大切です。
歯周病の炎症が血糖コントロールに影響する可能性がある
反対に、歯周病が血糖の状態に影響する可能性も指摘されています。日本臨床歯周病学会によると、歯周病による炎症で生じた物質が、血糖を調整するインスリンの働きを妨げ、血糖のコントロールに関わる場合があると研究されています。
こうしたことから、糖尿病と歯周病は互いに影響し合う関係だと考えられるようになってきました。
糖尿病がある方は歯科と医科の両方で管理することが大切
糖尿病と歯周病が影響し合う可能性をふまえると、どちらか一方だけでなく、両方をあわせて管理する視点が大切になります。
糖尿病で通院している方は、その旨を歯科医院にも伝えておきましょう。歯科と医科が連携しながら、お口と全身の状態をともに確認する形が望まれます。
口腔環境を整えることも健康管理の一環として大切
歯周病の治療を受けて口の中の環境を整えることは、全身の健康管理の一環としても意味があると考えられています。
ただし、歯周病を治療すれば糖尿病が治る、というものではありません。あくまでも、口の健康を保つことが全身の健康管理の一部になる、という位置づけで取り組むことが大切です。気になることがあれば、歯科医師や主治医に相談しながら治療を進めましょう。
参照元:日本歯周病学会監修 ペリオブック「歯周病と全身疾患」
参照元:日本臨床歯周病学会「歯周病が全身に及ぼす影響」
歯周病が進行すると起こりやすいお口のトラブル
ここまでは全身との関連をみてきましたが、歯周病はまず口の中で進行します。進行した場合に起こりやすい口のトラブルは、以下のとおりです。
歯ぐきの腫れや出血が続く
歯周病が進むと、歯ぐきが赤く腫れたり、歯みがきのときに出血したりしやすくなります。これは歯ぐきに炎症が起きているサインです。
こうした腫れや出血は、いったんおさまったように見えても、原因となる歯垢や歯石が残っていると繰り返しやすくなります。
口臭が強くなることがある
歯周病が進行すると、口臭が強くなることもあります。歯周ポケットの中で細菌が増え、においの原因となる物質が作られるためです。
自分では気づきにくい一方で、家族など周囲の人から指摘されて気づくこともあります。
歯がぐらつき、噛みにくくなる
炎症が歯を支える骨にまで広がると、歯が少しずつぐらつくようになります。ぐらつきが大きくなると、かたいものが噛みにくくなることもあります。
噛む力が落ちると食べられるものが限られ、食生活にも影響しかねません。
進行すると歯を失う原因になる
歯周病がさらに進行すると、歯を支える骨の吸収が進み、歯のぐらつきが大きくなったり、状態によっては抜歯が必要になったりすることがあります。
歯を失うと、噛む機能だけでなく、残った歯やかみ合わせにも影響します。日本では成人が歯を失う原因のひとつが歯周病だとされているため、放置せずに対応することが大切です。
全身の健康も意識した歯周病の予防・管理のポイント
歯周病の予防と管理は、毎日のセルフケアと歯科でのケアを組み合わせることが基本です。ここでは、日常で取り組めることをまとめました。
毎日の歯みがきでプラークをためない
歯周病の原因となるのは、歯と歯ぐきの境目にたまる歯垢(プラーク)です。毎日の歯みがきでこのプラークをためないことが、予防の基本になります。
とくに歯と歯ぐきの境目はみがき残しが起きやすい場所です。歯ブラシを軽く当てて、ていねいに動かすことを意識してみましょう。
歯間ブラシやフロスを正しく使う
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の歯垢を落としきれない場合があります。歯間ブラシやデンタルフロスをあわせて使うことで、歯ブラシが届きにくい部分のケアにつながります。
ただし、すき間に合わないサイズの器具は、歯ぐきを傷つける原因にもなりかねません。自分に合った歯間ブラシのサイズや使い方は、歯科医院で確認しておきましょう。
定期検診で歯周病の進行を確認する
歯周病は初期の自覚症状が乏しいため、自分では進行に気づきにくい病気です。歯科医院での定期検診を受けると、歯ぐきの状態や歯周ポケットの深さを確認してもらえます。
