マウスピース矯正とはどんな治療法?メリットやデメリット、費用などを解説

歯並びをきれいに整えたいけれど、「矯正装置が目立つのは避けたい」「治療中の見た目が気になる」という方も多いのではないでしょうか。そんなニーズに応える新しい選択肢として、近年注目されているのがマウスピース矯正です。
透明な装置を使うため、周囲に気づかれにくく矯正できるのが大きな特徴で、特に大人になってから矯正を検討する方に人気があります。
この記事では、マウスピース矯正とはどのような治療なのかをわかりやすく解説します。さらに、治療のメリット・デメリット、費用や期間、治療の流れまで詳しく紹介し、マウスピース矯正を検討している方が判断材料として活用できるよう、情報を整理しました。
マウスピース矯正とは
マウスピース矯正とは、透明な樹脂製のマウスピース(アライナー)を使用して歯並びを整える矯正法です。従来のように金属のワイヤーやブラケットを歯に装着する必要がなく、取り外し可能なマウスピースを段階的に交換しながら、歯を少しずつ理想的な位置に移動させていきます。
見た目にも目立ちにくく、日常生活への影響を最小限に抑えられることから、特に社会人や学生など、人前に立つ機会が多い方に人気があります。また、通院回数が少なくて済む場合があることも、忙しい現代人にとって大きな利点です。
マウスピース矯正のメリット
マウスピース矯正は、見た目の自然さや取り外しの自由さといった特徴を持ち、従来の矯正治療では得られなかった多くの利点がある治療法として注目されています。特に大人の矯正治療では、職場や日常生活で目立たずに治療を続けられる点が高く評価されています。
さらに、衛生面の工夫や通院のしやすさなど、実用的なメリットも多く存在します。以下に代表的な利点を紹介します。
見た目が自然で目立ちにくい
透明な素材で作られているため、装着していても他人に気づかれにくいのが特徴です。接客業や営業職など、人前に出る機会が多い方にとって安心できる選択肢と言えるでしょう。写真撮影や会話の際も自然な笑顔を保ちやすく、精神的な負担を軽減できます。
取り外し可能で衛生的
食事や歯磨きの際には自分で簡単に外すことができるため、普段通りの生活を送りやすいのも魅力です。ワイヤー矯正のように食べ物が詰まりにくく、歯磨きもしやすいため、虫歯や歯周病のリスクを抑えることができます。
痛みや違和感が少ない
ワイヤー矯正では金属が口の中に当たり、痛みや口内炎を引き起こすことがあります。マウスピース矯正は滑らかな樹脂製で刺激が少なく、歯も少しずつ移動させるため、急激な痛みを感じにくいのが特徴です。
通院回数を減らせる場合がある
治療全体の計画が事前に立てられているため、毎回の細かな調整が必要なワイヤー矯正に比べ、通院頻度を抑えられることがあります。忙しい方にとって負担を軽減できることは大きなメリットですが、症例によって通院ペースは異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
マウスピース矯正のデメリット
また、日常生活における使い方やご自身の管理の仕方によって、治療結果が大きく左右される点にも注意が必要です。ここでは、マウスピース矯正を検討するうえで知っておきたいデメリットを解説します。
適応できる症例に限りがある
マウスピース矯正は、軽度から中程度の歯列不正に対しては効果的ですが、重度の不正咬合や骨格に関わる矯正には対応が難しい場合があります。例えば、歯を大きく動かす必要がある場合や上下の顎のバランスに問題がある場合は、ワイヤー矯正などが必要になることもあります。
マウスピース矯正が適応できるかどうか、歯科医師による診断を受けることが大切です。
装着時間を守らないと効果が出にくい
マウスピース矯正では、1日あたり20〜22時間程度の装着が推奨されています。これを守らないと予定通りに歯が動かず、治療期間が延びたり最終的な仕上がりに影響を与えたりすることがあります。
自由に取り外せるという利点がある一方で、自己管理が難しい方や装着を忘れがちな方には合わない可能性もあります。
紛失や破損のリスクがある
取り外し可能な点はメリットでもありますが、マウスピースを紛失したり破損したりするリスクも伴います。外食時や旅行中など、マウスピースを外す機会が増える場面では注意が必要です。マウスピースを紛失した場合は新たに作り直す必要があり、追加費用が発生することもあります。
食事や飲み物に制限がある
基本的にマウスピースは食事の際には外す必要があります。また、着けたままで飲めるのは水だけであり、コーヒーやお茶、ジュースなど色のついた飲み物を飲むと、マウスピースが変色したり、虫歯のリスクが高まったりする可能性があります。
こまめに取り外しと歯磨きを行う必要があるため、外出先では手間を感じることもあるでしょう。
喫煙によって変色するおそれがある
マウスピースは透明な素材で作られているため、喫煙によってヤニが付着すると変色するリスクがあります。一度変色すると見た目に大きな影響が出るだけではなく、矯正中の清潔感を損なう原因にもなります。
また、タバコに含まれる有害物質がマウスピースの素材劣化を早める可能性もあるため、喫煙者は注意が必要です。
激しい運動をすると破損するおそれがある
ラグビーや格闘技などのコンタクトスポーツをする際にマウスピースを装着していると、強い衝撃で破損する可能性があります。破損すると予定通りの歯の移動が妨げられるだけではなく、口腔内を傷つけるリスクもあります。
そのため、激しい運動を行う際はマウスピースを外すか、別途スポーツ用のマウスガードを使用することが推奨されます。
マウスピース矯正とワイヤー矯正との違い
歯列矯正といえば、かつてはワイヤー矯正が主流でしたが、近年ではマウスピース矯正が一般にも広く浸透し、選択肢の一つとして定着しつつあります。それぞれの矯正方法には特徴があり、どちらが良い・悪いというよりも、目的やライフスタイルに応じて選択することが重要です。
ここでは、両者の違いをいくつかのポイントに分けて比較します。
装置の見た目
マウスピース矯正は透明で目立ちにくく、装着していても気づかれにくいという特徴があります。
一方、ワイヤー矯正は金属のブラケットやワイヤーを歯に固定するため、見た目に影響が出やすく、特に接客業などの職業では気になる方も多いでしょう。
治療中の快適さや痛み
ワイヤー矯正は歯を強い力で動かすため、痛みを感じる人が多いです。金属の装置が口の中に当たって口内炎を引き起こすケースもあります。
一方、マウスピース矯正では樹脂製の装置を使うため、口内の違和感が少ないです。また、徐々に歯を動かすため、痛みも軽減される傾向があります。
自由度と自己管理の必要性
マウスピース矯正ではマウスピースを食事や歯磨きの際に取り外すことができるため、日常生活における自由度が高い一方、装着時間をきちんと守る必要があります。
それに対して、ワイヤー矯正は常時装着されているため、自己管理が不要な反面、装置による制限が生活に影響することもあります。自分でしっかり管理できるかどうかが、選択のポイントになります。
適応できる症例
マウスピース矯正は、軽度から中程度の矯正には効果的ですが、歯の大きな移動が必要な症例には限界があるとされています。重度の歯列不正や骨格の問題を伴うケースでは、ワイヤー矯正のほうが柔軟に対応できる場合が多くなります。
歯科医師の診断に基づいて自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
マウスピース矯正にかかる費用
マウスピース矯正の費用は、治療の難易度や使用する装置の種類によって変動します。前歯のみを対象とした部分矯正の場合は 30万〜50万円程度 が一般的な目安であり、歯列全体を動かす矯正では 70万〜100万円以上 になるケースもあります。
矯正治療には健康保険が適用されないため、全額自己負担となる点にも注意が必要です。
マウスピース矯正の費用には、診断料やマウスピースの作製費用、治療中の調整費用、経過観察料などが含まれます。医院によってはトータルフィー制度と呼ばれる、治療にかかる費用をすべて込みで提示する料金体系を採用している場合もあります。
一方で、調整料やマウスピースの追加作製にごとに別途費用が発生するケースもあるため、契約前に確認しておくことが必要です。また、総額だけではなく、分割払いや追加料金の有無など、料金体系についても事前に把握しておくことが大切です。
医院によって差がある項目
診断料や調整料、マウスピースの作製費用などの項目は、クリニックによって価格に差が生じる場合があります。また、通院ごとに都度料金が発生するか、トータルフィー制で一括料金なのかによっても、最終的な支払い額が大きく異なるため、複数の医院を比較検討することが望ましいです。
分割払いやローンの利用も可能
高額な治療費が一括で支払えない場合、クリニックによってはデンタルローンやクレジットカードによる分割払いに対応しているところもあります。月々の支払い額や金利の有無なども比較して、無理のない範囲で支払い計画を立てることが大切です。
費用の不安を感じている方は、事前にカウンセリングで詳細を相談してみるとよいでしょう。