症状が出ていない段階でも、定期的に状態をチェックしておくことで、変化に早く気づくことにつながります。
歯石除去やクリーニングを受ける
歯石となった汚れは、毎日の歯みがきだけで取り除くのは難しいものです。歯科医院では、歯石の除去や歯のクリーニングを受けられます。
セルフケアだけでは落としきれない部分を歯科でのケアで補うことが、歯ぐきの状態を保つことにつながります。定期検診とあわせて、クリーニングも定期的に受けておきましょう。
喫煙習慣や生活習慣を見直す
喫煙は、歯周病が進行しやすくなる要因のひとつとして知られています。
喫煙習慣がある方は、歯周病への影響や禁煙・減煙の必要性について、歯科医師に相談してみましょう。あわせて、バランスのよい食事や十分な睡眠など、生活習慣を整えることも歯ぐきの健康に関わると考えられています。
持病がある場合は歯科医院に伝える
糖尿病をはじめとする持病がある場合は、その内容を歯科医院に伝えておくことが大切です。全身の状態によっては、歯周病の進行や治療の進め方に関わることがあるためです。
服用している薬がある場合も、お薬手帳などを持参して伝えておくと、状態に合わせた対応をしてもらいやすくなります。
歯科医院で相談したい症状やタイミング
ここでは受診を検討する目安として代表的なものを挙げているため、当てはまるものがあれば、早めに歯科医院で相談しましょう。
歯ぐきから出血する
歯みがきのときに歯ぐきから血が出る場合、歯ぐきに炎症が起きている可能性があります。
一時的なものと考えて様子を見ているうちに、歯周病が進んでいることもあります。出血が続くようであれば、歯科医院で相談してみましょう。
歯ぐきが腫れる・下がってきた
歯ぐきが赤く腫れている、以前より下がって歯が長く見えるといった変化も、歯周病のサインとして知られています。
歯ぐきが下がると、歯の根元が露出して、知覚過敏を感じることもあります。気になる変化があれば、歯科医院で診てもらいましょう。
口臭が気になる
口臭がいつもより強い、あるいは歯みがきをしても続くと感じる場合も、歯周病が関わっていることがあります。
口臭の原因は食べ物や体調などさまざまですが、ケアをしても続くようであれば、歯ぐきの状態が背景にあることも考えられます。気になるときは、原因を確かめる意味でも歯科医院で相談してみましょう。
歯が浮く・ぐらつく感じがある
歯が浮くような感じがする、噛んだときに歯がぐらつくといった感覚は、歯を支える骨に影響が出ているサインかもしれません。
ぐらつきは、そのままにしておくと状態が進行する場合があります。違和感を覚えた段階で歯科医院に相談しておくと、状態に合わせた対応を早めに始められます。
糖尿病などの持病があり歯周病が心配
糖尿病などの持病があり、歯周病との関わりが気になる場合も、歯科医院に相談しておきたいタイミングです。糖尿病など一部の持病は歯周病の進行に関わることがあるため、早めに状態を確認しておくと対応を考えやすくなります。
症状がはっきりしていなくても、気になることがあれば歯科医師に伝えてみましょう。
まとめ
歯周病は、歯ぐきや歯を支える骨に炎症が起こる病気ですが、近年は全身の健康との関連も指摘されるようになっています。歯ぐきの炎症で生じた物質が血管を通じて全身に巡る可能性が研究されており、糖尿病や心疾患、誤嚥性肺炎など、さまざまな病気との関わりが調べられています。
なかでも糖尿病とは、互いに影響し合う可能性が指摘されている関係です。ただし、歯周病がこれらの病気すべての直接的な原因だと断定できるわけではありません。あくまでリスク要因のひとつ、あるいは関連が研究されている段階のものとして理解しておくことが大切だといえます。
歯ぐきの出血や腫れ、口臭、歯のぐらつきなどが気になるときは、早めに歯科医院で相談しましょう。毎日のセルフケアと定期検診を続けながら口の健康を保つことが、全身の健康管理の一環にもつながると考えられています。過度に不安を抱く必要はありませんが、口の健康を見直すきっかけにしてみてください。