保証制度について
医院によっては、マウスピースの紛失や破損、治療中の再作製に対して保証制度を設けているところもあります。治療計画の変更や後戻りによる再治療が必要になった場合、一定の条件下で追加費用が免除または軽減される、というものです。
事前に保証内容を確認し、不測の事態に備えることが重要です。
マウスピース矯正にかかる期間
矯正治療を始めるうえで、どのくらいの期間がかかるのかは多くの方にとって重要な関心事です。マウスピース矯正は、歯を少しずつ動かす性質上、ワイヤー矯正と比べて長い時間がかかるという印象を持たれることもありますが、実際には症例によって大きく異なります。
前歯の軽度なズレやすきっ歯など、限定された範囲の歯並びを改善する部分矯正では、治療期間が短く、3か月〜6か月程度で終了するケースが多く見られます。結婚式や就職活動など、期限があるイベントに向けて歯並びを整えたい人にとっては、非常に現実的な選択肢となるでしょう。
一方で歯全体のバランスを整える全体矯正の場合は、1年〜2年程度の治療期間が一般的です。
歯の移動速度には限界があり、無理に急ぐと負担が大きくなるため、安全に配慮しながら進める必要があります。また、顎の成長が完了している大人の場合は、成長を利用できないため、より慎重な治療計画が必要になります。
マウスピース矯正の流れ
マウスピース矯正は、ただ装置を装着すれば歯並びが整うというものではありません。初診から治療完了までには複数のステップがあります。特にマウスピース矯正では、事前の診断や精密なシミュレーションが重要な役割を果たします。
ここでは、一般的なマウスピース矯正の流れを段階ごとに解説し、治療を始める前に知っておきたいポイントを紹介します。
初診・カウンセリング
まずは現在の歯並びや噛み合わせの状態について、医師と相談します。マウスピース矯正が適応可能かどうかを確認したり、希望や不安について話したりすることができます。医院によっては無料相談を実施しているところもあるため、複数のクリニックを比較することも可能です。
精密検査と診断
治療を進めるには、口腔内の詳しいデータを取得する必要があります。レントゲン撮影や口腔内スキャン、写真撮影などを行い、歯や顎の状態を正確に把握します。それらのデータをもとに専用ソフトで治療計画を立案し、最終的な仕上がりのシミュレーションを見ることができます。
治療計画の説明と契約
検査結果に基づいて、医師から治療方針や費用、治療期間、使用する装置の種類などの詳細な説明を受けます。納得できた場合は契約を結び、マウスピースの製作に入ります。この段階で分割払いの相談や保定期間についての説明も受けることが多いです。
マウスピースの装着と定期通院
完成したマウスピースを受け取り、装着を開始します。装着時間の目安や注意点、交換のタイミングについての説明も行われます。基本的には1〜2週間ごとに新しいマウスピースに交換し、段階的に歯を動かしていきます。
装着後は1〜2か月に一度の頻度で通院し、治療経過を確認しながら必要に応じて計画を調整します。
矯正完了後の保定期間
予定通り歯並びが整ったら矯正治療は完了ですが、そのままでは歯が元の位置に戻るため、保定装置(リテーナー)を使用して歯の位置を安定させる保定期間に入ります。
リテーナーの装着を怠ると歯が元の位置に戻る後戻りのリスクが高まるため、自己管理が重要になります。保定装置には、歯の裏側にワイヤーを固定する固定式と就寝時のみ装着する取り外し式があり、症例やライフスタイルに応じて選ばれます。
保定期間は通常6か月〜2年程度とされており、しっかり装着しなければ後戻りのリスクが高まります。保定期間中にも定期的な通院が必要であり、特に治療後の数か月間は1〜2か月おきに状態確認を行う医院が多いです。
保定期間中も定期的に通院し、歯並びや噛み合わせが安定しているかを確認することが大切です。
まとめ
マウスピース矯正とは、透明な装置を使って歯並びを整える新しい矯正治療法です。見た目の自然さや装着の快適さ、取り外しの自由度など、多くのメリットを備えていることから、大人を中心に人気を集めています。
一方で、装着時間の自己管理が求められたり、適応できる症例に限りがあったりと、注意すべき点もあります。ワイヤー矯正との違いや、費用・期間・治療の流れといった実際的な情報を把握したうえで、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
この記事が、マウスピース矯正を検討するうえでの判断材料となれば幸いです。
※マウスピース矯正の適応には個人差があります。